全国小水力発電大会 in 京都 その2


企業展示の部屋に入ってすぐ、目の前にあったのがこちら
新日本コンサルタント様のブース。


モニターも気になりますが一番前に展示されているパネルに注目。

現在は無くなってしまいましたが近代建築愛好家には超有名な白雲楼ホテルが
営業中に自家発電用として設置した旧白雲楼河内発電所。
白雲楼ホテルは1932年創業で自家用発電所は1939年に運開し1988年まで
電気をつくり続けていたそうです。

設置されていたのは横軸フランシス水車とペルトン水車の2基だったそうです。
すごく不思議な感じ。
ふたつ合わせて133kW出せていたとか。

白雲楼ホテルが廃業し、近代建築ファンの保存を望む声はありましたが
大事なのは資金繰りなので、惜しむ声はあっても建物は撤去されました。
これは他の産業遺構でも同じです。

この旧白雲楼河内発電所を再生事業で復活させたのが
「金沢ゆわく小水力発電所」になります。

有効落差は77.7m
最大出力は160kWです。
大事な年間発電電力量はというと1402MWhなのでかなりの実力であるといえます。


こちらは砂防堰堤を利用した平沢川小水力発電所の工事記録動画です。


ばっちり水がたまっている不透過型砂防堰堤です。
石川県管理で昭和57年に建設された堰堤だそうですが
不透過型にしてはこんなに奇麗に水がたまっていて不思議な感じ。
福井県の岡本川砂防堰堤を思い出しました。


砂防堰堤のすぐ下流に発電所建屋。
貯水ダムと似たレイアウトです。


堰堤と発電所のイメージ図。
水車1台で最大出力198kW。

先ほどのパネルディスカッションで環境省の方が仰っていた砂防堰堤を利用しての小水力発電。
砂防堰堤は場所によっては満々と水が溜まって貯水ダムのように見えるほどの事例もあれば
これだけの巨石を止めてくださってありがとうございましたと頭を下げたくなるほど
崩壊地の下で頑張っている事例まで様々です。

事例によっては砂防堰堤でも流れ込み式のダム式が可能なところもあるかもですが
流れ込み式の水路式が多いのではと思いつつ、今まで見てきた砂防堰堤を思い出していました。
しかし、すさまじい事例の現場見学が多くていまいち想像のバリエーションに欠ける自分です。

いかんいかん。


こちらは株式会社スカイ電子様と合同会社クールアイランド様のブース。
展示されている可愛らしいちっちゃな水車はターゴ水車。
お名前はCstream-1というんだそうです。
高性能・超小型のターゴ水車と書いてあります。

確かこんなにちっちゃいのに発電できるの??というくらい可愛らしい。


事例紹介。

01は谷川で取水して使われなくなった簡易水道の導水管に接続して
ビニールハウスの扇風機やLED投光器等々で活用されている事例。

02は山間部で監視カメラや通信、照明用の電源として活用されている事例です。
落差も流量も少なく発電出力は小さいけれど安定して発電しているという事で
約30wを常時出しているみたいです。

03は谷川に堰を設けて最大使用水量2.5リットル/sで
落差が20mと大きいため、仕様最大の200wで運転できている事例です。

kWじゃなくてWなのでちっちゃいのに頑張っている感が増します。
一般電気製品を使用するときは蓄電池、AC/DCコンバータ経由で
交流100vに変換すれば大丈夫との事。

200wでどんな電気製品が使えるのかというのは
具体的にイメージがわきにくいのでその点についても説明がありました。
冷蔵庫やLED照明、テレビが30wくらい。
ノートPCは20wくらいで携帯電話充電は5台で5wくらいだとか。

山間部の小さな災害避難所で少人数で暖房や調理器具の類を使わないなら賄えそう。


人が多いのでゆっくり見られるブースが少ない中、
足を止めて見入ってしまったのがこちらのイー・セレクト様のブースの
螺旋水車模型。


真ん中の半円が並べられているようなものは何と魚道だそうです。
日本ではあまり見ない形。

螺旋水車はスクリュー形状の連続した羽根をもつ水車で
小落差・小水量で発電ができます。

水量が少ない農業用水路で使用できるのがメリットですが
単純な構造でメンテナンスが楽チンというのも売りなのだそうです。
確かに他の水車より流塵、ごみの掃除が楽チンっぽい。


どこで採用されている水車の模型なのかというと
ドイツのKUHN社が手がけたこの発電所の物の様子。

螺旋水車の実物を見たいなと思って帰宅してから調べたら
岩手県の一関市と富山県の南砺市にあるらしいことが判明しました。
また行きたい所が増えちゃった。


大好きな栗本鐡工所様のブース。
なんか可愛い物が展示されていました。


オリフィスバタフライバルブ♪
横の多孔可変オリフィス弁も可愛い。
キャビテーションを起こしにくい構造になっています。


広洋技研様のブースでは先ほど新日本コンサルタント様のブースでも見た
金沢ゆわく小水力発電所の詳しい説明がありました。


導水路延長は2780m

P=9.8(g)×Q×He×ht×hg

P(kw):発電出力
g(9.8m/s2):重力加速度
Q(m3/s):発電使用水量
He(m):有効落差=総落差−損失落差
ht:水車効率
hg:発電機効率

詳しい公式を初めて目にしました。
9.8とPQHしか知らなかったので。

ポンプ逆転水車というのも気になるポイント。
どんなものかイメージが全くできないのでまた勉強しよう。


こちらは自動除塵機の紹介。

今回、小水力を手掛けている色々な会社でメンテナンスについて
色々お話を聞きましたが、除塵機についてはしっかりお金をかけている
というところが多かったのが印象的でした。

水力発電も渓流取水では落ち葉などで容易に取水量が変化することもあるといいます。
小水力発電はそもそも使用水量が少ないのですから水量低下につながるものは
可能な限り排除したいのは当たり前のことです。

メンテナンスが容易で自動運転できる効率の良い除塵機は人気が出ると思います。


たくさんの資料と小水力発電についての冊子などを購入して
うきうき会場を後にしました。

ただ、結局、小水力発電はまだまだFIT頼みなんだなと
再確認するにいたったのは予想通りでしたが
それでも未来を見据えて小水力発電は絶対必要だよね!!と思いつつ
帰途についたのでした。