日本ダムアワード2025 その 1

2026/1/1 更新


年の瀬の仕事納めの世の中、ドタバタ忙しいころにまたまた帝都にやってきました。
ダムアワード2025に出演のためです。


まず訪れたのはランチで錦糸町。
美味しいおうどん。
お汁も全部いただきます関西人。

令和7年はとにかく全国的な渇水が連日、ニュースで流れていて
洪水調節を頑張ったダムはいくつもありましたがそれを上回る渇水対応。

なので、今年は低水管理が一番の注目だねと個人的に思いながら
担当するのは洪水調節賞。

ダムアワードは常連さんだけでなく、新規のお客さんも増えてきているという事で
ます渕ダムでダムと堤防と河道整備という基本
森吉山ダムでダムの本則操作とゲートレスダムのすばらしさを説明しようと思いました。


ノミネートしたます渕ダムは
3月に現地に行っています。


ます渕ダムのある紫川は全流域が北九市内に収まっています。
まさに北九州市のためのダム。

ダムのある紫川の整備とダムが協力して
小倉のために素敵な川になるんだというメッセージを強く感じたので
洪水対策は下流から進めるのが基本というのは難しくても
両方進めないと本当の意味での整備にはならないんだという事を
基本に立ち返って説明するのにぴったりと思ったのでノミネートしました。


今回の出水のハイエトグラフとハイドログラフです。


紫川をPRするのに良いキャラを探しまして
小倉市内の銀河鉄道999のキャラの像とか
官営八幡製鐵所の高炉とか
何がいいかと考えた末、辿り着いたのがこのペンネの妖精像。
紫川の上でちょっとアイドルっぽかったから。


森吉山ダムは常用洪水吐も非常用洪水吐もゲートレスのダムで
洪水時は全てダムにお任せです。
人が操作する必要はありません。

なので、洪水調節賞でダムの活躍を紹介するにも
どうしても淡々としたトーンになりがちなので
ゲートレスダムで既往最大級の降雨が予測された時に
どれだけ管理所の方が怖い思いをしているかを
伝えるためにいろいろな情報を先に知ってもらうことが必要と考えました。


この三点をまず説明してから今回の防災操作を説明することにしました。


京都大学の角教授にお願いしておかりしてきたこのスライド。
内閣府の戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)第2期
国家レジリエンス(防災・減災)の強化
ダム統合防災支援システムの開発(2018-2022)
について。

令和元年の台風禍の後に、ダムの事前放流が減災に効果的と大々的に報道されたことにより
事前放流が当たり前に行われるべきという認識が世に出回りました。

実際にダム管理所にかかってくる電話の中には
災害対応中に川の水位が高すぎるから放流するなという文句が減って
出水の前に事前放流やってくれ、やってるんだろうな?というものが増えてきているという。
凄い話だなと思います。


しかし
そもそも
治水を役割に持っているダムは台風が良くやってくる洪水期は
貯水容量を下げています。
そして予測が1日~3日前に台風が来そうだという事が分かったとして
事前放流を始めても、空けられる容量はあまり増やせないのです。

というのは、ダム下流に急激な水位上昇を起こすような放流は
事前放流であろうとできません。

そして堤体の中・低位標高に取水口が無いとできないという
当然といえば当然の話。


降雨予測が3日よりもっと早い段階、5日以上前で確度が上がれば
洪水期の貯水位を高めにしておいても安全に放流して
治水容量を多く確保できます。

降雨予測技術が上がってきたからできる対応なのです。
気象衛星ひまわりありがとう。


そして、降雨予測の精度が上がっても被害が少なくなるとは限りません。
避難判断が早くなり、人の被害を減らすことには絶対に繋がりますが
実際にやってくる台風がとんでもなく凶悪であれば
人の暮らし、町が破壊されるほどの災害となります。

紹介したのは総雨量1700mm
川の水位が20m近く上昇し
流域に大被害をもたらした大型台風襲来時に
実際にダム操作に当たっていた方からお聞きしたエピソードでした。

ダム下流でご自身の実家が浸水し始めた際にも
躊躇することなくゲートを開け続けたのです。
それがダム放流操作の大原則だからでした。


ゲートを持つダムは必ず、操作規則の通りにゲートを操作しなくてはならないのです。

本則操作を外れると雨が降り続いた時にリカバリーが困難になります。
ダムからの越流に至ることさえ考えられます。
そうなるとコンクリート部はともかく、ゲートなどの機械設備が被害を受け
ダムの破損、それ以降のゲート操作に甚大な影響が出ることになります。

1分の躊躇、判断遅れがゲート操作において致命的なダメージに繋がります。

そのため、「操作時に迷いが出ないように本則操作を実行することは絶対」とされているのです。
ゲートを持つダムの宿命です。


ゲートレスダムは文字通り、ゲートを持たないダムです。

ダムには常用洪水吐、非常用洪水吐両方にゲートを持たないものもあれば
常用洪水吐だけにゲートをつける場合もあります。

ゲートレスダムは小流域のダムで非常に有用です。
操作遅れが発生しないからです。

流域が小さい貯水池に大量の降雨があると、貯水位はあっというまに上昇して
ゲート操作が追いつかなくなる事が多いのですが
常用洪水吐をゲートレスにしている場合
貯水位が上がっても開けられている孔から水が自然に流れだし
貯水位の上昇によって放流量も増えていく構造になっているのでダムにお任せできます。

利水専用や利水容量が大きいダムではゲートレスは管理するうえで非常に有用であることから近年
ゲートレス化される動きがあり、ゲートが撤去された利水ダムも増えています。


しかし、治水を目的とするダムの場合、常用、非常用のいずれをもゲートレス化することは
安全、安心である事は間違いないのですが、ゲートレスである事ゆえのジレンマも発生します。


治水目的で常用洪水吐をゲートレスとすると、その越流高が平常時満水位(N.W.L.)となります。

N.W.L.より下は全て利水容量ですから
貯水位が低い場合、雨が降ると貯留が始まり
ここを超えると、洪水調節・防災操作が自動的に開始となります。


森吉山ダムは昭和47年7月にで発生した前線性降雨で
米代川の破堤と大洪水をきっかけに計画されたダムです。

昭和47年7月豪雨をきっかけに計画されたダムは数多くあります。
それまでに竣工していたダムでも鹿児島県の鶴田ダムのように
当時の治水容量を使い切り、但し書き操作に移行したダムもあったのです。


森吉山ダムは平成24年竣工の新しいダムです。
既往最大の出水は平成29年7月22~23日の前線性降雨でした。
なんと三山洪水だったのですが、見事にこれを抑え込みました。

昭和47年7月水害と同じ規模の雨が来ても大丈夫なように計画されたダムとして
面目躍如の大活躍です。