琵琶湖総合開発
昭和39年、宇治川に多目的ダム天ヶ瀬ダムが完成しました。
発電・利水・治水を担うダムです。
多目的では在りますが旧・建設省が造った直轄ダムです。
主目的は治水。
宇治川の治水なのです。
昭和36年には南郷洗堰が現在の瀬田川洗堰にその役割を譲る事になりました。
全閉に48時間、全開に24時間かかって人力で行われていた洗堰は
全閉に30分、全開に30分の電力遠隔操作の洗堰に変わりました。
そして天ヶ瀬ダムができた事で洗堰の運転操作は更に効果を出す事ができるようになったのです。
琵琶湖はあまりにも大きいので、水位がすぐに上がる事はありません。
最高位になるのは淀川本川の流量がピークをすぎて減少しはじめた後で約一日の時間差があります。
淀川には木津川、宇治川、桂川が流れ込んでいます。
木津川の上流では比奈知ダム、青蓮寺ダム、布目ダム、室生ダム、高山ダムが頑張ります。
桂川の上流では日吉ダムが頑張ります。
そして琵琶湖の直下、宇治川で天ヶ瀬ダムが頑張る事で
淀川の水位をコントロールするのです。
洗堰はこの約一日の時間差という特徴を利用して、琵琶湖と淀川の両方の洪水を調節するのです。
大量降雨で琵琶湖と瀬田川の水位上昇が予測される時
まず洗堰は全門閉鎖されます。そして天ヶ瀬ダムは放流を開始します。
この時、天ヶ瀬ダムは下流域に被害を出さない範囲で放流し
ダム湖に空き容量を確保するのです。そして天ヶ瀬ダムに充分な空き容量が確保されたら洗堰は速やかに放流を開始します。
天ヶ瀬ダムは放流量をコントロールしつつ琵琶湖からの水を受け止め
治水効果を発揮します。
現在の琵琶湖周辺と下流域の治水の為にこの連携は欠かせないものとなっています。
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そして琵琶湖でも特に浸水被害が著しい地区には護岸整備が成される事になりました。
水位上昇があっても破堤しない幅の広い強固な堤防。
遊水スペースを持つ護岸整備。
これにより浸水の被害は更に減少します。
琵琶湖の東南岸には吃驚するほど立派な道路が走っています。
これは堤防の上に作られた道路です。
赤い線で書かれているのが湖岸堤。
全部あわせると約50kmもあります。
とてもきれいな道路で飛ばす車も多いのです(ネズミ捕りも多いですが)
これは堤防の上に作られた道路なのです。
淀川のスーパー堤防と同じく幅を広く取り
破堤しないように水のある側には普段は公園、広場になっているけれども
洪水の時には遊水地と変わる人工前浜と呼ばれるスペースを持っています。
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しかし琵琶湖の水位は洗堰が全閉している間はどんどん上がっていく一方です。
ここで問題になるのが琵琶湖に注ぐ川の水位です。
琵琶湖の水位の方が高くなれば当然、川のほうに逆流が始まりますし
水門で締め切れば注ぎ込む川の水が溢れ出します。
その為に琵琶湖の周辺には排水機場と内水排除システム整備が行われる事になりました。
琵琶湖の水位が上がった時に河口付近では湖側からと川側からとの両方の水が押し寄せます。
こうなったらまず水門を閉めます。
そして川の水が琵琶湖に入るようにポンプを使って強制的に排水していくのです。
琵琶湖の水位が安全な高さになるまで水門は締め切られます。
内水排除という考え方は各地の河川でも重要です。
大河川に注ぐ支川でも同じ事が起きます。
しかし全ての河川に巨額の費用がかかる排水機場を設置する事は難しいのが現状です。
排水機場と湖岸堤の整備
瀬田川洗堰と天ヶ瀬ダムの連携操作
上流の被害と下流の被害を最小限にに食い止める
上流の水の運用と下流の水の運用に利害が生じないようにバランスをとる。
平成4年に瀬田川洗堰の利水機能を更に高めるバイパス水路が完成しました。
そして平成8年、琵琶湖総合開発事業は終了しました。