平鍋ダム 見学 その1

2022/9/21 更新


2012年にダム友のやまとり様から頂いた平鍋ダムの写真です。
この写真を見て、会いに行こうと何回かトライしたのですが
道路状況が悪くて通行止めになっていたりして、ご縁がなく
中々、会いに行けませんでした。

高知県の二級河川、奈半利川には
電源開発様の魚梁瀬ダム・久木ダム・平鍋ダムがあります。

自分はこの平鍋ダムのことを、台風による降雨で
ひどい目にあったダムとしてずっと記憶していました。


これは2011年7月の新聞のweb記事です。
平成23年台風6号(T1106)により、平鍋ダムが被災したことを記してあります。
T1106は変な動きをしたノロノロ台風でした。


気象庁のHPで 各種データ・資料>>過去の台風資料>>台風経路図で台風6号を選択

で、その変な動きが見られます。


過去の気象データ検索 >>日ごとの値>>グラフ表示


台風が行き先を決めあぐねて高知県で立ち止まってしまったのです。
そのために7月18日から19日にかけて凄まじい雨が高知県に降りました。


>>観測史上1〜10位の値

このT1106は魚梁瀬地点で既往最大の降雨量を記録しました。



    851.5mm/日

まて
その値は
網走の年間降水量(1971−2000年平均値)約800mmを超えている。
網走に一年かけて降る雨が一日で降ったというトンデモ台風なのかっ!!

い、いや、トンデモ台風というより高知県ではこの値はある…
たしか西日本豪雨の時も日雨量がこのくらいになった地点があったのを記憶している…

高知県はこういう、とてつもない雨の降り方がみられるので
過去のデータを調べていると桁が違っていたりすることもしばしばで
高知の気象とはどれだけ奥が深いのかと。
それをいうなら紀伊半島もそうなのですが。

あ、どっちも、でんぱつ様のダムがある。

T1106で平鍋ダムの貯水池に何が起きたかというと、
堤体から直線距離で600mくらい上流の貯水池右岸の大谷川で
大規模な深層崩壊が発生しました。

この崩壊土砂が貯水池にどーん!!と入ったことで段波が発生しました。
その段波の高さは5m近くにも達し、平鍋ダムの天端をどーん!!
と、越えていったのです。

この段波によるダメージで平鍋ダムの天端にあった
ゲートの機側操作盤類が負傷してしまったのです。
痛々しい…。
でも堤体は重力式コンクリートなので無傷。


頑丈なダムはともかく、この土石流によって
地域の方の生活道路が落ちてしまいました。

段波は上下流に広がりましたので上流にあった吊り橋はねじれてひっくり返りました。

その深層崩壊が起きた大谷川の復旧工事がずっと、ずっと続けられていたのですが
令和4年3月、ついに「奈半利川水系直轄特定緊急砂防事業」が完成し
4月に完成式典が行われました。
実に被災から11年目です。



これが奈半利川水系直轄緊急特定砂防事業の概要イラストです。


崩れた大谷川に設けられたのは三基の砂防堰堤。
そのうち一番大きな大谷川第3号堰堤は日本一のソイルセメント砂防堰堤で
なんと高さが29.0mもあります。

現地発生材を有効活用できるソイルセメントの砂防堰堤はとてもよいと思います。
不透過型で扞止効果を狙って作られる砂防ダムにソイルセメントはベストマッチ。


平鍋ダムに会いに行く前に大谷川の現場に行くことにしました。


令和4年4月の完成式典が終わり、静けさが戻った大谷川。
地理院地図にも記されていますが災害伝承碑がたてられました。
碑銘は伝承碑となっています。


砂防ダム名碑がありました。

スペックですが本堤 堤高 14.500m
第一垂直壁 6.000m、第二垂直壁 2.500m
と記載があります。


大谷川第1号堰堤。
水とおしの穴があいている一番大きな部分が本堤。
一段下がって、写真でさらさら水が流れ落ちている段
これが第一垂直壁です。
この下にもう一段あってそちらは第二垂直壁になります。


そしてどうしてなのかな〜??と調べていて疑問で
現地に来てもやっぱり疑問が湧いて止まらないのがこちらの記念植樹。


岐阜県の根尾の淡墨桜の実生から育てた子供の木を
記念樹として植えられたのです。

直下のダム湖はでんぱつ様の平鍋ダム。
ここは庄川桜の子供こそふさわしいのではと思ったのですが
この砂防事業はでんぱつ様じゃなくて国土交通省の直轄事業なので
選ばれなかったのかなと。


第二垂直壁の下はもう貯水池の岸です。

架けられている道路の橋脚は細めの鋼管タイプでした。
土砂の捕捉なるべくしないように選ばれたのだろうかと思いましたが
よくわかりませんでした。