T1318と宮川ダム その4


そして2013年。
ゲートが1門、ゲートレスのまま、洪水期にはいった宮川ダム。

今年の18号(T1318)は、大台ケ原の東側では降雨量は少なく
2004年の台風21号(T0421)に比べれば普通の台風と呼べるレベルだったようです。
淀川水系では既往最大の出水であったのですが
宮川水系においてはそうではなかったということです。


T0421とT1318のハイドログラフ比較。
左がT0421です。
T1318をダム湖貯水位で考えると赤線で囲った範囲に収まるくらいです。

ダム湖貯水位は最高でEL276.91m
T0421では283.11m

最大放流量は1177.34m3/s
T0421では2560.50m3/s

T0421ったら もー とんでもない!!
凄い水量!!
T0421がどれだけとんでもない雨を降らせたかが分かってもらえるかと思います。

しかし両方、ピークが二段になっているのが興味深い。
宮川ダム上流からはこういう出水が多いんでしょうか。


T0421ほどの雨ではなかったといっても
T1318ではゲートが1門ない状態で戦ったのです。
その時のハイドログラフです。


今回の台風では事前放流は行っていません。
発電用のバルブ放流で初動対応。
最大22t/sまでバルブで放流です。

というのはこの夏は渇水気味でダム湖貯水位が低めだったので
事前放流をしなくてもよかったからです。
しかしいきなり凄い流入なのでドキドキします。

クレストゲート下端の越流する高さに到達したのは
8:10頃だったみたいです。

クレストゲートはあらかじめ半開というか一定開度で開けて備えていたので
ダム湖貯水位が上がっていくと自由越流式と同じ状態になります。

出ていく量は限られますのでその差はダム貯水池に貯め込まれます。
ダム湖貯水位はぐんぐん上がっていきます。

最大流入量1177.34t/sのピークを迎えた後
急激に流入も減りはじめ放流量が追い付きました。

ここでNo.2とN.o3ゲートを使って放流量を下げ始めました。

新しい操作規則では1500t/sでピークカットになっていますので
放流量が流入量に追い付いたところで横引きでもよかったのですが
そこは洪水調節を担うダムですから
今できる最大の力を発揮して下流を守らねばと絞り込みを開始します。

No.1ゲートがない状態でNo.2、No.3ゲートを下げると
水位差でNo.1からより多くの水が出るでしょうから
副ダムではちょっとお水の流れが暴れてバランス悪くなりますが
そういう時のための副ダムだからお仕事頑張った。

そして最近では3時間後まで降雨予測はとても精度が上がってきているので
このままいける!!と読み切った時点で綺麗な横引き♪
定量放流でピークカット開始です。

さらに降雨予測で安全度を確認し
流入量の低下に合わせて放流量を絞り込み
洪水量である600t/sまで減ったところで定開度ゲート固定
このあとは最初と同じく自由越流状態にしてゆっくりなだらかに
ダム湖貯水位の低下を待ちます。

次の洪水に備えて水位を下げる後期放流に移行しました。

ゲートがひとつ無くてもちゃんとお仕事しましたよ
大台ケ原の麓だからこのくらいの降雨は慣れています

でもいくら雨が多くて慣れているからといっても
T0421みたいな雨は勘弁してほしいです
僕自身は大丈夫でしたが下流で被害がすごかったので
三瀬谷は大変なことになったしもうあんな台風には来てほしくないです

なんて言っていてもまた凄い台風はきますよね
来年は新しいゲートでまた頑張って洪水調節しますね

台風の後、さらさらお水を流している宮川ダム。

素人の心配をよそに2013年もきっちりお勤め果たしてくれました。

早く新しいゲートがつくといいですね。
男前になったらまた会いに行こうと思います。