丸山ダム 見学 その14
そしてエレベーター。
「このエレベーターは..。」
「はい。」
「なにぶん作られてから古いもので..。」
「..よく止まるんですね。」
「そうなんです。」
「公団の下久保ダムでもそういうことがあると伺いました(笑)。」
「なので、エレベーターは使えないです。」
「はい。」
「で、階段ですが。」
「はい。」
「このとおり急勾配で危険なんです。」

急勾配階段です。
藤原ダムよりずっと緩やかですが。
藤原ダムでは転落防止壁が階段に取り付けられていましたから(笑)。
ただ、勾配が急というより奥から響いてくる
ごおーーーっという風音とも水音ともつかない音のほうが気になりました。
もしかしたら謎が潜んでいるのかも。

上に続く階段はこちらです。
「監査廊の見学はここまでになります。」
「はい。ありがとうございます。」
本当はもっと奥まで入りたかったのですがイベント期間中だし
お忙しいだろうと思って素直に諦めました。
管理所に戻ってコントロール室を見学です。
「狭いんですよ。」
「え、これで狭いですか?」
「この状態で人が動き回るともう大変です。」
私がチビなので気にならなかったのですが大柄な人がたくさんいたら確かに狭いかも。
おとなしく座っているので丁度位のスペースにぎゅうぎゅうに
たくさんの機械が収まっているわけですから手狭なのかも知れません。
◆ ◆ ◆
今回の丸山ダム訪問で管理所の方に色々聴きたいと思っていたことが在ったのですが
治水についての話を色々して頂いているうちに自ずとその話題が出てきました。
下流河川でキャンプなどをしている人にダムが放流を開始するときの注意喚起。
ダム放流を知らせるサイレンについて。
近畿に大きな被害をもたらした昭和57年水害については色々資料を集めていますが
他の地方で起きた事例についてはまだまだ勉強不足の自分です。
一番気になるのはダム放流のサイレンを鳴らしているにもかかわらず
逃げ出さなかった人たちへの責任をダム管理側が追う必要があるのかという事です。
下流では晴れていてダム放流のサイレンが現実味を帯びていないために
水位が上がるとは思わずにたいした事はないと高をくくっていたためにおきる事故。
毎年一件はあるようでTVで放映されています。
神奈川県の丹沢山系で起きた衝撃的な玄倉川の事例は特殊ですが
放流のときは本当に気を使うダム管理所なのです。
「中州に取り残された人達のニュースを見るたびに
どうして素直に注意を聞き入れないかと思うんです。」
「この間あった中州に取り残された事故では大きなイベントで盛り上がっていて
耳に入っていなかったのかもしれないし自分たちの上は晴れているから
現実味が無かったのかもしれないですね」
「でもサイレンは鳴っているわけでしょう。」
「鳴らしますが結局、川に対する知識を持たない人が増えている事が大きな原因でしょう。
昔は川に行くというのは釣りをする、水遊びをすると限られていて、
行く人も山で天気が変わる事を知っている。でも今は車を入れてバーベキューと
川の使い方が変わってきているわけですね。」
「それなんです。バーベキューに来て必ずドライバーは酒を飲まないで
突然の退避勧告にも対応できるようにしているかといえばそうじゃなくて
結局、殆どの場合が飲酒運転になっちゃうわけですよね。それって自己責任ですよ。
そんな事でダムが責められるなんて筋違いもいいところだと思うんです。」
「われわれとしては必要なのは情報提供と考えています。」
「でもサイレンを鳴らしても出て行かない人に管理所の方が10人足らずなのに
全員で下流に退避勧告に出るわけには行かないでしょう。その為のサイレンなのに。」
憤懣やるかたなしという顔の私をいさめるように所長さんはモニターを見せてくださいました。
「実はこういうものがありまして..」

「これは?」
「下流の観測ポイントに設置してあるライブカメラです。」
「これで取り残されている人とかいないかチェックを?」
「はい。見つけることが出来ますね。」
「そしたら近くの駐在所とか役場に電話して注意喚起することができるんですね。」
「それも出来ますが実はこのカメラの横にスピーカーがついてまして
『○○に居る方、至急、川から出てください』と直接お知らせできるんですよ。」
これは凄いっっ!!
素晴らしいシステムだっ!!
思わず感動して拍手です。
「我々の出来る事はより多くの正確な情報を提供する事だと思っています。
それを踏まえた上で、後の判断は各自にお任せするより在りません。」
毎年おきる水の事故。
たとえそれが小さな発電用取水堰堤であっても
発電ダムであっても
かんがい用ダムであっても
マスコミはダムと名がつくものが上流にあったら
そしてそれが放流していたら
十把一絡げに、まるでそれが
洪水調節機能を持つダムであるかのように
ダムが放流したから事故がおきたと騒ぎ立てているように思います。
そういう不勉強なマスコミの不届きな報道に
ダムの負のイメージを撒き散らされたらこんな迷惑はありません。
◆ ◆ ◆
コントロール室を見せていただいた後、間組が作った記録ビデオを鑑賞させてもらいました。
短い時間でしたがたくさんの事をいっぱい教えてもらえました。
管理所の皆様、本当にありがとうございました。

『森と湖に親しむ旬間』
50周年を迎えた丸山ダム。
この日、訪れる人の車は地元ナンバーばかりでしたが
是非全国の方に見てもらいたい丸山ダムです。

この堤体も沈む日がきます。
治水のために頑張ってきた堤体。
発電のために頑張ってきた堤体。
新丸山ダムの工事の際、神殿の門のようなゲートは撤去されるかもしれないと聞きました。
水没する事を前提として作られていないゲート支柱は撤去される運命なのでしょうか。
哀しい事ですが安全の為には撤去は仕方がありません。
観光地となるためにも安全が確保できなければ駄目なのだと各地の鉱山の遺構で耳にしました。
そして丸山ダムと新丸山ダムは治水の守護としての役目を負っている建造物です。
観光の為にあるものではなく、水との戦いの最前線で頑張る建造物なのです。
安全管理が全てに優先する事は当然です。
寂しいですが仕方がありません。
この堤体は国内で初めての100m級ハイダムとして建設されました。
発電のために頑張ってきました。
そして治水のために数々の洪水調節を行ってきました。
唯一の黒星は昭和58年の台風10号。
充分仕事しています。
それだけの成績、なかなか残せるものじゃないです。
国内初のハイダムの貫禄充分です。
日本で初めて作られた100m級ダム。
まだハイダムでの治水についてデータが圧倒的に不足していたはずの戦後の日本で
作られたダムが黒星ひとつなんて物凄い事なんだと思います。
新丸山ダムが出来てもその堤体は水の中で ずっと立ちつづけて欲しいです。
日本の治水ダムの鑑として。
そんな気持ちが湧いてきた丸山ダム見学でした。