小渋ダム減勢工特別見学会 その1

2021/12/1 更新


令和3年10月、各地のダムファンがこの告知にざわつきました。

国土交通省 中部地方整備局 天竜川ダム統合管理事務所のtwitterで
小渋ダムの施設調査のために平時は常に水を貯めてある堤体直下の
減勢工の水を抜くので “普段は入れない水叩き部を開放します”
という特別見学会開催のお知らせでした。

洪水期終わって冬季といえばダムの保守点検シーズン。
しかし点検だけをするのでなく折角なので見学会にしてしまおうという
その発想が凄すぎる。

普通、めんどくさい仕事増えるだけだし
休日出勤になるし
COVID-19対策もしなくちゃいけない

職員の皆様にとってかなりの負担がかかるのに
こんなに大変なイベントの開催を決断してくださったことに
ダム仲間と一緒に大喜びでわくわくが止まらない♪

◆ ◆


そして4日間準備されている減勢工の見学会の2日目。
夜にはライトアップも準備されているという日の朝
朝日が昇る頃に木曽川の丸山ダムにいました。

というのは当日の長野県の天気が崩れて
もし降雪があった時に走行が危うくなるサマータイヤで行くのは
状況によっては多くの人の迷惑になってしまうと考え
行くのをあきらめかけた時に、ダムマイスター仲間の佳様が
スタッドレスタイヤ装備の愛車で積載してくださることになったのです。


ということで休日に、おうちを出たら、まず丸山ダムにいくのは
とても佳様にとっては理にかなっているというか
そうすべきであるという行動パターンなので
荷物の自分もおこぼれにあずかれたという。

しかし毎月の月刊丸山ダムで拝見して工事の進捗を知っているとはいえ
生で見ると、どんどん進んでいるなと肌で感じました。


小渋ダムのある天竜川の流域図です。
諏訪湖から始まる天竜川。
河口の遠州灘までの間にいくつものダムが建設されています。

本川には中部電力の南向堰堤、泰阜ダム、平岡ダム
電源開発の水窪ダム、佐久間ダム、秋葉ダム、船明ダム

支川には国土交通省の美和ダム、小渋ダム、新豊根ダム
長野県の横川ダム、箕輪ダム、高遠ダム、片桐ダム、松川ダム
中部電力の岩倉ダム
があります。


空気はきんきんに冷たいけれどお天気の良い小渋ダムに到着しました。


余裕の一番乗りで職員の方より早かった…。

道中、佳様と、駐車場がもう一杯だったらどうしよう?
臨時駐車場も開放されるのだろうか
と、パーキングを心配しながら到着したのですが
明らかに早過ぎたようです。

小渋ダム右岸にある学習センターこと小渋ダムの資料館で
展示を見ることにしました。
巡視の方がすでにロックを解除してくださっていたので
中に入ることができました。


窓には今回のイベントの告知チラシです。
本日は09:30-12:00、13:30-15:30、17:00-19:00と
3回、減勢工に入らせてもらえる上に、ライトアップも行われる事で
最も参加者が多くなるのではと予測されていた日です。


館内にある小渋ダムのパンフレットです。


表紙に使われている航空写真で細部を確認します。

2021年11月2日のダム工学会中部近畿ブロックのwith Dam★Night at Home+で
矢作ダムが国内初の放物線アーチダムであることを調べている時に
矢作より早く竣工した小渋ダムはドームアーチには見えないし
放物線アーチではないのかという疑問がわき、文献を調べました。

小渋ダムは三心円不等厚アーチダムです。
しかし、他の三心円不等厚アーチダムと設計思想がかなり異なるように感じます。
それは極端に堤体が薄い事です。

三心円不等厚アーチダムは堤敷を厚くしアーチ効果と堤体強度を
確保する思想らしいので薄くしてどうするんだという。


学習センター内の資料で建設当時の写真を見てみます。


……。
これは…。

ホントに薄いな。
めっちゃ薄いな。
この薄さでフラットアーチっぽいってどうなんだ。

堤体中央はほぼまっすぐに立ってるしこれは…。


とにかく小渋は変わったアーチダムで
国内に小渋ダムと同じ設計思想のアーチダムはないらしい
という事はお世話になっているダムマイスター(専門家)の
川崎秀明先生に教えて頂いているので見れば見るほど
謎が深まります。


別にエレベーターが外付けだからということで
変わっているといっているわけではないのですが
エレベーター外付けがインパクト特大なのは紛れもない事実。


「水がないです!!」
「み、水がないっす!!」
「ホントにないです」
「からっぽやん…」

佳様と一緒に覗きこんで吃驚。


すっからかんです。
とてもドライです。


とりあえず本日の見学会の準備もまだ出来ていない朝早くに
一番乗りをした佳様の写真撮影。


でもまだ時間があるので天端をうろうろ。
減勢工の中ほどにシルが一つあってその下流側に副ダム。
副ダムの向こうも水がないです。


ダム湖の水面は白濁りでした。
小渋ダムの上流にこの白濁りの原因になる土砂の供給があるために
降雨などの影響でこんなに白っぽくなってしまいます。

大井川の水が降雨の後には高確率でセメントミルク色なのと同じでしょう。


管理所から見やすい場所に水位標が並んでいます。


当日のダム湖貯水位はEL597.0mでした。