二川ダム 見学 その4


天端に入りました。


下流を見下ろすと先ほど下から見上げていたポイントの先で行われていた
小水力発電所の工事現場です。


左岸にやってきました。
少しカーブしている天端。


元気に飛び出している河川維持流量。
河川維持流量、ただ流すだけでは勿体ない。
小水量といえどベースロードを担う安定電源。
あちこちの既設ダムで進められている工事が嬉しい。


右岸に戻ってきました。
さっき気になっていた堤体中段レベルの公園が気になっていたのです。


木々が茂る公園から見る堤体はこんな感じ。


現地にあった貯水池の容量配分説明です。


平成23年に紀伊半島で大災害を引き起こした台風12号。
治水ダムも利水ダムもダムとして力の限り闘いました。

しかしあまりにも降雨量は多く
総ボリュームで平均的な台風の倍以上の雨をもたらし
日本の災害史に残る十津川大水害(1889年)に匹敵する規模であったようです。

2011年紀伊半島大水害(近畿地方整備局)をご覧ください。

これだけの大規模の豪雨があると
山間部では土砂崩れが頻発し、その土砂は川を流れ下り
川の底を上げてしまいます。

土砂で川の底が上がれば天井川化していきます。
土砂の逃げ道を確保しない以上、堤防があれば天井川が形成されるのは当然のことです。
しかし川の近くで人の暮らしの安全を守るためには堤防は必要な設備です。

今までは堤防が脅かされることはなかった川でも天井川化していくことで
少しの雨でも越水、溢水、破堤のリスクが高まることになります。

そして堤防の改築は非常にお金がかかります。
川底を深くするために土砂を掘削、除去する工事もお金がかかります。
堤防を強化するためには堤防の横に住む人に移転をお願いしなくてはならない場合もあり
移転に同意してもらえず堤防は高くしなくてはならないという板ばさみになった結果
あちこちの川で見られるパラペットのカミソリ堤防ができることになったわけですが
絶対に崩れない堤防というのは敷幅が広いスーパー堤防。
最悪、水位が上がって表面を水が流れても堤防自体がダメージを受けない構造でなくてはならず
スーパー堤防となると大変な面積の土地確保が必要になります。

国も県もお金はありません。

しかしお金がないからと整備しないままで、また同じような凶悪な大雨が来たら
どうやって流域の人の暮らしを守ればいいのか。

今あちこちのダムで運用の変更が実施されています。


これは和歌山県の発表した県営ダムと関西電力の殿山ダムに関する運用変更のお知らせです。

二川ダムは「可能な限り水位を低下」という運用になりました。
ゲートの高さより低い水は吐くことができません。

“新運用目標A”のEL179.40mというのはオリフィスゲートの越流部の高さです。
物理的に可能な最大の容量確保という運用。

このためには取水している関西電力の岩倉発電所の運転に必要な
発電用最低水位EL181.00mより下まで下げることになりますので
水位低下している間は発電ができないことになります。

ダムの新運用に関するお知らせ 二川ダム 
二川ダム管理事務所 ダムの概要 をご覧ください。

下流の河川整備 堤防整備 河床掘削
予算も時間もかかるから緊急的に
利水を犠牲にしてでも治水を優先する。

各地で豪雨災害があったあとに進められている
この世の流れを仕方ないとわかっていても
少し悲しいと思ってしまう自分がいます。

ダムは悲しんでいないかもしれない
人のために作られたダムだから
ダムとしてできることを
利水でも治水でも
できる限りのことをしようとお仕事頑張るだけ
でも水力発電ってそんなに犠牲されていいのかな
これだけ素晴らしいクリーンエネルギー
安定供給のベースロード電源なのに
長く働いてきた
まだこれからも働き続けなくてはならない
ダムだから
ダムとして

現場で少し、しんみりしてしまったのですが
二川ダムは新運用でダムとして力の限り頑張ってくれる
だからしっかり前を向いていこう
そう言ってくれているように見えました。