羽根越堰堤 見学 その5


下流側を見ると下からはわずかにしか見えなかった導流壁がはっきり見えました。
水槽のの底の穴から吐けない分の水は水槽の端のV字部分から
堤体とこの導流壁の間を水が流れるようにデザインされています。


竣工当時の余水吐の越流コースと改修後の越流コースです。
改修後の方が早い時間から越流が始まります。

一定量までたまったら突然ザーっと流れ出すのではなく
徐々に流量が増えていくのでこの“V字型になっている洪水吐の考え方”は
ダム現場の管理に関わる方の一部では人気があるんですよ。

ここで吐ける水を超える流入があった時はこの水槽に溜まっていきます。
こちらも切欠き部分から少しずつ水が出るようにV字型。

堤体の右岸に沿って設けられた導流壁に沿って
底樋の下に流れていた川に水が流れていく仕組です。

切欠きがV字になって余水の越流量が徐々に自然に増えるようになっている事と
水槽の縁にちゃんと波返しがつけてある事と
堤体表面を流して下の川にという流し方が千苅ダムと同じだという事で
これを見ているだけでもう大喜びモード。


右岸からみた天端の様子です。
早春の山にはまだ緑も少ないですが
新緑の頃にはさぞ森の中のダムの風情が出ることでしょう。


山の奥の水源地。
ここで仕事をはじめて
今は仕事を終えたダム。

仕事を終えたダムはどうやって引退したらいいのでしょうか。

引退するためにはどういう対策が必要なのでしょうか。

長くこの地に在って仕事を続けてきました。
ここでためた水は人々の生活用水としては
蒸気機関車のために使われていた水としては
もう用いられなくなりました。

ダムとしての仕事はまだできるのに。

地域の発展を支えた貴重な産業遺産です。
でも文化財として認定し、管理を続けるためには
色々クリアしていかなくてはいけない問題が山積です。

ダムは水を貯める為めに作られたものである以上
出水時には水が押し寄せる場所に在り
その対策と堤体自体の安全計算も竣工時と現在では大きく異なります。

布引五本松ダムでは耐震工事がなされました。
美歎水源地では砂防堰堤として生まれ変わるために補強が入りました。

管理維持費用がかさむからという理由で撤去されてきた
都市部の貴重な土木遺産・建築物。

歴史的に貴重でも残されにくくなっているそういった物をサポートするためにできた
登録有形文化財制度はダムでは適用が難しいのかもしれません。
桂ヶ谷堰堤のようにダム湖の水が完全に抜けていて
平らな湖底をビオトープを持つ公園として整備するというような発想は
登録有形文化財の適用対象になるのでしょうか。


昭和初期のコンクリートダムの面影を色濃く残し
個性的な設備を持つ羽根越堰堤。

現役を引退した後、ひっそりと山奥で静かに静かに余生を送っています。
ダムである事をやめることはできません。
ダムとして引退するという事はどういう道をたどればいいのか
沈思黙考をつづけるコンクリート。

羽根越堰堤はそんな問題をそっと伝えてくれているようなダムでした。