秩父鉱山転落記 その1

ここに辿り着く前日、私は足尾銅山の「銅親水公園」の
パーキングで車中泊の為、軍用ジャケットを着込んで
寝袋に入ってすやすやと寝入っていました。

巨大な砂防ダムから流れ落ちる渡良瀬川の水音
満天の星空とうっすらと夜の闇にも浮かび上がる
松木キャニオン

足尾銅山のエピソードを色々思い浮かべながら
寝入っていた私はふと人の声で目覚めました。

(こんな山奥に深夜ノーヘル相乗りで原付で徘徊し爆音を
立てるあの連中が登場かっ!?)

すっぽりと目深におろしていたフードを上げると
フロントガラスの向こうには赤色回転灯。
鼻面を付き合わせるようにパトカーが停められていて
前照灯で私が照らされていました。

(なんや...警察屋さんかぁ...)
(えらい厳重に逃走路遮断する車の付け方してるやんか..)

ノックされ、寝袋から抜け出した私がドアを開けると
優しそうな警察官のお二人が吃驚した顔で迎えてくれました。

「こんばんは」
「こんばんわです。すいません。寝ていて気が付きませんでした」
「あ、そうなんですか。いや、奈良ナンバーだしどうしたのかと思ってね」
「ここは夜間駐車禁止とかじゃないですよね?」

(絶対地元の人が通報したんやろな...)
(不審な車が古河鉱業の写真撮っていた所、目撃して
しかも何時まで経ってもその車が下りてこないとか..)

「すいませんが免許証を見せていただけますか?」
「あ、はーい。人相悪いですけどぉ」

(んー職質か。何を疑われてるんやろ..。アホのふりせんとあかんな..)

「今日はどこから来られたんですか?」
「茨城県の日立市から来ましたぁ」
「日立?全国をこうして回ってらっしゃるんですか?」
「いえ、夏休みなんです」
「え!遅い夏休みですねっ!」
「順番にしか休み取れない職場なので...」

「今晩はここでお休みになるんですか」
「危ないですか?ここだったら前に来た事あるし若い
やんちゃな輩も来ないと思ってたんですけど..」
「多分、ここには来ないと思います。それより動物に
気をつけたほうがいいですよ」

(やっぱりただの警邏で来た訳とちゃうかったんや...)
(関東はまだオウムの件で神経質やし..それもあるんかなぁ)

「明日はどちらに?」
「長野県から埼玉に入る予定です。夜中に起きてここ出ますぅ」

「そうですか。では気をつけていってくださいね」
「はぁい。お疲れ様でしたぁ」

というやり取りがあったのでした。


そして真夜中に目覚し時計で目を覚まし、高速で移動して辿り着いた
朝7時の三国峠です。オフローダーには全国的に有名な道です。


あたり一面ガスだらけ。


気温は9度。寒すぎます。ここから延々20kmフラットダートを下ります。


見通しの悪いガスを抜けてかなり下界に近づいてきました。


いきなり綺麗な道の駅なんか出来ていたりして驚きです。
トイレを借りて、地元観光情報の書かれた地図を拝見。

順調に目指す秩父鉱山に近づいています。
道路の付け替え工事が急ピッチで進む滝沢ダム(水資源開発公団)
の関係車両があちこちで見られました。

分岐をすぎてトンネル幾つも潜ってカーブを曲がると..。


いきなり鉱山登場です。すんなり辿り着けました。