土肥鉱山・清越鉱山見学 その1

関西在住で関東にはあまり縁がありません。仕事で行く事はあっても
東京都内に行ってとんぼ返り程度です。関東にも行きたい寺社仏閣
がたくさんあるのに行けた事はほとんどありません。

唯一、根性で行ったのが北鎌倉です。東慶寺の「水月観音」をどうしても
見たくて予約していきました。厚木ICの構造と車両の凄まじさに負けじと
必死で鎌倉まで辿り着きました。二度と厚木ICでは降りたくないと思った
程でした。

しかしその疲れを払拭してくれるほどに「水月観音」は美しかったのです。
あれに匹敵する仏像は奈良市・秋篠寺の「技芸天」か滋賀県・高月町の
渡岸寺の「十一面観音」くらいかと思います。基準はセクシーさです。

今回行く事にした伊豆は、仏像では着目した事の無い所です。伊豆が
舞台の小説はいくつか読みましたがイメージは全然湧きません。
土肥鉱山は伊豆の金山として有名な場所だそうです。テーマパークが
良く宣伝されていました。この近くにはいくつか小さな鉱山が集まって
いるとも聞きましたので行ってみる事にしました。


伊豆の真中を走るスカイラインを下り、土肥鉱山の駐車場にはテーマ
パークが開く少し前に到着しました。観光客がいっぱいです。大型バスも
何台か来ています。

観光客に紛れてとことこ入っていきます。どこかで見たような風景です。
兵庫県の生野銀山のテーマパークとよく似ていました。中は一般的な
展示物でさほど興味をひきません。それどころか観光客が多いので
綺麗に整備されすぎてる印象ばかりが残りました。

展示物の鉱石のコーナーに来た時、明延の鉱石がいくつかありました。
生野銀山の鉱石もあります。これはもしかして...。
売店のおばさんの一人を捕まえました。
「こちらの金山の産業遺構を見たいので教えてもらえませんか」
「は?なんですって?」
「鉱山の施設です。選鉱場とか、沈殿濾過層とかです。」
「......。」

売店のおばさんの会議が始まりました。(全部聞こえてるって..)
「変わった事言ってる人が来てねぇ。鉱山見たいんだって。」
「どこから来た人??」
「関西だって言ってたわ。遠くから変な物見に来る人居るのねぇ」
「難しい事言ってる人が居るからみっちゃん呼んできて」
「みっちゃんは地元だから知ってるわねぇ」
どうやら『みっちゃん』という人が呼ばれることになったようです。

待つ事15分。現れたのは精悍な顔立ちの美青年でした。
こういう青年を『みっちゃん』って呼ぶか.....。
多分おばちゃん達にいつも、からかわれたりしている可哀想な境遇の
心優しい青年なんだろうなぁ。可愛い女の子を想像していた私は苦笑
しておりました。

短刀直入に聞きました。
「こちらの会社は三菱の系列ですか?」
「はい。独立していますが元親会社という事であればそうなります。」
「やっぱりそうでしたか。生野と明延の鉱石がたくさんあったから。」

青年に鉱山の施設を回ってみているのだと説明して遺構の所在を
聞きましたがこちらは殆ど残っていないといわれました。敷地内に
事務所とシックナー一基がかろうじてあるだけだということです。
「昔の写真でよければご覧になりますか。」
首が取れるくらい頷いて御好意に甘える事にしました。