三成ダム 再び その4

操作所でまずは図面を基に三成ダムの詳しいお話を伺います。


ダム上流面図。


「三成ダムは発電と砂防の役割を持っているダムなんです」
「えーっ! こ、ここ、砂防もやっているハイブリッドなんですか〜♪」
「斐伊川には“かんな流し”という物が古くからおこなわれていまして・・
「あ、日本刀の原料の“玉鋼”の原料の採取ですよね。砂鉄から作るんですね」
「はい。そうなんです」
「玉鋼、本物見た事ありますけど、プラチナより凄い光っぷりで吃驚したことあります〜」
「この斐伊川にはそのかんな流しを行っていた歴史があるのでダムの役割に砂防を入れたんですよ」
「そうだったんですか〜♪

「この図のピンクの蛍光ペンで縁取りをしている部分が砂防堰堤部分、水色の蛍光ペンで示しているのが発電用部分になります」
「ゲート部分の高さが発電容量なんですね」
「この区分は堤体の修理などが必要な時に砂防の予算でやるか発電の予算でやるかという区分でもあるわけです」
「なるほど(笑)解りやすいですね」


続いて出されたこの図表。
何かというと計画堆砂量と実際の堆砂量を比べたものです。

「“かんな流し”はこのダムが計画された50年前に比べ、近代製鉄の発展で減少しました。
その為に実際の堆砂量は、計画されていた量よりかなり少ないんですよ」
「うわ〜♪それって産業的には良いのか悪いのか微妙ですがダムとしては凄くいいことですね♪」

計画堆砂量より実際の堆砂量が少ないという話を聞くと妙に嬉しくなってしまいます。

日本が誇る最高純度の鉄“和鋼”玉鋼。

原料の砂鉄は主として山から採取する砂鉄です。
仕組みと作業の流れは日立金属たたらの話の中の
鉄穴流しのページが非常に判りやすいです。

大量の水を使い、河床が上がり天井川になるリスクを抱えていた
かんな流しは斐伊川の水力発電ダムに砂防の役目をも求める事になりました。


さらに青写真続く。
これが三成ダムの平面図です。

「いいアーチっぷりですねぇ」
「もう少し下流にもう少し大きいサイズのダムを築堤する計画もあったんですよ」
「下流にですか?」
「はい。この場所はあまり両岸の岩盤が良くなかったので。だから両岸重力式にしたわけなんですが」
「下流でもアーチ式の計画だったんですか」
「いや、それ以前に、その場所で作ったら国鉄さんの線路が沈むから無理という事で計画段階で中止に(笑)」
「(ぷ) そ、それは確かにっ!国鉄の路線変更なんかしなくちゃいけなくなったらダム予算が爆発しちゃいますよね」

と、またまた貴重なエピソードをお聞きすることができました。


さらに青写真。

こうして見ると薄い重力式アーチみたいに見えますが
重力式部分は両岸の土砂吐きがになっていますので
中央は完璧にアーチアクションを利かせたアーチダムなんです。


これはなんと竣工当時のパンフレットのコピー!
50年前のパンフレットです!

『現在建設中の九州電力上椎葉の堰堤もアーチ型で、今後この型の堰堤は相当建設されるでしょう』
と書かれています。

はい。その後、よい地盤に恵まれた場所に52基も作られましたね♪


竣工時の諸元です。
堤高はこの頃と現在とでとらえ方が違ったのかもしれません。
現在の基準で測定したところ堤高は42.0mでした。
最新データ。


この図はシンプルで青写真よりわかりやすいですね。
いい感じのアーチっぷり。
この図も説明板の所に欲しいな。
と、ダムマニア的感覚。


堤体左岸に発電用取水口です。

エプロンの下に減勢の為の副ダムが設置してあるのが判ります。
下流では両岸を行き来できませんので両岸にそれぞれ管理道路が有り
堤体直下まで行けるようになっています。