柵原鉱山 初秋 3

今はもう動かない竪坑櫓
町を見下ろす山の上にそびえるそのシルエット

大正5年(1916)から平成3年(1991)まで
75年間頑張って来た鉱山でした。

総採掘量は2650万トンにも及び
世界有数の質と量を誇った柵原ブランド

地下1000mの深さ迄掘り進められた坑道には坑内休憩所や食堂もありました。

昭和30年代の高度経済成長期には3000人もの人が働いていた柵原鉱山

 

平成3年に稼動停止
静けさが訪れ

平成16年3月

その歴史をその姿で語っていた選鉱場が撤去されました。

 

 

 

 

 

あの大屋根はもう在りません
あの臭いももう薄れてしまっています

視界を覆っていたあの姿が無くなり
障害物のひとつも無く見渡せてしまう

哀しいほどあっけらかんと
秋の陽差しの下で乾いている人造石
 

 

この場所が記憶を有しているのなら
それは人の記憶のように移ろいやすいものではなく
在った事をただ記録するような
地に刻み付けられたものであって欲しいと思います。

人の思い出によらない過去の記録を多くの写真で鉱山資料館に残している柵原鉱山。
記憶の共有と伝達を可能にしてくれる写真の数々。

でも

この場所に

日本の高度経済成長を担った凄い鉱山があったと
ここに本当に多くの人が集っていたと
できることなら選鉱場自身に語り続けて欲しいと私は思っていました。

 

今その姿はあまりにも哀しいので
今この姿を見ただけではこの鉱山の栄光の歴史を知る事は難しいので
残された写真を見て思い起こして欲しい
秋の空の下、私は駅舎の跡で座り込んでただじっと、じっと

かつての大屋根を思い出して座っていました。

leave footprints on the sands of time.

to write in the dust, in or on sand, water, the wind, etc.