峰之沢鉱山見学 その9


杉林の中には階段も石垣も、往時の気配を伝えるものはたくさんあります。


ただ、残っているのはコンクリートと鉄材ばかり。
他の施設は今回、縁が無かったようで見つけられませんでした。


下の道に戻って社宅アパートを見上げます。


山の中の鉱山町。
鉄筋コンクリートの社宅。
往時の活気はありません。
曇天の弱い光の中、音も無く、虫の住まいになっています。


人が住んでいた頃..。
ベランダに干されたお布団。
子供の遊ぶ声。陽の当たる斜面。
遺棄された社宅の高さをいつの間にか杉が追い越してしまいました。

でもこの社宅は取り崩されるその日まで、何十年もここに建ち続けます。
それがコンクリートの宿命であるかのようにずっずっとここに居ます。

建てられた事を忘れないでほしいというように
この土地に昔、鉱山があったことを教えるように

天竜川のせせらぎの音も届かない山の上でこの鉱山はひっそりと
少しずつ朽ち続けていました。