梵字川ダム 見学 その2


竣工は1933年の梵字川ダムです。
長年働いてきた貫禄がにじみ出ているのが素敵♪


近くに行けないかなーと右岸の管理用道路をとことこ進んでいきましたが・・


立入禁止です。
いや、これは当然なのですが
近づきすぎると堤体が見えないよくある落とし穴。


木々が茂っていて見えるところ少なし。


周辺をうろついて何とか堤体が見えるところを探しましたが無理でした。

月山ダムの工事誌を見る機会に恵まれましたので
堤体デザインの記述そっちのけで、減勢工についての記載を読みます。

減勢工の写真付き解説ページありました。

“減勢工コンクリートは大別して、もたれ擁壁、L型擁壁、エンドシルの3種類の構造物から成り・・”
えっ!
副ダムの文字がないっ!!
私が副ダムだと信じているものは何??
というか写真にもすでに副ダムっぽいもの写ってない
この放流ですでに水没している

平面図で用語が何を指すかの説明。

擁壁はそのまま擁壁です。

エンドシルというのは河床洗掘を防止するために設けられる物で
設置場所はそのダムや堰によって異なります。
かまぼこ状の長いコンクリートだったりブロック状だったり
副ダムの上だったり副ダムより下に設ける場合もあってケースバイケース。

で、私が疑問符満開のこの副ダムっぽいものは・・・
減勢池を形成するものであるのは間違いないと思うんですけどー。

というのはこの副ダムっぽいものは常時水没とはいえ
減勢池の底がEL160.0mに対してEL170.0m。
高さ10mあるんですが。

で、工事誌を読み進めていくと
減勢池形式として副ダムを有するタイプにしなかったと・・・
スキージャンプ形式にしたからと書いてあります。
スキージャンプにするという事は
放流>>空中に水を拡散>>減勢池(プール)に落して水勢を殺す
というやり方で減勢するのです。

減勢池があるならともかく無いなら副ダムを作らなくてはいけません。
国内で一番採用されている減勢形式は
副ダムを設けて堤体下流に水深を確保して
水平な水たたきの上に強制的に跳水を発生させる
「副ダムを有する跳水式減勢工」だそうです。

跳水というのは自分も字面から、ぴょ〜んと跳ねる水の事なのかと思っていたのですが
斜流(堤体の上を流れ落ちる非常に勢いのついた速い水流)が
常流(川の勾配とおなじ速度の落ちた水流)に急変する現象を指すのだとか。

流す量によっては副ダムを大きくしたり川底を深く掘って水深を稼いだり
水平水叩き部分を長ーく作ったりする必要が出てきます。


これは青蓮寺ダムの減勢工です。
副ダムは岩盤からは14.5mで水たたきの高さからは12.5m
エンドシルも水たたきからの高さで1.5mあります。


呑土ダムがわかりやすいかな。
長ーい水平水たたきの例。
この場所でそのような工事をすることになると
梵字川ダムの堆積土砂をとにかく掘りまくらなくてはなりません。
工事としては大変です。
なんで減勢池を形成する副ダムを造らなくてもよかったのか。
そこに大きくかかわっているのが梵字川ダムの存在でした。
梵字川ダムは竣工して80年近くになり
堆砂も進んでおり、高さは25.0mにも達しているのです。
この堆砂を掘削・浚渫して元の河床まで掘り下げるのは大変な工事になります。
でも逆にいえば無理に掘削・浚渫して副ダムを造らなくても
梵字川ダムのダム湖があるので減勢形式をスキージャンプにして
月山ダム直下の蛇行した川岸を護る工事を行えば良いことに♪
設備の保守点検や排砂、冬季抜水などで梵字川ダムのダム湖の水を空にしなくてはならない時
月山ダムとしては減勢池の水まで空っぽになったら駄目だから
普段は水没しているけど、そういう時だけプールになるように
小さな(でも10.0mあるんだが)副ダムっぽい物を設けてあるというのではないかと推測されます。


月山ダムの大先輩
そして発電のお仕事以外にも
月山ダムを助ける役目を持っている梵字川ダム。

おじいちゃんはね
孫の為ならまだまだ頑張るよ
かわいい孫のためだもの

と、梵字川ダムが思っているかはともかく
月山ダムを助けつつお仕事を頑張っています。

月山ダムの副ダムっぽい物の謎を解くために知らなくてはならなかったのは
素敵な梵字川ダムだったというレポートでした。