池津川取水堰堤 見学 その1

2021/7/1 更新


国土交通省 近畿地方整備局が管理する利水ダム、猿谷ダムです。
国交省なのに利水ダムという変わり種です。


猿谷ダムは、より多くの水を集めるために
ダム下流の支川の上流から貯水池へ導水しています。

最上流が河原樋川取水堰堤(堤高6.75m)です。
そこで取水された水が届くのが池津川取水堰堤。
ここは堤高が16.8mあるのでハイダムになりダム便覧にも載っています。

池津川取水堰堤からの水は大江谷取水堰堤と
キリキ谷取水堰堤を経て猿谷ダム貯水池に届けられます。

◆ ◆


今回、会いに行くことにしたのが池津川取水堰堤です。
野迫川村にあります。

五條市大塔町から県道734号線を進んでいくと到達するのですが
途中には大きな崩壊地が二つあります。
GoogleMapでもはっきりと見えている複数の山腹の斜面崩壊。
中央付近の二つが赤谷地区の崩壊地です。

2011年9月2日から4日にかけての豪雨災害
紀伊半島大水害で出来た崩壊地です。


昔のXバンドMPレーダーの画面には
紀伊半島大水害の後、しばらく、崩壊地で発生した河道閉塞、塞止湖が
赤い線とマーカーで表わされていました。


大規模な河道閉塞がいくつも発生しました。

最も大きな斜面崩壊は栗平地区で起きた物で約1390万m3の崩壊土砂量でした。
上の図で右側にある赤線で囲まれた部分です。
形成された天然ダムは高さ100mにも達しました。

次いで大きかったのが赤谷地区の約900万m3の土砂量です。
左側にある赤い線で囲まれた部分です。
こちらは67mの天然ダムが形成されました。

崩壊地は対策工事を行わないと大雨のたびに土砂が発生し
大きな災害が繰り返されます。
なので砂防工事、治山工事が必要になってきます。

紀伊半島大水害ではあまりにも広域に被害があり
道路は落ち橋は流され
山が崩れ川は暴れ
復旧は並大抵のことではなかったのです。

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発災直後の土木学会の現地調査報告書です。
赤線で囲っている部分がT1112の豪雨で崩れた斜面です。
青い線で囲まれているところは過去に滑った斜面です


建設技術展で展示されていたパネルの写真です。
赤谷川と池津川の合流点から赤谷川の上流方向を見た航空写真です。
ごっそりと滑り落ちた斜面の土砂が赤谷川の流路を完全に塞いでいる事が分かります。
河道閉塞、天然ダムが形成された状態です。

上流から流れ来る水がこの土砂、天然ダムによって堰き止められ
塞止湖が発生しているのも写真に写っています。

そして天然ダムが形成された時に
このまま落ちてきた土砂を利用してそのままダムにしてしまえばよいのでは
という意見がちらほら出てきますが
天然ダムは、締め固めもしていない上に中身は樹木や大小様々な岩に土に礫に砂が
ぐちゃぐちゃに混ざっていますので強度が全く信用できない不安定極まりないものです。

そのまま放置することはまた大雨が降った時に崩れてくるか判らないという
極めて危険な代物です。

なので崩壊地を安全にするぺく対策工事が必要になるのです。


紀伊半島大水害による河道閉塞について 2 箇所の緊急調査を終了します

平成31年年度末の嬉しいプレスリリースです。

大規模崩壊に伴い河道閉塞が発生した5つの地区のうち
奈良県野迫川村の北股地区と、和歌山県田辺市の熊野地区
の対策工事が進んだ事を教えてくれる内容でした。

対策工事とは砂防堰堤もですが湛水地の埋め立てが完了したことを意味します。


池津川取水堰堤に行く途中にある赤谷地区も着々と工事が進んでいました。

発災から10年経ちました。

どんどん開通するトンネルと
少しずつ崩壊地の法面も対策工事が進んできたので
会いに行くことにしたのです。

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五條市大塔町にやってきました。
自分の中ではまだ大塔村なのでついつい大塔村と呼んでしまいます。

R168から川の方に降りてくるとパッと目に入る
とにかく目立つ真っ赤な三角の橋。
ふれあい大橋といいます。


他で似たような橋は見た事がありません。
調べたところ、これは三角ローゼ橋だそうです…。

ワイヤーなのにローゼ橋?
ニールセン橋じゃないの??
と疑問符が飛びます。
橋は難しすぎてわからないです。

橋を渡って県道734号線を進んでいきます。


県道を少し進むと未舗装のダートになります。
一度車を止めて来た方を振り返りました。


見えているのが赤谷の東側の崩壊地です。
赤谷地区では二つの崩壊地が隣接しています。


砂防堰堤も破壊されています。


冠頂部はこんな状態なので大雨が降ったら容易に土砂が発生してしまいます。


砂防堰堤もですがところどころにトンパック(フレキシブルコンテナパック)が
積まれているのを見て、勿論、重機で作業したのは予想できますが
この斜面を上がったのか??と驚いてしまいました。
そうとうきつい傾斜です。