石田川ダム 見学 その3


目の前の洪水吐水路を渡るためのコンクリート橋には何もありませんので
堤頂になにか問題があるのでしょうか。
転んだ人が出たとかかなぁ…と
現場でふんふん鼻を鳴らしていましたが仕方ない。


とりあえず大事な説明板の方で情報を取ります。


まず平面図を見て見慣れないデザインに疑問符が飛びました。

先ほど見てきた堤体の右岸を走る洪水吐水路には“余水吐”の文字。
そして国内のフィルダムではそもそも事例が少ない
堤体の底を走る水路、底樋タイプのルートが“洪水吐”と記されています。

おもしろーい。
治水を仕事に持つダムと利水専用ダムで
洪水吐表記か余水吐表記か変えているところは
今までたくさん見てきたけど
治水を仕事に持つダムでも余水吐って書いているところもあったし
利水ダムで洪水吐って書いているところあったし
貯水した水を吐く時にどうとらえるかという意識の違いで
言葉を選んでいるんだと思っていたけど
ここは二つとも書いてある。

底樋ルートだったら洪水で、クレスト越えルートだったら余水なんだ。
イメージ的に逆っぽいけど。
おもしろーい。
由来しりたーい。
どんなこだわりでこう名付けたんだろうかー。


メルヘンなゲートハウスのあるこちらは余水吐なんですね。


天端に入れたら堤頂から下流側を見下ろして
底樋ルートの洪水吐も綺麗に撮れたとおもいますが
立入禁止では仕方がない。


中央遮水壁型ロックフィルダム。

ふむ。
ゾーン遮水じゃないのか。
フィルダムの分類方法は
堤体材料による分類でアースフィルかロックフィルに分ける方法と
どこで水を止めるかという遮水方法で分ける方法があります。

いわゆる土を盛っただけの堤高30m以下の
アースダム・土堰堤は均一型(堤体の中身、全部、土)

堤高30m以上の大規模アースダムではちゃんと中央に
粘土質のコア材を遮水ゾーンとして設けている事が多いので
この場合はアースダムでも均一型ではなくゾーン型になります。

国内の多くのロックフィルダムで採用されているのが中央遮水ゾーン型フィルです。
一般的にセンターコアフィルといわれているやつです。
遮水のコアが中央にありダム軸がゾーン内に収まっています。

ダム軸からコアが外れているのが傾斜コアフィルですが
国内では御母衣・九頭竜・岩屋・岩洞くらいしか事例がないとか…聞いています。

均一型でもなくゾーン型でもないのが遮水壁型です。
国内で事例が多いのは何といってもCFRDとAFRDの表面遮水型。

事例が多いのはAFRD(アスファルトフェイシング)です。
CFRD(コンクリートフェイシング)は国内で数が少ないので…。
海外ではCFRDが主流です。

コア材料がちゃんと確保できる贅沢なゾーン型とかは少ないのです。

そして非常に事例が少ないのですが
戦後すぐのアースフィルと古いロックフィルに時々見られるのが
中心(中央)遮水壁型です。

これはフィルダムの中央にコンクリートの壁を立てて
そこで止水しているという造りなのです。
九州電力様の地蔵原ダム(大正11年竣功)や
東京電力様の鹿沢ダム(昭和2年竣功)が有名です。


説明板に非常に詳しく書かれている石田川ダムの断面図です。


堤体の中央に“心壁”と記されています。
コンクリート製の壁が設けられているのです。

気になるのは普通のゾーン型フィルに比べて
トランジションの厚みがすごいことです。

なるほど。

このあたり
なんで河川管理施設等構造令が出た後では
ダムのデザインや形って没個性になったのかという点を思い浮かべ
すごく昔ではない、ちょっと昔のダムって
ホントに個性的でエンジニアの方の挑戦的な姿勢が表わされているなと
見ていて楽しくなるところではあります。


ということで
天端に入れなかったのが残念でしたが
説明板の情報が深くて面白くて
堤体の勾配を含めてあちこちに見入ってしまう
個性的な石田川ダム見学でした。

また天端に入れるようになったら再訪せねば。