神子畑選鉱場 MIKOBATA ore dressing plants

兵庫県朝来郡朝来町 三菱マテリアル 明延鉱業 神子畑選鉱場


神子畑選鉱場は大正8年(1919年)に錫の機械選鉱場として完成しました。
昭和22年(1947年)に生野鉱山より明延鉱業所として独立。
明延鉱山の鉱石から銅と亜鉛と錫を選鉱するという役目を負っていました。

奥行き170m、幅110m、16のフロアを持つ階段式構造の建物です。
昭和62年(1987年)に操業停止しました。


@グランビー鉱車 受入鉱舎
Aハイドロコーンクラッシャー
Bレーキ分級機
Cロッドミル
Dボールミル
Eアジテアー型浮遊選鉱機
Fデンバー型浮遊選鉱機
Gウィルフレーテーブル比重選鉱機
Hジェームステーブル比重選鉱機
Iシックナー
Jドラッグベルト分級機
Kオリバーフィルター
Lインクライン

 


 


@グランビー鉱車 受入鉱舎
明延鉱山から運ばれてきた鉱石は明延鉱山にある粗砕場で既に15cmくらいのサイズになっています。
明延から神子畑をつなぐ明神鉄道では、鉱石運搬用のグランビー鉱車(5t積)30両編成が
1日に5〜6往復して鉱石を神子畑に送っていました。

(写真:朝来町史より)

受入鉱舎では鉱車が通過すると自動的に積載されていた鉱石が鉱舎に入るように工夫されていました。
鉱車の側面につけられたガイドがレールを登って自動的に鉱車が傾き、鉱石を空けられる仕組みです。


Aハイドロコーンクラッシャー
神子畑に送られた鉱石はまず最上部フロアにある鉱舎に貯められます。
その鉱石はハイドロコーンクラッシャーの行程で25mm以下まで砕かれます。
ここまでの破砕の行程が乾式破砕です。

(写真:朝来町史より)


Bレーキ分級機
砕かれた鉱石の大きさを分けて、大きい物は再破砕、
必要な大きさに砕かれた物は次の行程へ進みます。
この作業を分級といいます。各行程で分級は行われます。

レーキ分級機は『熊手』の名前のとおり、かき集めるように
ブロックが篩の上を動いて目的のサイズの鉱石をより分けます。

レーキ分級機の写真は無いので別のレベルで分級を行っていた サイクロン分級機の写真です。
サイクロン分級機は気体用と液体用があり遠心分離作用を利用しています。
この写真の機械はかなり細かくなったレベルで使用されていたもので液体サイクロンです
(写真:朝来町史より)


Cロッドミル
ここからは湿式破砕の行程になります。
この大きなドラムの中に鋼鉄の棒と鉱石と水が入れられます。
そしてドラムを回すと鉱石がすりつぶされて木っ端微塵になるという物です。
ロッドミルの行程で鉱石は1mm以下まで砕かれます。

(写真:朝来町史より)


Dボールミル
ロッドミルの次にボールミルがあります。
ボールミルは鋼鉄の棒ではなく鋼鉄の玉を使います。
ボールミルで鉱石は更に小さく0.15mmくらいに砕かれます。

(写真:朝来町史より)


Eアジテアー型浮遊選鉱機
浮遊選鉱の粗選の行程を請け負っていた機械です。
ミルで砕かれ水が加わって液状になった鉱石へ薬品を入れてかき混ぜます。
同時にエアレーションという空気を送り込む事を行います。
こうする事でたくさんの泡が発生します。
空気を入れると泡の表面に鉱物がくっつく特性を利用して選別する方法です。
泡にくっついた鉱物は泡と一緒に溢れ出して分離される仕組みです。

(写真:朝来町史より)


Fデンバー型浮遊選鉱機
浮遊選鉱の精選の行程を請け負っていた機械です。
空気を送り込むエアレーションを行わないで鉱物を取り出します。
アジテアー型浮遊選鉱で粗い鉱石を取り除いた後の液状になった鉱石を選別します。

(写真:朝来町史より)

全体の行程は、まず、銅を選び出す為に亜鉛を沈めておく 薬品を入れて
銅浮遊選鉱を行います。 次に銅を取り除いた物から亜鉛を浮遊選鉱で取り出します。
選鉱場内の多数の浮遊選鉱機は銅を取り出すものと亜鉛を取り出すものに
区分されていました。 硫化鉱物は主として浮遊選鉱で取り出します。


Gウィルフレーテーブル比重選鉱機
銅と亜鉛が取り除かれた尾鉱(必要な物が取り除かれて残ったもの)から錫を取り出します。
錫は液状になった鉱石をその重さで選別する比重選鉱を行います。
ウィルフレーテーブルは比重選鉱の中では粗選の行程を請け負っていた機械です。
不等辺台形で溝がたくさんついたテーブルに液状になった鉱石を流し入れて
細かく振動させるとテーブルの一端に重い錫が溜まって来る仕組みです。

(写真:朝来町史より)


Hジェームステーブル比重選鉱機
ジェームステーブルは比重選鉱の中では精選の行程を請け負っていた機械です。
より小さい錫の粒を取り出すために行われていました。
構造はウィルフレーテーブルと殆ど変わりません。

ウィルフレーテーブルとジェームステーブルの行程は連続して行われていたのではなく
それぞれのテーブルに適したサイズの鉱石を分級した後、直接それぞれが選鉱していました。
サイズに合わないものは又、ミルにかけて細かくしてそれぞれの行程に送られました。


Iシックナー
微粒子状態の鉱石は選鉱の過程で水を含み液状になっています。
そこから鉱物と水を分離する非濾過分離装置をシックナーといいます。
色々な形、大きさがあります。
薬剤(凝集剤)を使用して凝集沈降槽と凝集剤供給設備で構成されるシックナーが
神子畑選鉱場内には色々なレベルに大小あわせて合計20個あります。


これは屋外にある巨大シックナーです。


Jドラッグベルト分級機

比重選鉱が終わった後、脱水が行われます。
脱水では2種類の機械が関わっていました。
オリバーフィルターとドラッグベルト分級機です。

ドラッグベルト分級機は名前は分級ですが脱水行程で使われていました。
爪のついたベルトが液状の錫が満たされた容器(スピゴット)から
堆積している部分をすくい上げてきます。
運んでいる間に余分な水が落ちていく仕組みです。


Kオリバーフィルター
オリバーフィルターも銅、亜鉛などそれぞれの金属用に分けられていました。
大きな濾紙を張ったドラムの中を真空にして液状になった金属が
入ったスピゴットに一部を浸して回転させます。
ドラムが真空になっているために液状の金属は表面に張り付き
水分は濾紙の部分を通過してドラムの中に落ちます。
水と空気は別のラインでドラム外に出され表面には脱水された
金属が残るのでそれをへら状の板でかきとるわけです。

(写真:朝来町史より)


Lインクライン
傾斜地に作られていた選鉱場で各フロアの物と人の移動を担っていたのが
インクラインです。巻き上げ機で台をふたつ繋いでケーブルカーのように
斜面を往復していました。
線路の真中が複線になって対向出来るようになっています。

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