出し平ダム 見学 その8


排砂路を見せて頂いた後、左岸で行われている出し平発電所工事現場にも近づかせて頂きました。


この場所に発電所の可愛い建屋ができます。
出し平発電所は
最大使用水量1.76t/s
ダム式で有効落差は37.290m
出力は540kW
備え付けられる水車は横軸フランシス水車だそうです。


下流から見上げる堤体。
ホントに何もかもが強く頑丈な造りです。


そしてここから見上げる左岸のアバットメント。

出し平ダムの左岸。
工事中に大きな崩壊が起きた場所です。

そのエピソードはダム協会のダム便覧で
関西電力北陸支社長の吉津様のインタビュー記事
公開されていますのでそこで詳しく知ることができます。

黒部の大発破も左岸でした。
宇奈月ダムの山止め工が施されているのも左岸です。


発電所工事が進むすぐ横に大きなコンクリートブロックが残っていました。

「建設時のタワークレーンの土台です」と教えて頂きました。

出し平ダムはケーブルクレーンではなく両岸にタワークレーンを設置して
堤体の掘削、コンクリート打設が行われました。
基礎の掘削工事が終わってほっとした現場を襲った長雨。
それによって引き起こされた左岸アバットメントの崩壊。

この土台は崩壊した法面に立っていました。
直撃を受けたのです。

掘削が進む途中から、左岸のタワークレーンの土台はアンカーボルトで補強されていたようです。
それはあまりにもこの地点の両岸が切り立っていたからでもあったでしょう。

昭和58年7月

黒部川に累計雨量800mmにも達する大雨が降りました。

一週間以上降り続いたそうです。

この雨で黒部川は増水し、出し平ダムの仮排水トンネルの容量を超えてしまったのか
ダム地点の上流に設けられていた締切堤を越流しました。

雨の後、現場ではコンクリート打ち込みを再開するために
岩盤を清掃する作業を実施していた作業員の方が
左岸側の岩盤から湧き出てくる湧水が濁っている事に気付きました。

急いで左岸上部に上って見ると
岩盤の割れ目が開きつつあったため、全員退避の号令がかけられました。

この場所で作業に従事していた方が全員退避したのち
左岸の法面がごっそりと滑り落ちたそうです。

その土砂の量はおおよそ13000m3にも達したとのこと。

もし判断が遅れていたら
どれだけの人的被害が出ただろうかと
アバットメントを見て背筋が寒くなります。

この崩落により工期は大きな影響を受けました。

当初、堤体全体をブロック工法で造る予定を変更して
左岸を上部から掘削し直すと同時に
右岸をブロック工法で堤体を立ち上げ
左岸はレヤ工法で遅れを取り戻すという手法で工事を進められたそうです。

仙人谷が
小屋平が
黒部が

この場所にダムとして立つ事がどれだけ困難なことか
その身を削られ
押し寄せる水と戦い、制御することがどれだけ過酷なことか

それを知っていて
それでもここに立つことを定められた堤体

砂と戦う
激流と戦う
そのために備えられた装備

その身についた数々の傷は戦い続ける仕事の誇り傷

黒部川に挑む為に必要な強さ

それはダムを形作るコンクリートや鋼鉄の強度だけではありません

必要なのは志の強さ
建設と管理に関わる方の気持ち
ここで仕事をするダムを造るために
心が強くなければくじけてしまいそうな
強大な自然の力と戦う気持ち

そして膨大な調査と観測データ
先人の残した言葉と教えが志を持った人を支えてくれます。

その気持ちが宿った出し平ダム

ここにもありました
くろよんスピリット

ずっと会いたかった出し平ダムは
予想をはるかに上回る
強い 強い ダムでした。

今回、素人のダム愛好家の見学のために
お忙しい中、お時間を作って頂いた関西電力の皆様
本当にありがとうございました。

出し平ダムの活躍をこれからも応援していきます。