明延東部鉱区の冬  その7


東側の窓に近づくと外に小さな屋根が見えました。
溶け出した雪が屋根の端からぽたぽた落ち始めています。


あらら...お手洗いでした。
こちらにドアはないので雪を掻き分けて
回っていかないと辿り着けません。


山側にズリに半ば覆われて崩れた階段らしき物があります。
鉄の手すりもあってこの斜面に在ったインクラインの
ワイヤーらしき物が雪の合間から見えました。
こちらからお手洗いには既に行けなくなっていました。


ガラスを失った扉を弄ぶ風もなく
ただ静かで冷たく湿った空気だけの巻き上げ機室です。


ゆっくり下山です。
圧縮空気の設備がある建物にも朝日が届き始めていました。


東部鉱区で一番大きなこの坑道のポータルの上には
綺麗にアクリルかガラスの板で守られた神棚がありました。

山で働く人が今日も無事に仕事を終えられますように。

良い鉱石が取れますように。

国内の非鉄金属鉱山の中でも最後まで頑張った明延鉱山。
この地に今も良質の錫の鉱石が眠っています。

昭和62年の3月。神子畑選鉱場の前で行われた閉山式。
降りしきる雪の中。

その映像を見て私は泣きました。

山から採掘の音が消えて16回目の冬。
人々が鉱山を思う気持ちはまだ絶えていません。

この大切にされた神棚はそれを知っているように思いました。