尾原ダム 見学 その2


こちらに並んでいるのは尾原ダム便りです。
HPで公開されているのでチェックするのも楽しみ。


そして最新のファイル。
クレストゲート点検放流の載っている尾原ダム便りです。

尾原ダムHPでは放流動画も見られますよ。

尾原ダムの二丁拳銃♪
お世話になっている川崎秀明先生
「カッコいいんだよーっ」て仰っていた二丁拳銃。
実物にやっと会いに来れました〜♪


国土交通省のダムですから洪水調節が大切なお仕事に入っています。
これが尾原ダムの洪水調節計画図。ハイドログラフ。
一定率一定量調節方式です。

最大流入量2500m3/sで計画されています。
これは昭和54年10月の出水をもとにして立てられた計画であると書かれています。

昭和54年10月の出水とはどんな雨だったのか気象庁のデータベースで調べてみると
T7920という、なんとなんと観測史上最低中心気圧(870hPa!!!)のレコードホルダーの台風でした。
日本に到達したころは弱まっていたそうですが怖い怖い。


島根広島山口のエリア的にはこちらの昭和47年7月豪雨が有名です。
中国地方のダムを調べているとよく登場する災害名です。
国土交通省出雲河川事務所の災害説明記事では浸水域が示されています。

国土交通省三次河川国道事務所の災害紹介記事で公開されている
ハイドログラフではピークが3つもあることが分かります。
前線性降雨の恐ろしさが伝わってきます。

二山、三山の洪水というのは本当に恐ろしくて近畿地方で言うなら
昭和57年台風10号(T8210)と9号くずれの低気圧で起きた水害がよく似ています。
T8210災でも二山洪水で大変な被害が出ました。

多くのダムでは既往最大の降雨を元に洪水調節計画を立ててあります。
被害としては昭和47年7月豪雨の方が大きかったけれど
昭和54年10月出水は台風性降雨で出水の量が非常に大きかったので
それを元に洪水調節計画を作成されたのだそうです。


三山洪水を引き起こした昭和47年水害。
斐伊川の下流に位置する宍道湖の湖水は大橋川という川で中海に流れ出ていきます。
しかし、この中海との間にある大橋川は水を流す能力が低いので
上流から大量の水が来ると逃げ道が限られているために
宍道湖の水位がどんどん上がっていきます。
そのために宍道湖周辺で浸水被害が出るのです。


尾原ダム、志津見ダムは上流からの水を貯め込んでカット
宍道湖の手前で斐伊川放水路がカット
それでも宍道湖に流れ込んでいく大量の降雨を速やかに中海に流すため
大橋川の能力アップのための改修工事が進んでいます。

と、展示物で勉強した後
ダムカードを頂きうはうは。

そして管理所の方に堤体直下、副ダムを間近で見られる
ポイントまで見学をさせていただけることになりました。
ありがたいありがたい。


ダム湖側から見た堤体です。
取水塔は志津見とお揃いの連続サイフォン式で天端からずっと下の高さ。
天端より高いのはエレベーター棟だけです。


非常用洪水吐と常用洪水吐用のコースターゲート
貯水位維持用放流設備のコースターゲートが見えています。
利水用の選択取水設備である連続サイフォン式取水塔は天辺だけ。


堤体を見ていて地味に気になったのはこの模様。
何でこんなに綺麗にしましましているのか。
どうやらこれは堤体打設時の養生の痕跡らしい。
お水を流した跡なのですね。

後日、お世話になっているダムマイスターでご一緒させて頂いている
中村靖治先生経由で堤体の工事をされていた清水建設の担当者の方にお聞きしたところ
「スライド型枠の下に鉄管を配置し、適当な間隔で穴を開け
下流面のコンクリートの養生のため、水を噴射するのでその痕跡です」
というお答えを頂きました。

「水をかけて養生することがコンクリートのためには一番いいことです。
その証拠だと思うので敢えて洗わなかったのです」
というグッと来るお話を教えて頂きました。

たまらん♪
このマスコンクリートに対する愛がこういう形で表現されたことがたまらん♪
これは尾原ダムの個性ですね♪

真っ白つるつるはやっぱり綺麗ですが
ダムはあっという間にコンクリートも黒ずんで風格が出て
ついには苔が生えたりしていくものですから
このしましまも数年たてば別の顔になって魅力が出る元になるかもですね。