仙人の蜂蜜

2017/4/21 更新

もう10年近く前のことですが
奈良県の山奥、紀伊半島の山深いあたりに
水力発電用の取水堰を探しに行った時のことです。


山道に車を止めて川に降りて写真を撮り
取水堰を探して道に戻ってきた時でした。


山に入るならこういう服装だよね
という農協の帽子にシャツと長ズボンに長靴という
背筋のピンと伸びたお爺様が道路に立っていたのです。


止めていた車が邪魔だったのかと慌てましたが
そういうわけではなく
こんな山奥に人が来ていたから仕事の帰りに見ていただけとの事。
おうちがすぐ近くにあると教えてくれました。

探していた取水堰は尾根をはさんで向こう側にあるけど
今は道が悪いのでいかない方がいいよと教えてくださいました。

お礼を述べて車に戻ろうとした時に
ちょっと待ってなさいと言われ
お爺様はご自分の軽トラックから何か瓶を持ってきてくださったのです。


なんとそれは焼酎の“いいちこ”の瓶に満々と入った蜂蜜でした。
ここら辺の人はみんな自家製で造るんだよとのこと。
たくさん採れたから一瓶あげますよと通りすがりの怪しい奴なのに
こんな高級品をぽんとプレゼントしてくださったのです。

そして軽トラックに乗って颯爽とお爺様は行ってしまいました。

頂いたいいちこの瓶の蜂蜜を抱きしめながらちょっとびっくりして呆然。

◆ ◆


自宅に帰りついてとりあえずトーストを焼いて紅茶を煎れる。
はちみつだからパンに塗り塗り、紅茶にとろーん♪がいいかなと。


そもそも、昔から売られているレ○ゲ印の蜂蜜くらいしかなめたことはなく
えぐみがとにかく気になってあまり好きではなかったし
メープルシロップを知ってからは蜂蜜に手を出すことなど全くなかったので
頂き物とはいえ、食べる時に少し覚悟をしました。

え・・・!!

一口食べて吃驚しました。

世の中に
こんなに美味しい
えぐみが全くない蜂蜜があるのか!!
こんなに甘くておいしい蜂蜜があるのか!!

と、カルチャーショックを受けたくらい美味しかったのです。

お知り合いで蜂蜜大好きな方に小分けして味見していただいたら
購入したい!!とまで言われました。

自家製蜂蜜ってこんなに凄いのかといろいろ調べたところ
自家製であることもですが日本蜜蜂による
百花蜜という要素が大きいらしいことが分かりました。


産地でお聞きすると、品質というか、年によって出来にむらがあるし
生産量の予測もつきにくいのが日本蜜蜂の百花蜜のようで
それはそれでワインみたいなもんだなと。

大事に大事にちびちび食べていた奈良の山奥で仙人のようなお爺様から頂いた蜜も
残り少なくなってきましたのであちこちでそれに匹敵する蜂蜜を
探すのがまた楽しいです。

ダムアワード2015の洪水調節賞を受賞した七川ダムのある古座川町の百花蜜
ダムアワード2016の放流賞を受賞した上椎葉ダムのある椎葉村の百花蜜

ダムめぐりしながら蜂蜜も探すのが楽しいです。