平成30年7月豪雨と日吉ダム その1

2018/7/21 更新

平成30年の梅雨入りの後、関東地方にあまり降雨はなく
西日本には割と雨もあったために
この雨域が関東の水がめに移動してくれたらいいのに…
と思う状況でした。

6月末からいきなり各地で豪雨災害が多発し始めます。

気象庁から発表された「災害をもたらした気象事例 平成30年7月豪雨」
で詳しいデータが見られます。
迅速な発表、本当にお疲れ様です。

◆ ◆

自分が記録していたのは
気象庁のHPの衛星画像、天気図、レーダー雨量
川の防災情報の各ダムと河川のデータ
TVはNHKです。

6月25日 03:00頃
 和歌山県すさみ町・古座川町・串本町付近で記録的短時間大雨情報
6月30日 05:30頃
 長崎県壱岐で24時間高水量が424.5mm 前線+熱帯低気圧
7月1日 03:00頃
 鹿児島県指宿付近で記録的短時間大雨情報


これは7月1日のNHKのニュース画面を撮影したものです。
梅雨前線と別に記録的短時間大雨情報が岐阜に出て
揖斐川と飛騨川が大変なことになった映像も流れました。

7月1日 05:30頃
 新潟県上越地方 糸魚川 吉川川 柿崎川の水位上昇で氾濫の恐れ 流域に避難指示
     06:00頃
 台風3号が先島諸島に 990hPa


7月3日 11:30過ぎ
 北海道旭川 石狩川で氾濫発生のニュースが流れてびっくりしました。
いきなり北海道で水害発生!!
石狩川が氾濫とはっ!!

そして数時間後、13:00
長崎県 台風7号暴風圏に 965hPa 九州を中心に非常に激しい雨
 熊本を中心に広い範囲に避難勧告が発表されます。


この時にじりじりやってきていたのがT1807(平成30年台風7号)。
前線が居座る西日本にこのコースで台風がやってくると
四国に凄い雨が来る事が多いので四国を心配していました。

そして何故その雨は渇水になりそうな関東にふらないのかと
ニュースを記録しながらしょぼんとなっていました。

この頃から西日本で同時多発的に豪雨災害が発生し始め
ニュースが途切れることなく報道されることになります。


7月4日21:00の天気図と衛星画像です。


7月5日朝のNHKニュース画像です。
累加雨量のヒストグラムで飛びぬけているのが高知県と徳島県。

72時間の累加雨量ですが
悲しくなるほど関東には雨が降っていません。
中部から九州にかけてどかっと降っているというのに。

7月3日〜5日の時点でこれだけ降っていました。
西日本の地面は水をたっぷり含んだスポンジ状態。

これ以上雨が降っても地面の保水力はもうありません。
降った雨は地表面を流れて川に行くしかない。

地下水も満々となっているわけで急傾斜地に関わらず
いつ崖崩れや土石流が発生してもおかしくない状態になっていたわけです。


7月5日09:00の天気図です。
長く伸びた前線が南下してきました。
南下するときに程よく雨を供給してくれたら良かったんですが
渇水気味の関東の水がめにはあまり降雨はなく
いきなり九州・四国で豪雨が始まります。


7月5日14:05のCバンドレーダー雨量です。
九州・四国・中国・近畿・北陸に雨域が居座って動きません。


7月5日15:00のニュースで桂川の水位上昇が報じられました。

桂川の豪雨時のニュース映像っていつも渡月橋で紹介されます。
観光地、人が押し寄せる場所という事で注意喚起なのか
渡月橋の橋脚で水位上昇をイメージしやすいからなのか。

豪雨時は嵐山も心配ですが亀岡の保津橋の方もかなり心配。
狭窄部の上流側ですから。
そして桂川で一番心配なのは久我橋地点です。
そっちも映像で流してほしいんですがなかなか映ることはないです。


7月5日 15:00
 各地に避難指示・勧告発表 神戸市では土砂崩れ発生の報
 桂川では一部の観測所で「避難判断水位」超過
  16:00
 桂川(京都市 亀岡市) 川上谷川(京丹後市) 多冶比川(広島 安芸高田)
  で「氾濫危険水位」超過

降り続く雨で水位上昇を心配していますが
T1318(平成25年台風18号)の時に比べて
渡月橋の橋桁から水面はまだまだ遠いです。

T1318ではピーク時に渡月橋のすぐ下流にある
天竜寺水位観測局舎も水没しています。


7月5日 20:30過ぎの川の防災情報・京都府の河川水位状況です。
桂川が赤く表示されています。


7月5日21:00の天気図と近畿地方のCバンドレーダー雨量です。
このまま、6日の明け方まで降雨が続きます。

7月6日 02:30頃
 岐阜県 長良川 川に隣接する温泉街で冠水発生


7月6日 5:30のNHKニュースで速報が入りました。
京都府から自衛隊に災害派遣要請。

しかし
氾濫が発生したというニュースはありませんでした。
これはT1318の時と同じ久我橋の防衛のために
またあの場所に土嚢を山のように築くために
お願いしたのだと思いました。


7月12日に発表された近畿地方整備局からの報告
「平成30年7月豪雨の概要(近畿管内)<第4報>」では
「久我橋下流において、桂川の水位が上昇し、
越水による堤防決壊に繋がるおそれがあるため、
水防事務組合、自衛隊、京都市消防局、維持業者により、
土のう積み(約100m)を実施。
(7月5日23:35〜6日1:00に1200個設置、6日4:40〜5:55に追加設置)」
という記載がありましたので
この速報は6時間くらい遅れてのお知らせであったようです。

多分あまりにも広域でいろんなところからニュースが入るので
他のニュースに負けて埋もれていたのかもしれません。


そしてこの頃、桂川の日吉ダムでは
洪水調節開始からずっと
150m3/sの放流という暫定の本則操作でずっと
頑張ってきたのですが
ダム湖の水位はもう限界近くまで上昇していました。

そのために、放流量を少しずつ増やし
ダムに入ってくる量と放流する量を同じにする(Qin=Qout)操作に入りました。
いわゆる但し書き操作、異常洪水時防災操作です。


7月6日09:00の天気図と衛星画像です。
ずっと雨が降り続いています。


7月6日正午前のNHKニュースです。
72時間雨量がヒストグラムで表示されていました。
高知県の魚梁瀬では72時間で1100mm超。
福岡県と岐阜県郡上市でもグラフが伸びています。


7月6日18:20のCハンドレーダーです。


7月6日 18:00のニュースで突然、渡月橋の映像をバックに
日吉ダムの情報が流れました。

近畿地方整備局からの発表でした。

しかし…ほぼ満杯って
いや、ほぼ満杯になったのは今じゃないはず…。
今朝の段階ですでにそうだったけど…。


08:00の段階でダム湖貯水位はもうここまで上昇していました。


暫定の本則操作で定められている150m3/sから
流入量に近づける操作で追いつき、そこからずっと
ダムとして溜められる水位の限界ぎりぎりで
ほぼQin=Qoutで絶対に流入量よりも放流量が増えないように
現在進行形で頑張っている時でした。

このグラフは7月6日の17:00、放流量が900m3/sに達した頃のものです。


川の防災情報でデータを追いかけていると
900m3/sで横引きにして4つ目のピークをカットしている時だったので
この後にもう一山来るのかとこの発表を見てぞっとしました。


ただ、なぜこのタイミングなんだろうという疑問は同時に頭に浮かんでいました。

150m3/sの暫定操作で容量を使いきり
本来の計画で流せる量の限界とされていた500m3/sに到達したのは
もっと早い時間、当日13:00過ぎだったからです。

実際に500m3/s流した実績はT1318でもあります。

そして今回はそれだけ放流していた時にも
渡月橋では水面から橋桁にはまだ余裕がありました。

しかしいきなり1000m3/s放流というテロップは見ている人が
イメージできないで驚いて混乱する数字であると思います。

異常洪水時防災操作をニュースで通知するときに
今回のNHKでも目立ったのが
そこに至るまで防災操作でダムから放流はずっと行われていたという事をすっとばして
いきなりこれだけの放流をしますという部分と
それによって水位が上昇しますという事だけを発表する手法だったことです。

これをもとに多くの人がダムが放流したから水位が上がったという
勘違いをしてしまうのではないかと思える表現でした。

水位が上がったのはダムが放流したからではなく
流域に大雨が降ったためです。


日吉ダムの状況を心配していましたが
この頃からNHKに登場するのは広島、岡山、やや遅れて愛媛の
災害発生現場の情報ばかりになりました。
各地で同時多発的に土砂災害と浸水被害、破堤等が発生し始めていたのです。

しかし桂川、淀川水系においては
氾濫発生の報も堤防溢水の報も流れませんでした。


7月6日21:00時点の天気図とCバンドレーダー雨量です。
まだ桂川流域には雨域がかかり続けています。

リアルタイム情報を追いかけていても
流入量も放流量はどんどん低下して放流量が1000m3/sに
達するような事態は結果的に起きなかったのです。


7月7日の09:00時点の天気図とCバンドレーダー雨量です。
しつこいっ!!
本当にいつまで居座るんだというしつこさの雨域。


7月7日05:00の日吉ダムのリアルタイム情報です。

近畿地方整備局から緊急の連絡はありましたが
無事にダム湖への流入は減少、それに伴って放流量も減少しています。

EL200.0mを超過したのが7月6日の04:00
EL200.0mを下回ったのが7月7日の14:00

22時間もの間、洪水時最高水位ギリギリで戦ったのです。