鍋立山トンネル その2


難航を極めた鍋立山トンネル中工区。
請け負っていたのは西松建様設でした。


難工事の概要を記した記事も展示されています。


“鍋立山トンネルの未完成部分645m”
“空前絶後の難工事”


“鍋立山周辺は地層が複雑で近傍の泥火山
(地下深くの粘土や泥がガスや地下水とともに噴出するもの)の
圧力が加わる膨張性地山でした”

“掘削中、30気圧に及ぶ強大な地圧は、鋼鉄製の支保工を飴のように曲げて引きちぎり”
“3500馬力のTBMを切羽から100mも押し戻し”

それでもここにトンネルを掘らなくてはいけない。

そのために
この場所に
日本のトンネル掘削技術のすべてが集結したのです。

“薬液を使って地山を硬化させる地盤注入工法などさまざまな工法を駆使”
“わずか645mを掘りぬくのに7年の歳月を要した”

工事は一度中断し4年後に再開されていますが
その経費は予定の10億円をはるかに超える145億円以上に及んだことも記されています。

この金額を見て、どういう印象を受けるかは人によって様々だと思います。
公共土木事業の金額というのは一般的な感覚からかけ離れて巨額なので
ピンとこないというのもあるでしょう。

ただ、土木においてその構造物が安全に長く役目を果たすために
この地震も火山も台風も毎年のようにやってくるこの日本の国土で
必要な強度が確保されること、品質こそが最も必要とされることです。

世界各地でコストカットか中抜きか知りませんが
設計も施工もいい加減なことをしているために
斜めになった高層ビルや突然落ちる橋、いきなり倒壊したビル
正しく作られなかったために決壊したダムなどを造っている某国の土木が
反面教師として不幸な事例を次々と出しています。

ここに在ることが定められた構造物に大して
その働きを全うするために必要な技術、工法、材料の予算を科学的根拠もなしに削ることは
すべてを不幸にします。


軟弱地盤を固めるためにセメントミルクを山に注入して固める工法が取られました。
これは何年ごろから行われ始めたのかは分かりませんが
すでに各地の柔らかい山のトンネルを掘る時に行われていた実績のある工法です。


“注入材は、セメント系のデンカES注入材を使用している。
GEL-TIME(注入材を混合してから固まるまでの時間)をおよそ1分としているため、
注入された薄い膜が固まり、その上に次々と注入材が固まりながら重なっている”


綺麗な薄い薄いしましまが確認できます。


ボール状になっているものもあります。


“本標本は、軟らかい泥岩の中に四方八方から注入材が圧入されて
固結した状況となっていることを示している”

“この状態は、注入が非常にうまくいっている例であり、この程度に注入されなければ
鍋立山トンネルは安全に掘削出来なかったであろう”


列車に乗って車窓を眺めてもトンネル断面の変化はなかなか見えないですが
鍋立山トンネルはトンネル断面が馬蹄形ではなく
難工事を極めた中央部付近で円形であったり楕円形になったりしています。

複雑を極めた山体の内部のその場所、その地点に最も適した断面に作り上げられました。


22年近い歳月をかけて完成した鍋立山トンネル工事。
全線開通したほくほく線のお祝い。


全部の駅名がプリントされたお湯のみ。
そこに描かれた特急はくたか♪


これ見ているだけで泣けてくる。
どれだけ嬉しかっただろうかと
地元の方も、命をかけてトンネル工事に携わられた方も
ホントにこの開通が嬉しかっただろうと
想像するだけで涙ぽろぽろ。


ほくほく線を140km/hで走り抜けていた特急はくたかの模型もありました。