Cesium137 from lou-ran
空を覆う微粒子は黄砂
空の色を変えるこの微粒子は4000kmを飛んできた
黄土高原 タクラマカン砂漠 ゴビ砂漠
そこで巻き上げられた砂が大阪まで飛んできた
タクラマカン砂漠 タリム盆地
そこには楼蘭という都市があった
スウェン・ヘディンが見つけた隊商都市
幻の湖ロプノールの畔にあったという都市
シルクロードの要衝として繁栄した楼蘭
そこからの砂なら楼蘭を知っているのかもしれない
そこからの砂ならロプノールを知っているかもしれない
でも
タリム盆地でなにが行われていたか
CTBTが批准されるまでなにが行われていたか
この砂が運んでくるものは町や湖の記憶ではなく
放射能降下物質と大気汚染物質でしかない
セシウムの金属臭さを鼻腔に感じることはなくとも
この黄色く濁った風は確実に砂以外の何かを運んでくる
もしこの砂に記憶があるなら
今は仏塔しか残っていないという楼蘭の賑わいの記憶
琵琶湖の3倍もの広さを持っていたというロプノール湖の記憶
瑞々しい緑に覆われていた頃には湖畔に咲いていたかもしれないアーモンドの花の記憶
運んできてほしいのは記憶の方だ
4000km飛んできた先で
桜の花びらと一緒に土に落ちて
楼蘭に咲いていたアーモンドの花を思い出して
この場所で今咲き誇る桜にその記憶を届けてほしい
4/25 to 4/30 2006 ギャラリー・アビィ 『さくらイロ』展 出展作品(写真のみ)