全国小水力発電大会 in 京都 その1
2023/2/11 更新
海外、国内の観光客が徐々に昔のように増えはじめた令和4年の11月に
京都にやってきました。
街路樹の銀杏の葉っぱが凄く美しい緑の縁取りだったので
喜んで写真に撮るなど。
本日の目的地は京都経済センターで開催される
全国小水力発電大会なので、ここから3kmくらい離れていますが
見に来てしまった夷川ダム。
隣に夷川発電所があります。
白川と琵琶湖疎水の水で発電。
常時出力280kW、最大出力300kW
発電形式は水路式
発電方式は流込み式
最大使用水量は13.91m3/s
有効落差は3.42m
関西電力の発電所で最も落差が小さい発電所になります。
木津川の相楽発電所は発電形式がダム式の発電所の中で最も落差が小さく4.84mです。
1914年に運転開始した歴史ある発電所です。
日本初の事業用発電を開始した蹴上発電所の1897年には及びませんが
とにかく古い、そして現役。これが大事です。
夷川ダムでダムを補充してからやってきました京都経済センター。
到着前にふらふらうろうろし過ぎで時間ぎりぎり。
いそげいそげ。
第2分科会の会場に入ったら決して遅刻したわけでもないのに
ほぼ満席で凄い人数で、空いている席をきょろきょろ探したら
前から二列目にひとつあったので大急ぎで確保。
「既存インフラを活用したエネルギーマネジメント」
うぉぉ。
タイトルだけでもうワクワクするぅぅ。
そして座長がお世話になっている角教授♪
パネリストにはお世話になっている水資源機構 関西・吉野川支社の染谷本部長♪
参加できて勉強できることに感謝。
まずオープニングで角教授のお話です。
スライドに登場しているのが天ヶ瀬ダムと高山ダムと姉川ダム。
背景の図は水源から河口までの区分でしょうか。
川の上流・水源地、山間地域、渓谷(ここら辺にダム)
そして扇状地に氾濫原にデルタ地帯
落差は大きいけれど水量が少ない所
落差はほとんどないけど水量が多い所
それぞれの場所にそれぞれに適した水力発電があります。
with Dam Night at Home+ 2022で揚水発電をテーマにした時にも
近年、利水ダムに治水協力をという流れで発電用ダムに治水協力をと
大事な水を溜める容量を洪水調節用に使ったりすることが目立ってきましたが
これからの電力事情を考えると、治水ダムも利水協力する時期に
来ているなと、事例を見れば見るほどその思いが強くなります。
米国では2030年までに水力発電を現在の2倍にする計画を立てているそうです。
発電に利用されていないダム(Non Powered Dam)を利用したり
今、水力発電所がない渓流や河川に新規発電所を建設したり
さらに欧州と同じムーブメントで揚水発電も強化するという計画のようです。
未発電ダムの発電化
まさに日本でいう治水ダムによる利水協力と同じです。
そのために必要なのは水を無駄にしないように
気象予報・降雨予測で利水効果と治水効果を最大に引き出すことです。
そしてダムの場合は大事に貯水池を使うために堆砂対策も絶対に必要です。
ダムが立つことができる選ばれた場所は本当に少ないので。
河川や渓谷、用水路といった、それぞれの場所に適した小水力発電を
どんどん広めていき、必要なら再開発をして大事な水を無駄なく使う仕組みを
全国的に整備していけたら本当に素敵♪
◆
環境省の方の発表では未利用水力エネルギー活用推進として
砂防堰堤などの既存インフラを活用した再生可能エネルギーポテンシャル向上
を掲げられていたので、あちこちで見てきた発電している砂防堰堤を思い出したりしていました。
◆
続いて水資源機構の染谷本部長の発表です。
水資源機構の管理しているダムは全国に31基ありますが
全部に水力発電所が併設されているわけでは無いとのこと。
水資源機構のダムで管理用発電所(電力事業者によるものは除いて)を
持っているのは17か所でダム式が12か所、水路式が5ヵ所なのだそうです。
多目的ダムはどういう管理・操作を行っているかという説明からのスタート。
たしかにこれ、必要でした。
ダムについてある程度、知識のある人の集まりではなく、参加者は
市町村関係者、水力発電の仕組を勉強中の人が占めていたようなので。
いつもお水が満々のダムでイメージされるととても困る。
容量配分から説明しなくてはならない。
そしてハイドログラフを説明しなくてはならないので大変です。
ダム操作の対応と放流通知のタイミングの説明のハイドログラフは
自分にとっては見慣れた模式図なのですが勉強したことない人には
これは難解だろうなと思いつつ、ノートとるのに必死。
防災操作をしながらも無駄なく水を使うために気象予報・予測を元に
事前放流や後期放流を活用する操作の例をハイドログラフで見せてもらうと
ほほー!!となりました。
さらに興味深かったのは電気事業者の発電所の効率的な運用という面では
できるだけ水位高めキープするより無効放流を減らす方が発電的には良いのだという
エピソードでした。
そうだったのか。
気象予測の役割がさらにさらに重要になってくるということですね。
◆
姉川ダム水力発電所設置運営事業を受注して
どんな苦労があったかをきわめて具体的に語ってくださった
いぶき水力発電会社様の発表はとても興味深い物でした。
事業に参入したくても水力発電の実績が必要だったので
地元で歴史あるダムと発電所運営を長く展開してきた
イビデンエンジニアリング様との共同出資で会社を立ち上げたこと。
工事中にはこんなに苦労するのかという土木工事の大変さ。
地元の橋が工事用建機の通行に耐えられないので
架設橋を設置しなくてはならない上に工事後は撤去しなくてはならない(!)
など、土木の業界で当たり前だけどという色々な縛りに振り回されて
工期は伸びるし工費が膨れあがって頭、痛い…とか。
運用開始してからは予想以上に水車室に流れ込んでくる木々の枝の類で
水車効率が低下して異物除去が年に数回も必要になるなど
えーーーっ!!となるエピソードが次々と。
これから小水力発電事業に参入しようとしている人には
ぜひ聞いておきたいエピソード集になっていたのが素晴らしかったです。
◆
長岡京市では市の水道施設を利用して水道管路の水を発電に利用している
取組みが発表されました。
上水道施設に発電機を設置したのはDK-Power様、ダイキン工業の関連会社です。
採算性が難しいとされる100kW以下で事業が成り立つか
という点が最初の懸念材料だったようです。
採用されたのは省スペースに対応可能な22kWクラスの発電機で
上水道のポンプ場、排水地への管路等に設置されたということで
これにより、2か所の発電で約60世帯分の電力がまかなわれたとの事です。
ちっちゃ…。
めっちゃ小さい…
全然儲けが上がっていないことがあまりも明白…
これ、工事費用、ペイするのにどれだけかかるの…
事業として成り立つのかという不安すら感じるマイクロ水力発電。
長岡京市の志は小水力発電の活用で「CO2排出量削減」です。
2050年にゼロカーボンシティ宣言を行っている長岡京市ですが
市側としては赤字が出ていないのはともかくここまでコンパクトだと
儲けが上がらないFIT頼みだと手を挙げる企業がそもそもいなくなるのでは…。
企業も志高く、手を上げてくださったのだと思いますが…。
志、大事なのだけれど…。
是非、頑張ってほしいです。
ダムの高度管理の大変さが伝わったかはわかりませんが
お気楽に手を出せるものじゃない厳しさとか
志が高くてもなかなか収益出せない厳しさとか
これから頑張ろうという人にとてもとても見になる貴重なお話を聞けたので
これは参加した甲斐があったとみなさん、思われたと思います。
そしてその皆様がどーっと流れ込んだのは企業展示ブースです。
自分も大急ぎで向かいます。