諸塚ダム 見学 その3


左岸には管理所が有ります。
日が暮れかけていたので奥までは行かずにこのアンテナまでで引き返し。


繋いであるポートの名前は「諸塚丸」
日本刀のような名前ですね。


お水たっぷりで上流面のタコ脚こと、ブロックのダイヤモンドヘッドが見えません。
絶対この水の下に在るのですが。


ダイヤモンドヘッドを見られない悔しさをゲートにぶつけてみました。
諸塚ダムにはゲートが1門だけです。

ワイヤー巻上式のラジアルゲートです。


ここで上流面をじーっと見ながら九州電力の方に質問しました。

「諸塚ダムってなんで下流側にスリットが有るんでしょう。
私もあちこちのHG見てきましたけど他のダムにはああいったスリットないんですよ。
もしかして諸塚ダムって上下流面の両方にダイヤモンドヘッド持ってるんですか?」

すると九州電力の方が取り出したのは諸塚ダムの青写真。
撮影禁止です。現場で見るだけ。

「諸塚のブロックはこんな形なんですが」
「・・・・。やっぱり上流にも下流にも窪んでいる部分がありますね。
上流は判るんです。ダイヤモンドヘッドで理解できます。
でも下流側には作る必要ないですよね」

「各ブロック単体はこういう形で・・」
「あれ?これ下流側が開放している事になりますよ。
これだったら横桁がなくて扶壁だけのバットレスダムみたいになるような」

「中空重力式のU型という事になっています」
「・・・ウェブが一枚か二枚かという区分が有るという事は
以前中部電力さんのダムで説明を受けて知っているんですが・・・
U型…T型がウェブ一枚って事ですか」

「諸塚はウェブ二枚で一つのブロックを作っています」
「でもちゃんと下流側は塞がっていますよね」
「(青写真を示して)ダイヤモンドヘッドというのはこの部分ですね」
「そうですね」
「諸塚は8つのブロックでできています。“スリット”と呼んでおられる
この部分はブロックとブロックの間になります

「はい・・・なので・・あ、そうか!」
「ダイヤモンドヘッドはここで“スリット”はここですから」
「あ、なるほど。はい。だから下流が開放型という事になるんですね。
あー!やっと意味がわかった。すいません頭悪くって」


ごめんなさい。
ホントに私頭が固いというか
思いこんだら視点を切り替えるって言う事が出来なくって。

親切に教えてくださった九州電力の方のおかげで
諸塚ダムはブロック下流が解放されたタイプだという事をやっと理解しました。


現場で私が大混乱していた理由

私が事前学習で参考にしていたとある文献にはこのような図がありました。

中空重力式ダムには4つのタイプがあるらしいのです。

ただ、この文献だけを頼ると
いくら読んでも理解できない部分がありました。
ただの誤植だと思うんですが
図の番号と説明文が一致しないのです。

説明文を読むとどうやら
U型とV型の図の番号が振り間違われているようでした。

専門書でこれをやられるとホントに大間違いを覚え込んだりしてしまいます。

でも専門書は誤植とか誤字とか割と多かったりします。
なので正誤表がすごく大切なんですが
参考にした文献は凄く古いんで
しかも、とあるダム管理所の本棚に在るのを見つけて閲覧させてもらっただけで
手元にあるわけでもないし
正誤表とかもうどこにあるのかすらわからないし・・・。

この文献は初版でその後、改訂されて何版も出ているのですが
中空重力式についての記載は初版だけで以後の版からは項目が無くなっているのです。

それは中空重力式ダムという物が今後、国内ではもう作られないだろうという事で
無くなってしまったのだと思われます。

こうなったら
更に文献を調べるしかありません。
文献調査は数が勝負。
一冊に頼るとダメなのは研究の基本。
( ↑ 何の研究だ)


◆ ◆

という事で
HGについて調べようとやってきました。
大阪某所。

ダムに関する文献調査をしたい時は
国土交通省の直轄ダム管理所か
水資源機構のダム管理所か
この某所で頼んでいます。

普通の図書館ではまず見つからないので。


お目当ての文献の最新版をはじめ色々探しまくりますが
なんといってもHGは国内に13基のみ。

そしてダム建設に関わる文献を調べていても
やはりある程度年代が上がってくるとHGは目次から消えてしまいました。

もう作られることのないダム型式で
この技術は後世に残す必要はないとでもいうのですか〜

と、見つからなくてふんふん鼻を鳴らしていた時に

在ったーっ!!
ホローグラビティの施工! 

見つけた文献には
「HGにはT型とU型がある」とだけ書いているものもあり

別の文献では私が混乱する元になった文献の図の番号を振り替えて
文章と図がぴったり合うように直してある物もあり

図の番号も文章も食い違ったままなのにそのまま使われているものもありました。

専門書ならではの罠の数々。


◆ ◆
結論
諸塚ダム
井川ダム
横山ダム
畑薙第一ダム
畑薙第二ダム
中空重力式はこの4つのタイプに分けられる

T型〜W型とも呼ばれる

T型が下流面開放ウェブ1枚型
U型が下流面開放ウェブ2枚型 ※文献によってはV型とも書かれている
V型が下流面密閉ウェブ1枚型 ※文献によってはU型とも書かれている
W型が下流面密閉ウェブ2枚型



という事で諸塚ダムは
下流面開放ウェブ二枚型中空重力式ダム
でした。


という事で現場でも帰宅してからも散々頭を悩ませていた
中空重力式の詳細型式についても解決しました。

やっぱり本物を見ないと。

謎のスリットについての疑問が解けたと同時に
今度行くことがあったらこのスリットの間に入りたいなと思った
下流面開放ウェブ2枚型・諸塚ダム見学でした♪