真川調整池 見学 その3
天端に行きたいのですがフェンスがありました。
フェンスによじ登ったり三脚を手で持って高い位置から狙ったり
苦心惨憺。
真川調整池のダム湖は地図で見るとグランドピアノの形をしていると思います。
左右逆のグランドピアノですが。
ダム湖は小さく奥まで見渡せます。
この水の神秘的な美しさに大汗をかいているにもかかわらず疲労が退いていきました。
ダム湖周囲には転落防止チェーンが設置されているのが見えました。
三滝ダムと同じくアングルが限られて大変悔しかったので
気がつくと変な写真をいっぱい撮っていました。
横向きでもバットレスだから違和感がない。
縦でも横でもコンクリートとして美しい。
横斜め向き
縦でも横でも愛でられるバットレスはやっぱり凄い。
G R E A HG で同じことしたら変過ぎ。
左岸にある取水口建屋。
ズームしてじーっと見ていると突然機械の作動音が響き
取水ゲートの除塵スクリーンが動き出しました。
北電の人がいるのか?
と、わくわくしていましたがどなたも出て来られませんでした。
当然のように自動化されていたようです。
北陸電力保有のバットレス2基、真川調整池と真立ダムは
土木学会の「日本の近代土木遺産〜現存する重要な土木構造物2000選 」
に選定されています。
真立はランクC
真川はランクB
違いは何なのでしょうか。
堤体の規模も状態も2基はよく似ているのですが。
中国電力保有のバットレス2基、恩原ダムと三滝ダムも
土木学会の「日本の近代土木遺産〜現存する重要な土木構造物2000選 」
に選定されており
恩原はランクBで国登録有形文化財
三滝はランクBで土木学会選奨土木遺産
函館水道局保有のバットレス、笹流ダムは土木学会選奨土木遺産でランクA
東京電力保有のバットレス、丸沼ダムは土木学会選奨土木遺産で国の重要文化財でランクA
保存状態や改修の度合いがランクに関与しているという事なのでしょうが
だとしたら笹流は原型がどこに行ったのかという位ダイナミックに改修されているのにランクA
ランクBの三滝と恩原と真川を比べたら土木学会選奨土木遺産が三滝だけというのは
やっぱり特殊な構造が関係しているのかなと思ったりします。
真川と恩原を比べれば建設当初の面影が顕著なのはやっぱり真川の方だと思うからです。
真立がランクCなのはたどり着けないからでしょうか。
選定されても誰も見に行けない場所にあるダムであればランクCというのはなんとなくわかります。
それとも改修工事などで余程、景観が変わってしまったというのでしょうか。
ただ単に北陸電力さんが控え目でアピールしていないだけだったりして…
選定基準が良く解りません。
バットレスは貴重なダムなんです。
ランクなど付けずに全部、選奨土木遺産にしてほしいですね。
バットレス構造をじっと見ます。
雨にぬれた堤体をじっと見ます。
見たかったのはこのコンクリート。
撮りたかったのはこのコンクリートです。
凍害と戦っているコンクリートです。
その肌は雪と冷気と戦い過酷な環境で痛めつけられていました。
厳冬期、氷点下の空気で堤体は一体どのくらいまで冷やされるのでしょう。
ダム湖に薄氷が張る朝に水底に重く沈んだ4℃の水
堤体の熱を上げるほどに力はないでしょう。
冬の晴れ間
山深い場所に太陽の光が届いた時に
コンクリートの表面を覆っていた雪と氷が溶ける時間になっても
堤体に伝わる熱は両岸の地熱の方がまだ温かい位なのでしょうか
雪が吹きつけ
雪の結晶が舞散り
コンクリートの上に溶けることなく積み重なっていく冬
下界は30℃を超える暑さの8月末。
標高1000mとはいえアブの羽音は耳に煩く
全身から汗が滴り落ちていました。
そんな状態であったにもかかわらず
建設当初の姿を色濃く残したバットレスの
痛めつけられたコンクリートの肌を見て
頭に去来していたものは
この堤体が耐えてきた冬の寒さでした。
真川調整池を見学した後、管理を行っている
北陸電力・常願寺電力部の方とお話しすることができました。
「真川ダムに行ってきたんですが・・」
「え! 真川にですか」
「はい。頑張って行ってきました」
「道、通れましたか」
「・・・藪でした」
「今年はまだ草刈していないんですよ。良く行かれましたねぇ・・」
「どうしても真川を見たかったので」
「真川は熊も出るんですよ。猿も出ますけど」
「はい・・そうお聞きしていたので熊鈴付けて行きました」
「(笑) 熊鈴つけていたら熊が来ますよ。ラジオの方が効果的です」
「そうなんですか。では次はラジオにします」 ←また行く気らしい
「折角、遠くからお越しになるんだったら事前にお知らせくださいね。
道の様子とか教えて差し上げられますから」
「! ありがとうございます〜」
北陸電力の方の優しさにホロっときてしまった真川調整池見学でした。
ありがとうございました。
装備を改めてまた行かせていただきます。