蛇ヶ洞ダム 見学 その1
2009/1/29 更新
全国各地にある位置未確認ダム。
ダム協会様のダム便覧に名前やデータの一部が登録されているけれど
所在地を含めデータがでそろっていない謎のダム達です。
各地の位置未確認ダムを探しに行くというのはなかなか楽しいものです。
宝探し感覚とでもいいましょうか。
探索心をくすぐる何かがあるのです。
住んでいる近畿にも位置未確認ダムはあるのですが
今回目を付けたのは愛知県瀬戸市にある『天神池』というアースダムです。
Dam Mapsで『天神池』を調べるとこのような場所にあると表示されます。
愛知県と岐阜県の県境近くです。
そしてGoogleの機能を生かして航空写真を確認したところ
異様な姿が見られたのです。
航空写真より拡大できるレベルの地図画面です。
これ・・・
貯水ダムのデザインじゃない
砂防堰堤だ
主堰堤と副堰堤がある
航空写真で見ても堤体が薄薄だし
でも・・
取水塔がある
砂防堰堤の形で取水塔って何者・・・?
そしてwebでこのダムのある河川の名称を調べたところ
蛇ヶ洞川という河川であることがわかりました。
蛇ヶ洞川を調べていると瀬戸市水道部のHPに行きあたりました。
更に“蛇ヶ洞”と“ダム”で検索したところ『蛇ヶ洞砂防ダム』という物がhitしました。
なんとこのエリアには『蛇ヶ洞砂防ダム』という物があるようなのです。
しかも砂防堰堤であるのにゲート操作規則があると書かれています。
砂防堰堤にしか見えないいのに取水塔がある
この川には瀬戸市水道部の保有している水源地がある
・・・ってことは
この『蛇ヶ洞砂防ダム』というのが
Dam Mapsで示されているダムで間違いないんじゃないか?
灌漑目的の『天神池』は全く別の場所のアースダムで
座標が間違っているだけという可能性が頭に浮かびました。
そして位置未確認の『天神池』は頭から消えていました。
この不思議満開の『蛇ヶ洞砂防ダム』を見たくて仕方がなくなっていたのです。
こいつは…
現場に行くしかないな・・・
でも水道局のダムだったら
多分いきなり行ってダム見せてくれとかお願いしても
断られる可能性が高いな・・・
水道水源はガード堅いからな〜
ま、見学は無理でもパンフレット貰うとか諸元を聞くとか
情報だけでももらえたら良しとするか
という事で雨の中、真夜中に家を出ました。
この日はまず朝一番に岐阜県のダムを見に行きました。
そしてそのまま南下して県境を越え瀬戸市に入りました。
県境から3.3kmくらい走ってくると交差点のすぐ近くに目的地
蛇ヶ洞浄水場が現れました。
勇気を出して敷地内に入ります。
敷地の端っこに車を止めて周囲を見回しましたが人の姿がありません。
意を決して玄関に入ります。
玄関入ってすぐの所にいきなりこのように写真と地図が。
思わず見入ってしまいました。
そして事務室は2階という表記に従い
スリッパに履き替えて2階に上がります。
2階に上がると事務室に職員の方の姿が見えました。
ガラス越しに窓口を開けようと四苦八苦していると
(指に脂っ気が全くなくてかさかさでガラス戸が開けられませんでした)
近くにいた方が気付いてくださいました。
「はい。何か御用ですか」
いきなりルンペンのような姿の不審者が窓口に現れたというのに
非常に穏やかな声をかけてくださったので緊張が一気にほぐれました。
「突然お邪魔してすみません。私、ダムが好きであちこちのダムを見て回っているんですが
こちらの浄水場の水源地の蛇ヶ洞ダムというダムについてお聞きしたくて参りました」
「あ、そうなんですか。どうぞ中にお入りください」
と、すんなり中に入れていただき着席。
この場所に来た目的と自分の疑問を説明しました
「ちょっと待ってくださいね」
と、応対してくださった職員の方は本棚からいくつかの資料を出して来てくださいました。
そしていきなり目の前に写真が!
「これが蛇ヶ洞ダムですよ」
「えええええっ!!」
( ↑ この写真の著作権は瀬戸市・蛇ヶ洞浄水場管理事務所にあります。
御厚意で掲載許可をいただいておりますので無断転載は絶対にお止めください)
堤体ができた直後、試験湛水が始まる前の航空写真です。
堤体下流側からのこの写真。
主堰堤と副堰堤。
水通しに水叩き。
どこをどう見ても砂防堰堤です。
完全な不透過型砂防堰堤です。
( ↑ この写真の著作権は瀬戸市・蛇ヶ洞浄水場管理事務所にあります。
御厚意で掲載許可をいただいておりますので無断転載は絶対にお止めください)
さらに上流側からの写真。
なんと立派な取水塔でしょう。
物凄く変。
何、この、謎の配置。
違和感満開。
「蛇ヶ洞ダムはもともとこの場所に砂防ダムとして建設が計画されたものなんですが
ダムを造るのなら水源としても活用できるようにという要望がありまして
水道水源として造られたものなんです」
沢山ダムを見てきましたが
こんな変わった物を見たのは初めてです。
砂防堰堤でも地元の要望に応じて貯水機能を持たせ
不特定用水や灌漑用水に活用されているものがあるという事は
HPのお客様の砂防の専門家の方からお聞きしたことがあったのですが
建設時から貯水を目的に堤体は不透過型砂防堰堤で
取水塔まで持っているという事例は聞いた事もありません。
ダムを造るのなら貯水機能も・・・って
安定計算、砂防堰堤と貯水ダムではぜんぜん違うんじゃないの・・・
あ、でも広島の門田貯水池は砂防出身の貯水ダムだったな
まだ見たことないけど群馬の坂本ダムも砂防出身の貯水ダムだよな
こういうのってありなのか…
戦前のダムとかだったら転用とかありかも知れないけど
このダムまだ新しいのに
こんな斬新なアイデア、よく認可されたな〜
説明を聞きながらしばらくあまりの驚きに変な顔になっていたかと思います。
「ダムは見に行かれたんですか?」
「いえ、来る途中にちらっと木の間から取水塔が見えましてあの辺りかなと思いつつ
管理道路入口にチェーンが張ってあったので見に行っていません。
水道水源だし勝手に入るのは駄目だろうと思って…」
「じゃ、見に行きますか?」
「え!!そんな・・いきなり・・いいんですか?」
「折角お越しになったんですから」
と、突然、職員の方に案内をしていただけることになったのです。
なんという幸運でしょう。
今日はダムの神様がウインクしてくれてるに違いない♪
という事で浄水場から少し離れた現地にやってきました。
管理道路ですから許可がないと敷地には入れません。