豊郷小学校 見学 その5

建築物の文化的価値についてを人に問えば
いろいろな意見が返ってきます。

「興味ないから..わからない」
「いっぱいあるんだったら一個くらい潰してもいいんじゃない?」
「貴重なものだから残すべきだ」

そして最近は必ずこの一言が付きます。

“保存するお金は誰が出すの?”

歴史が古いものだったら大事でそうでないものは大事ではない。
1937年に創立のこの豊郷小学校。築65年の建物。
当時は東洋一といわれた小学校だったのです。


小学校としてずっと使われていた為に文化財としてみると
傷も多く、補修の必要な場所もたくさんあります。
もっと大事に綺麗に使う事は出来たはずという辛口のコメントも
あります。でも小学生の学び舎ですからそこは仕方ないかなと
私は思ってしまいます。


階段のように全く手が入っていない場所も在りますが
そこは現役の建物。色々なものが後から取り付けられたり
様相が変わっている所は窓のアルミサッシだけではありません。


生徒数は少ないのでしょう。
全員の靴箱が上に荷物を入れたり上着を掛けたりできる
スペース付きの物でした。靴はスチールの四角い皿に入れて
保管するようにしてありました。

バブルの後、財布の紐が硬くなったのは世の中全てです。
そしてゆとりが無くなってしまう為に殊更お金を生み出さないものに
仕打ちは冷たくなっています。

ゆとりの無さ、それが心の荒びにならない為に美しいものを
人は求めるのではないのでしょうか。
どんどん壊されていく文化的価値のあるものを守る為にある
文化財登録制度。
この制度が機能しているだけの国力のある日本です。
戦争でその日の暖を取る為に文化財を破壊するような
情勢ではないし法律が麻痺しているも同然の無法地帯でもありません。

お金をそういう事に使うなという人たちが納得するかはわかりませんが
この小学校に関して言うなら文化財登録制度を活用して
なおかつ小学校として整備するのが最もお金の使われ方が
少なく有益と思います。


この小学校で兎と亀の階段以上に私が見たかったのが
図書室です。


図書室に繋がる廊下には滑り戸が左右にありました。
この廊下を通った時に地元の女性が取材に来ていた他の人に
一生懸命“ここは日本に現存する唯一のスペイン様式の廊下で..云々”
と説明されていました。

『さる有名な先生が仰るには..』

見学している方には頓珍漢な事を大声で自慢げに発する方も
大間違いを平気でお話になる方もいっぱい居てそれぞれが
色んな講釈を展開しています。

まじめに聞いていたら吹き出してしまいそうになりました。
うんちくより綺麗だから素敵だねって素直に言ってくれたらいいのに。

それとも綺麗とも素敵とも思わずに有名になったから来ただけですか?
ヴォーリズなんてどうでもいいけど有名で偉い人らしいからこの建物は
良いのだとそういう捕らえ方なんですか?

日が高くなって見学に訪れる人はどんどん増えます。
でもボランティアでお手伝いをと申し出る人は殆ど居ません。
皆カメラ片手に建物の中を歩くだけです。

ボランティア慣れしていないのかな...。
照れくさいのかな...。
少し哀しくなりながら、ほうき片手に私はそう思う事にしました。


お掃除が一段落してから図書室に向かいました。
図書室には何故か校舎からの廊下以外に外部に向けた
玄関と靴箱などが置いてあるスペースがありました。

この小学校を建てたときに作られた町の人への玄関だったのです。
図書室は学校のものであり、同時に地域の人の為の物でもあったのです。