軸丸発電所更新工事現場 見学 その1

2022/9/1 更新


阿蘇くまもと空港駅、肥後大津駅です。
JR熊本駅から豊肥本線でやってきました。


豊肥本線は開業100周年のようです。
ただ、屋根の下で色々見づらい。
せっかくの看板なのに。


構内にはお祝いで写真パネルも展示されていました。
昨年8月に全線開通していました。
素敵な赤い車両と工事の終わった数鹿流崩れ地点の写真です。


肥薩線への応援メッセージもありました。
肥薩線は熊本県の八代から人吉の区間で球磨川水害で
いくつも橋梁が流されました。
復旧工事が進められています。

と、駅舎の中をきょろきょろしていると
本日もまたまたお世話になります
九州電力様のお車が到着しました。

◆ ◆

本日見学させていただくのは大分県の豊後大野市にある
軸丸発電所の更新工事現場です。

肥後大津駅から豊後大野市に向かう途中、通過したのは竹田市。


竹田市というと白水堰堤、音無井路の円筒分水
断崖絶壁に囲まれたトンネルの多い不思議な市街地
ダムや発電所めぐりだけでなく、市街地を散策したい欲に駆られる素敵な市です。
つまり、ゆっくり市街地めぐりをしたことがないということです。
とてもしたい。

竹田市で水力発電というと「竹田水田」が県内初の水力発電所である
竹田第一発電所を明治32年(1899年)に完成させたエピソードが有名です。

「竹田水田」は地元竹田の豪商、黒野猪吉郎翁が明治25年に京都で琵琶湖の水を利用した
水力発電開発を見て、地元竹田に「竹田水電」を作ったというのです。

琵琶湖の水を利用した琵琶湖疏水の蹴上発電所♪
日本の事業用水力発電発祥の地・蹴上発電所♪


竹田市街の九州電力送配電・竹田変電所の門扉の前には
竹田第一発電所の説明板もあるのです。


水力発電について地域の方に説明したときに
「水から電気ができるわけがない〜」
「琵琶湖の水と竹田の水は違う〜」
と、なかなか理解を得るのに苦労したという事がちゃんと記されています。
事業を始めるのっていろいろ大変。

その後、「竹田水電」は竹田第二発電所を大正12年(1923年)に
第三宮砥発電所を昭和4年(1925年)を作りました。

「竹田水電」による大分県初の水力発電事業から少し遅れて
九州水力電気が大正9年(1920年)に軸丸発電所
大正12年(1923年)に沈堕発電所を運開しました。

まだ年表を全部見ていないので順位ははっきり言えませんが
軸丸発電所はとても歴史ある発電所だということは間違いないです。

◆ ◆


ということで魅力的なR57をひた走って豊後大野市の
軸丸発電所のリプレース工事の作業所に到着しました。


現場見学の前に作業所内の会議室で工事について
説明を頂けることになりました♪


こちらが九州電力様のプレスリリースです。
発電所を新しくして最大出力もアップします。

設備の高経年化に伴い、あちこちを新しくするのですが
発電所建屋と水車も新しいものに。
水圧鉄管も新しいものに。
水路トンネルも補修してよいものに。
という、かなり広範囲にわたる更新工事です。

軸丸発電所は昭和29年に6600kWから12500kWにパワーアップしていますが
今回はさらに13600kWにパワーアップします。

説明資料には軸丸発電所が平成2年7月2日の豊肥水害や
平成24年九州北部豪雨で浸水被害を受けたことが記されていました。

平成24年の九州北部豪雨というと
7月3日に筑後川水系花月川、山国川の出水がありましたがこれは別扱いになっていて
7月13日から14日にかけての豪雨を含む、8月5日までの前線停滞による降雨を指すようです。

なので最初は資料を整理しているときに混乱しました。
ちなみに1000年に一度の大雨の平成29年九州北部豪雨とは別の水害です。
九州北部豪雨、頻度高すぎ。
見分けるのが困難。
とりあえず自分の中では
平成24年7月3日>>山国川大変だったけど耶馬渓ダム超頑張った
平成24年7月13日>>菊池川と白川でとんでもない水位
平成29年7月5日>>1000年に一度クラスの雨、寺内ダム大活躍した
で整理してますが・・・。
とにかく、軸丸発電所が浸水被害を受けたのは
平成24年の7月13〜14日の九州北部豪雨であるということです。
平成2年6月の豊肥水害というのは手元に資料がなくて調べたのですが
またまたこれが前線性降雨で竹田市内で川が氾濫して大変なことになっていました。

大分県災害データアーカイブ【平成2年6月大雨(豊肥水害)】によると
九州電力様の沈堕発電所と大野川発電所と
軸丸発電所が構内浸水の被害を受けたとの記載が…。

平成5年9月3日にもこのエリアには大変な水害があったと音無井路の説明板で見ています。
T9313(平成5年台風13号)による出水でした。
水害履歴が多すぎて整理が大変。

発電所建屋と水圧鉄管の他に水路トンネルも補修されます。
この水路トンネルと開渠を含む導水路は約4.6kmあります。
このうちトンネルが約3.9kmです。

そのトンネルのうち1.8kmを今回、改修するそうです。

導水路のトンネルの多くは馬蹄型トンネルで床部分はコンクリート敷ですが
両側の壁は石積で天井はコンクリートで被覆しているところと
掘ったままで安定している岩盤が露出したままのところがあるそうです。

どんな改修をするかというとトンネルの内側の凸凹をなくして
パネルライニング工法というもので綺麗にするそうです。

トンネルの中に支保工を設置してレジンパネルというものを
ぴったりと張り付けてつるつるのすべすべにするのだそうです。


これが実際に現場でつるんつるんのぴっかぴかのすーべすべ♪♪に施工された
水路トンネル内のお写真です。

つるつるのすべすべになると径が小さくなっても表面の摩擦が少なくなり
水の流れを阻害しないのです。
素敵〜♪

現場でこのつるつるすべすべのパネルのお話を聞いた瞬間に頭に浮かんだのは
関西電力・宇治川発電所導水トンネルのトビケラ被害についてでした。

つるつるすべすべの真逆。
導水路トンネルの内壁にびっしりと営巣されたトビケラの幼虫の巣。
びっしり。
虫が苦手な方は検索しない方が身のためです。
虫が別に嫌いでもない自分でもぞーっとしました。

宇治発電所の水路で大迷惑をかけているのはオオシマトビケラという虫です。
砂粒を糸で固めて自分が入るサイズの巣を造るのですが
これが、多いときには水路の壁から、15cmもの厚さになり通水能力を阻害するのです。

ひどいときには宇治発電所の発電力の1割近く、2000〜3000kWもの電力が
虫によって減ってしまったこともあるというのです。
なのでトビケラの営巣被害のある発電所では“電力を食う虫”と呼ばれるとか。

なので説明を受けた後にトビケラのことをお聞きしたら
こちらにはそういう悪さをする虫はいないという事でうらやましい限りです。

◆ ◆

説明をいただいて、現場に移動することになりました。


まずご案内頂いた現場は発電所建屋(跡)です。
旧・軸丸発電所建屋は山に接した壁を残して撤去されているのです。


真っ白コンクリートの部分が旧・発電所建屋の壁を利用して
横の山を抑える役目を持たせることにしたそうです。
約600mmの厚さのコンクリートでぐっと抑える。


建機が色もサイズもいろいろでとても楽しい。
その建機がいるくらいの高さに元々の軸丸発電所は立っていました。


見ているのはこういう場所からです。
発電所建屋はすごい窪地にあったのです。
谷底というべきかもしれない。

水車を回した水が川に出ていくわけで
川のすぐ近くといえば確かに近くですが、川との間に断崖絶壁があり
発電所建屋は純粋に低い場所にあったという事で
構内浸水被害が出たということなのか…と、地形を見て納得しました。
平成24年7月13〜14日の豪雨では6.0m近く浸水したそうです。
とても悲しい…。

ちなみに隣の変電所はちゃんと高い所にあります。

という事で、今回の工事では発電所の建屋は土台を盛って
高い所に移動しますが、落差はばっちり確保するために
元々の深い谷底に近い場所に設置することでパワーアップするわけです。


水圧鉄管も新しいものになるので切られています。

ううう。
水圧鉄管の廃材ほしいな。
ちっちゃい手のひらサイズの廃材ほしいな。


と思うのはwDN-Kisogawaで関西電力様からダムビンゴの景品にと
丸山発電所水圧鉄管をちっちゃく切り取ったものを廃材として
提供してくださったのが頭にあるからです。

地元の方でもほしいと思う人いるかもしれないなと思ったり。
水力発電所は地域の皆様とつながりが深いので。
愛され発電所の一部が手元にあるとか嬉しい人もいるんじゃないかなと。


こここここここここ
こここここここここ
と、ブレーカー掘削の音が現場に響いていました。
ブレーカー掘削も好き好き大好き♪


二つある鉄管の大きい径の方が1号水圧鉄管。
小さい径の方は2号水圧鉄管だそうです。