幌加ダム 見学 その4


排砂バイパストンネル吐口の方も見せて頂きました。
洪水吐水路からさらさら流れ出ている水が見えています。

ここからは堤体のロック材が全然見えませんが
堤趾部がナチュラルに森になっているせいかと思います。


吐口から直下の河道迄の勾配がとても急でした。

ここが設計段階からとても苦労されているところの一つだとのこと。

水が流れるだけでも直下は洗堀防止の対策をとらないと大変なことになります。
洪水時に発生する土砂混じりのシルト分が多い濁水と違って排砂バイパストンネルでは
巨石も流れてきます。

あ、砂。砂。
“人頭大の砂”。
排砂バイパスだからwww

以前、関西電力様の旭ダムの排砂バイパストンネルを見学させていただいたときに
ガンガラ ゴロゴロ ドーン
と、水と一緒に“人頭大の砂”が流れて来るのを目にしているのでwww。

こんな急勾配の吐口のコンクリートでそんなものがどーっと流れてきたら
普通のコンクリートだったらあっという間にぼろっぼろになってしまいます。

その説明を受けていて最初に頭に浮かんだのは常願寺川の横江頭首工でした。
横江頭首工では岩が流れてきます。
それを受けても破壊されないように水叩きの手前に鋼鉄製のレールを並べて
コンクリートを守っています。

幌加ダムの排砂バイパストンネルの吐口もレールを配置するとお聞きして
やっぱり効果がある方法だから採用されるんだなと思うなど。


続いて吞口も見せて頂きました。

とっても滑らかなコンクリートの曲線が素敵。


吞口には鋼製のライニング材。
丁度作業している人の後ろ姿があるので高さがわかりやすいと思いますが
3m位まで保護されています。

設計時には日本初の本格的な排砂ゲートを備えた関西電力様の出し平ダムや
排砂バイパストンネルを装備した旭ダムの観測データを参考にされたそうです。

宇奈月ダムの排砂ゲートのような天然石張りは最高強度ですが
コストが半端なく跳ね上がります。

出し平ダムは出し平ダム設計前に上流の小屋平ダムで
鋼製ライニング材のテストをし、最も摩耗しなかった鋼材を採用しました。

ライニング材はそれぞれの川で適しているものが違っていて
ゴムを張る方が良い川もあれば、超高強度繊維補強コンクリートパネルを張る方が
良い場合もあります。

それぞれの川の環境とトンネル形状で違ってくるのです。

色々な先例を踏まえて幌加ダムは最適材を選んで使用していることになります。


現場で掲示されていた概要図です。

貯水池上流に分派堰を設けます。
綺麗なお水は貯水池へ。

洪水時の濁水は排砂バイパストンネルへ。


俯瞰写真にイメージを乗せてもらって分かりやすい。

ここで「通砂バイパス」と書いてあるところは地味に大事なポイントです。

排砂バイパストンネル Sediment Bypass Tunnel
略してSBTですが

要は貯水池内に流れ込んでくる土砂を貯水池内にたまらないように
下流に流すトンネル式水路をいいます。

しかしここで、ややこしい日本語の突っ込みをする人がいまして
貯水池内に溜まっている土砂を流すのかと
堆積しているものを流すのかと
難癖をつけてくる人がいたのかと思われます。

排砂は溜まった土砂を流すものですが
通砂は今から流れてくる砂をそのまま流すので
貯水池に堆積した土砂を出すわけではありません。

九州電力の山須原ダムと西郷ダムが実施しているのが通砂です。

出し平ダムや宇奈月ダムの運用を見ていると
そもそも地元の山から出てきた自然な流域の土砂だし
溜まった分を綺麗に排出するのに何を文句言われることがあるんだろう…
という感じなのですが、なんにでも文句をつける人がいるので
宇奈月ダムでは細砂通過放流、排砂放流、等、出水時の操作を細かに分けています。

幌加ダムでは貯水池に堆積していた土砂は掘削除去して下流の土捨て場に
きちんと移送されて容量はあけられています。

でも
英語でいうと全部SBTなのです。
それでいいと思うんですが…。
色々難しいですね。


俯瞰写真で見るとホントに吐口がきゅん!!と落っこちるような勾配になっているように見えます。
国立公園内、工事の範囲を可能な限りコンパクトにしようという
設計の苦労がしのばれます。


吞口の方に入れて貰えることになりました。
わくわく進みます。


吞口を真下から見上げました。


インバートの高強度コンクリートです。
現地で確保できる骨材で強度を上げられるだけ上げた高品質なコンクリートです。

ここまでコンクリートにこだわっても、メンテナンスフリーには絶対になりません。
必ずメンテナンスが必要になります。
何年スパンになるかはまだわかりませんが。

昨年、EADCの現地見学会で中部地方整備局の小渋ダムのSBT吐口を見せてもらったのですが
え、これ、こんなにがりがりに削られるんですか、と衝撃を受けました。
新しく更新されて三回使用しただけでこんなに鋼製部材が削られるんですかと
土砂と水量の力のすさまじさに驚いたのを覚えています。


トンネルはもうできているので吐口と吞口の完成待ちです。


戦後、たくさんのダムが建設された時に
とにかく早く貯水して運用しなくてはという使命感で
後々やってくるメンテナンスを考えていない設計がありました。

平成、令和の時代になってゲートの機械の経年劣化があっても
交換に物凄く苦労する事例も多数出ています。

それで苦労したダム管理者様。
平成・令和のダム設備ではちゃんとメンテナンスを考えた設計になっているのです。

幌加ダムのSBTではちゃんと作業用重機の搬入口が儲けられています。

考え抜かれている設計に萌え萌え♪


ここの型枠、凄い職人技。
凄く綺麗で感動する滑らかさでした。


鋼矢板が凛々しい。
分派堰は貯水池を横断する構造で、断面は台形だそうです。

ということで、昨年のEADCからずーーっとずーーっと気になっていた
電源開発様の幌加ダムのSBT工事現場を見せて頂いてきました。

T1610禍の凄まじさとその時に雨を読み切って治水協力した
糠平ダムの活躍も教えて頂いてとても嬉しかったです。

しかしこの幌加ダムの下流面勾配の魅力が一番
インパクトがありました。ホントにびっくり。

電源開発 上士幌電力所の皆様
T1610で対応された放流師のT様
ありがとうございました。