日本ダムアワード2014 その6

天端レベル右岸広場に戻ってきました。
藤棚の横の展望スペースに上っている時に
管理所の方に当直の守衛の方と思しき人影を見つけまして
「管理所前まで入れてくださーい」
「そこから写真撮りたいでーす」
と叫んだ所、ゲートを開けて入れて頂く事が出来て大喜び。
とりあえず本日のイベント関係者ですとだけご挨拶して
いつものポイントに走ります。

5号ゲートが半分くらい降りてきました。
6号ゲートは全開です。
ここから今日駆けつけてくれるダム仲間に
急げ急げ今来たらゲート全開見られるぞ〜
とメールしまくる。

当日のダム湖貯水位はEL317.0mくらいでした。
年末には100%という事だったのに。
冬場は補給でどんどん下がってしまいますね。
そうこうしているうちに
関係者の方がどんどん到着。
御挨拶して本日の会場のふれあいホールにまずはトロフィーを運び込みです。

梱包解いて無傷なのを確認して
使命を果たしたことにほっとする。
はい。
このトロフィーと記念表彰盾を届けるのが私の使命でした。
みっしょんこんぷりーと。
そしてほっとして参加者のダム仲間が到着するのを待つ。
ずっと待つ。
しかし30分前になってやっと二人。
皆何やっているんだろうとはらはらしていたら
なんのこっちゃない
みんな吉田橋からゲート全開している写真を撮るのに夢中になっていたらしい…。
ゲート全開って罪だわー。

ということで定刻になり
ダムアワード2014 ダム大賞 洪水調節賞の授賞式が始まりました。
まずは主催者の萩原様から御挨拶を頂きます。
そしてダム大賞のトロフィーと
洪水調節賞の記念表彰盾をお渡ししたのですが
洪水調節賞の盾を持っていた私はこのシーンの写真が手元に一枚もない…。
しくしく。
授賞式の後は「早明浦ダムを讃える会Part.2」です。
早明浦ダムがどれだけ凄いダムなのかを思いっきりPRしてくださいとリクエストしていたのです。

現所長様からは早明浦ダムの役割とダムの概要の説明を頂きました。
当日もゲートが開いてわーわーきゃーきゃーでしたがスライドには
洪水時以外の全門全開の写真とか出てきて生で見たいという声多数。
昨年の「早明浦ダムを讃える会」でも参加者の方が驚かれていましたが
早明浦ダムのダム湖にたまった水は池田ダムを経由して香川県と徳島県で使われます。
富郷・柳瀬・新宮の銅山川3ダムの水は愛媛県に送られます。
銅山川のダムがなければ本来その分の水は吉野川に流れる物なので
愛媛県は早明浦ダム建設にお金を出して
早明浦ダムは銅山川の分も下流に補給するという仕事を持っています。
そして高知県は早明浦ダムのダム湖に入る前に地蔵寺川取水堰堤と瀬戸川取水堰で水を取り
高知県の鏡ダムに送っています。
なので早明浦ダムは四国のいのちで利水の要なのはまぎれもない事実ですが
“早明浦ダムのダム湖に溜めた水を四国4県に送水しているわけではない”
というのが利水の流れを理解するポイント。
そして洪水調節は昨年のT1419で102回になりました。
回数で日本一なんじゃないかと思うんですがどこにも統計データがないのが悔しい。

続いての講演は早明浦ダムが経験した最大の災害、T7505とT7617についてです。
早明浦ダム建設時からお勤めで早明浦の事なら何でもご存じという
水資源機構でNo.1の早明浦マスターの方にお話を頂きました。
竣工した翌年に高知県にあまりにもすさまじい被害を出したT7505
そしてその次の年にやってきたT7617
これは自分なりにT7505とT7617の特徴をまとめようと造っていたスライドの一枚です。
最大流入量がとんでもなく大きいT7505
そして延々と何日も大量の降雨をもたらした総ボリュームが桁外れのT7617
グラフの目盛りは同じにしてボリュームと時系列を見やすくしたつもり…です。
この二つの台風で流域には大変な被害が出ました。
ダムができていたのに洪水が来た
ダムは役に立たなかった
そういう声にさらされたことでしょう。
しかしそれは違います。
これだけの台風が来た時に
もしダムがなかったら
早明浦ダムが竣工していなかったら
洪水調節を行っていなかったら
この雨はカットされることなく流域に押し寄せたのです
T7505で最大流入量は7240m3/s 既往最大です
T7617での流域平均降雨量は1730mm こちらも既往最大です
これだけの雨が流域を襲う前に
わずか一年前に
早明浦ダムが竣工していたから
救われた命も守られたものもあったはずなのです。
早明浦ダムの洪水との闘いはこのT7505から始まったのです。
そして早明浦ダムはこの二つの台風を経験したことで
副ダムの増設と副ダム下流の岩盤掘削
減勢工の嵩上げ等のスペック増強を図りました。

続いての講演は
ダム愛好家の中でも語り継がれている
早明浦の奇跡 伝説の0-100 と呼ばれるlegend of SAMEURA
T0514襲来時に早明浦ダムで所長様をしておられたレジェンド早明浦と呼ばれる方からのお話です。
平成16年は上陸台風が20個を超える大変な年でした。
近畿地方でも北近畿大水害をはじめ沢山の被害が出ました。
平成16年台風15号(T0415)は特殊な雨の降り方をした台風で
早明浦ダムの下流ではなく上流に大きな被害が出た台風です。
帯状雨域が早明浦ダムの上流に停滞し100mm/h超級の雨が2時間も降り続き
大変な土砂災害が発生しました。
平成16年台風23号(T0423)は吉野川流域で戦後最大の河川流量をもたらしたという
とんでもない雨台風でした。
川は違いますが高知県の鏡ダムにおいて既往最大流入はやはりT0423だそうです。
この時、早明浦ダムは1700m3/sまで放流量を増やしていきました。
ただし書き操作への移行を考慮してのゲート操作でしたが
驚くのはこの後
降雨が治まって来たと見るや放流量を1700m3/sから1000m3/sに絞って
下流の浸水被害の軽減を図ったのです。
こんなカッコいいハイドロ
めったに見られないという物凄いハイドロ
Qin=Qoutを覚悟していたのに降雨を読み切って
一気にオーバーカットに切り替えたという
信じられない技なのです。
スライド見てて鳥肌が立ちました。
これはまた別の時にきっちりまとめなくてはならぬと心に決めた。
心に決めた〜♪
そして平成17年の台風14号。
耳川水系に凄まじい被害を引き起こした台風ですが
この雨は貯水率0%になっていた早明浦ダムを一晩で100%にしました。
一晩で58.0mもの水位上昇
最大流入量はT7505に次ぐ歴代2位の5639m3/s !!
もし渇水で貯水池が空になっていなかったら
問答無用でただし書き操作に移行していてもおかしくない雨量だったのです。
ああカッコいい
早明浦カッコよすぎるよぅぅぅ♪

そして昨年の100回目と101回目の連続洪水調節について
その時に操作に当たられた所長様からの講演です。
台風進路と降雨予測
どこでどう降るか
どれだけの水が来るか
下流の状況はどうか
どれだけなら安全に流せるか
繰り返されるトライアル
ハイエトグラフとハイドログラフを経時で見ていくと
恐ろしい緊張感が伝わってきます。
何度も繰り返された降雨ピーク
降るのか
止むのか
そして下流の状況を見て1600m3/sでの華麗なピークカットに。
T1412は総ボリュームでT0514をも上回る歴代4位の2億4399万m3という
物凄い量の雨を受け止めたのです。
しかしT1412の降雨が治まるか治まらないかという時に
すでに次のT1411への備えが検討され始めます。
当初、T1412はここまでの降雨をもたらすという予測はなく
むしろT1411が脅威であったとの事でした。
降り続く雨の中
下流を見ながら安全に洪水貯留準備水位まで水位低下を実施。
T1411が高知県直撃コースで進んでくる中、洪水貯留準備水位まで
下げ切った18時間後再び洪水調節に入ります。
101回目の洪水調節です。
しかしT1411は進路を東に変えていき、徳島県、三重県に
大きな被害が出ました。
中々降雨予測が当たらない中、早明浦はT1411で1200m3/sのピークカットを実施し
安全な量の水を流すことで流域の被害を食い止めました。
ぱちぱちぱちぱち!!
そして102回目の洪水調節はT1419。
川の防災情報や池田総合管理所のデータを追いかけていて
何が起きたーっ
と吃驚したこのピーク直後の絞り込み。
数字はともかくグラフの形だけを見れば
1700m3/sを1000m3/sにカットしたT0423の『流入ピーク後カット』とそっくり。
凄い操作です。
このT1419のハイドログラフを初めて見た時に
最近は本当に全貯水容量を使って台風と戦っているから
こういう操作はありになったんだなー
でも怖いなー
と思っていたのですが
以前にもやって経験していたから迷いなく操作されたのかなと。
ダム操作は実洪水時に迷いが出ないよう本則操作で挑まなくてはならない
実洪水時に最適操作を追及してはならない
それらを検討するのは平時であらねばならない
まさに100回以上の事例を検討していたからこそ
降雨予測を読み切ったからこそ
大丈夫だと確信してこのカットに挑んでいるのです。
ああカッコいい
カッコよすぎて泣きそうだ

最後に早明浦ダムの現職員の方から
過去の102回の洪水調節についての分析と統計、解析を教えてもらいました。
台風のコースによる降雨量の特徴
台風の位置と最大流入量観測時間との関係
etc
流石102回もの洪水調節を経験している早明浦ダムです。
ティピカルなコースと雨量から特異例まで完璧に解析されていました。
淀川水系で竣工してから50回以上洪水調節をしている青蓮寺ダムが大技を決められる理由
それは早明浦と同じく数多くの出水を経験してきたからです。
ダムの力と
ダムにできる事を
すべて出し切ろうと
高度進化を続ける水資源機構のダムの洪水調節の真髄。
それをちらりと見せてもらったように思いました。