120歳の布引五本松ダム その1

2020/6/26 更新


2020年3月、日本初の重力式コンクリートダムである
神戸市水道局の布引五本松ダムが120歳になりました♪

以前作成した資料とかいろいろ使って「120歳おめでとうレポート」を
書きたいな〜と思っている時に、突然、渋谷から降ってきたお話
東京カルチャーカルチャー「ダムナイト・リモート」。

折角、リモートなんだからという事で
普段、帝都になかなか行けない各地の愛好家に出演をという事で
鹿の国の私にもお声掛けがありました。
隙間要員なら任せてください。

そしてお題は自分の地域のダムでというお話でしたが
ここで「アーチダム保有数が道府県で最多の奈良県」というネタを出すよりは
持ち時間15分くらいという事でたくさんの紹介は厳しいということであれば
“布引五本松ダム120歳おめでとう”が一番いいよねっ♪
ということでスライド作りに入りました。


布引五本松ダムは国指定の重要文化財です。
指定に合わせてまとめられたのがこの素晴らしい資料。


2006年に神戸市様が作成された『布引水源地水道施設記録誌』です。

なんと!!
ふとっぱらの神戸市水道局様のご厚意でwebでも見られるんです。
『布引水源地水道施設記録誌』 図面付きです♪


布引五本松ダム周辺の文化財について
神戸市水道局様のこちらのページで地図が公開されています。


「重要文化財指定を受けた布引水源地水道施設」のページでは
文化財指定を受けた施設一つずつについての解説と図面も公開されています。

◆ ◆


布引五本松ダムへの一番楽チンなアクセス方法は
JR新幹線新神戸駅、神戸市地下鉄新神戸駅に隣接する
神戸布引ロープウェイを使っていく方法。


まずロープウェイ駅で片道・中間駅までのチケットを購入。
足に自信がないという方は往復でもいいかと思いますが
絶対お勧めは片道。
帰りは新神戸駅までハイキングコースを下ることで
いろんなものが見られるので楽しいのです。
折角だからハーブ園にも入りたいという方は+150円です。


ロープウェイには山麓駅、中間駅、布引ハーブ園駅と三つの駅があります。
山麓駅から中間駅までは約3分。
乗り込んだらまずカメラ準備です。


ロープウェイに乗ったらこんな風に布引五本松ダムの俯瞰写真が撮れるので
絶対お勧めなのです。


中間駅で降りたらハーブ園の敷地から出ます。
この門扉の外に出るのです。
猪侵入防止にご協力ください。


門を出てすぐ目の前にこの案内看板があります。


この案内看板に布引水源地から新神戸駅まで帰るのに通るハイキングルートが
きっちり描かれていますので方向音痴で不安という方は
とりあえずスマホのカメラででもこれは撮っておくとよいかと思います。


急勾配ですが堤体にショートカットで辿り着ける道が整備されています。
上流の分水堰堤などを見ないで堤体に早く辿り着きたい時はこれが一番早いルート。


ハーブ園の門を出て約100m。
ガードレールの切れ目に案内標識があるので見落とさないと思います。


このくらいの勾配ですので不安な方は貯水池上流方向に進んでから
散策路で堤体の方に戻ってこられてもよいかと思います。
歩く距離は長くなりますが勾配はフラットに近くなりますので。

ショートカットを通らずに貯水池上流端まで足を進めると
国内二例目の排砂バイパストンネル施設をフェンス越しに見ることができます。


貯水池周辺拡大。

「6)放水路(隧道部)」と示されているところに注目してください。
これが布引五本松ダムの排砂バイパストンネルです。

1900年前に造られたダムに1908年に増設されました。

佐野藤次郎技師がインド視察で見聞してきた
このダムの長寿命化に欠かせないシステムは
まず布引五本松ダムの弟分の烏原立ヶ畑ダムで採用されました。

烏原立ヶ畑ダムは1905年竣功。
なので布引五本松ダムの排砂バイパストンネルは国内2例目になります。


これが国内初事例の排砂バイパストンネル、締切堰堤と放水隧道です。
烏原貯水池・立ヶ畑ダム上流締切堰堤右岸から放水隧道を見たところ。
※通常立入禁止区画 特別見学会での撮影写真です。
※昭和になって改修工事が入っていますので竣功当時そのままではありません。

3例目は大分県別府市水道局 乙原ダムです。
1917年3月竣功です。
ちなみに乙原ダムの場合はトンネルではなくて貯水池の横に開渠なので
排砂バイパスチャンネル。

4例目は武庫離宮 天皇の池。
乙原ダムと同じ年ですがこちらは1917年10月竣功。

しかしこの武庫離宮・天皇の池のトンネルはホントに馬車が通れるくらい
立派ですごいです。

個人的に思い入れのある関西電力 尾曾谷ダム(1918年)は
残念ながら排砂バイパストンネル&チャンネルではなくて流筏路なので除外。
◆ ◆ ◆


貯水池上流端に向かって進んでいきます。


折り返す道に惑わされず上流に進んでいくと未舗装路になります。


フェンスの向こうに見えてきたのが
ブラタモリでタモリさんが神戸ウォーターでダージリンを飲んだ場所。
締切堰堤です。
これは大雨の翌日に行ったのでお水が薄濁りの残念写真。


晩秋から冬は木々の葉っぱも落ちて水面が撮りやすいし
水も澄んで美しいです。


締切堰堤を過ぎて少し行くと道が大きく折れ曲がっています。
曲がった一番奥の部分は放水路隧道のポータルの上にあたります。
これはそのポータルを道から覗き込んだところです。
転落注意。


分水堰堤をここから撮ることができますが
やはり木々の葉が落ちている時がいいと思います。


道を進んで一番奥に分水堰堤があります。


分水堰堤はフェンス越しに見ることはできますが
締切堰堤と同じく立入禁止になっています。


これはwDN-Kobeの特別見学会で見せてもらった時の写真。
この時の様子はwith Dam☆Night in Kobeレポートの方で
見ていただけたらとおもいます。


とても嬉しいことに、道中、大変大変詳しい説明板がありますので
予習なしで現地入りしても排砂バイパストンネルのシステムを
理解できるのです。
なんて素晴らしい知識のおもてなしっ♪