令和2年 1月2月

2020/3/11 更新

令和元年の年末からニュースなどで盛んにダムの事前放流について
流れるようになり、これ、誤解されずにちゃんと伝わるか心配だなあと
思って眺めていました。

そもそも事前放流を10年近く前から実施して
高度管理、ダム操作をして乗り切っているダム管理所に
これらのニュースの後に
“ぜひ事前放流をして我々の街を守ってくださいね”と
下流の自治体の役所から言われたりしたという話がありまして…。

今までずっと説明してきているのに理解してくれていなかったんだなと
がっくり肩を落とすというエピソードに怖いものを感じました。

ダムの中の人から直接、資料を前にして
きっちり時間を取って説明を受けていても
理解できない役場の人がいるという現状で
ニュースでさらっと聞いただけで理解できる一般の人が多いとは
到底思えないので…。

「なんかよくわからんけど
ダムに事前放流というものをしてもらえたら
洪水の時に安心らしい」
というイメージだけが広まるのが本当に怖い。

それは「ダムがあるから大丈夫」の呪いと同じで
あまりにも中途半端な情報でしかないのです。


令和元年の師走の半ば頃、NHKのニュースで
ダムの堆砂についての放送がありました。


『道府県が管理 (独自)治水ダム“約1割土砂で機能低下”』
というタイトル。

“道府県”となっているのは東京都には治水を目的に持つのダムがないからです。

そして細かいことを言わせてもらうと“治水ダム”という単語は
治水専用ダムを思い起こさせるのであまりよくないなと思ったのですが
内容ではきちんと“治水を目的に持つダム”とされていたので良しとします。

堆砂が許容量以上に進行している事が確認された治水を目的に持つダムは
平成29年度末時点で
遠野ダム(岩手) 高柴ダム(福島) 道平川ダム(群馬)
霧積ダム(群馬) 塩沢ダム(群馬) 高滝ダム(千葉)
亀山ダム(千葉) 鯖石川ダム(新潟) 笠堀ダム(新潟)
三面ダム(新潟) 刈谷田川ダム(新潟) 奥裾花ダム(長野)
裾花ダム(長野) 松川ダム(長野) 湯川ダム(長野)
石田川ダム(滋賀) 天理ダム(奈良) 湯原ダム(岡山)
厚東川ダム(山口) 御庄川ダム(山口) 川上ダム(山口)
長柄ダム(香川) 門入ダム(香川) 五名ダム(香川)
殿川ダム(香川) 五郷ダム(香川) 田万ダム(香川)
大川ダム(香川) 内場ダム(香川) 黒瀬ダム(愛媛)
足谷ダム(愛媛) 玉川ダム(愛媛) 鏡ダム(高知)
永瀬ダム(高知) 南畑ダム(福岡) 渡川ダム(宮崎)
立花ダム(宮崎) 綾北ダム(宮崎) 綾南ダム(宮崎)
松尾ダム(宮崎) 岩瀬ダム(宮崎) 祝子ダム(宮崎)

地元奈良県の天理ダムも含まれていました。
うん。貯水池に砂防堰堤作ったもんね。


気になることがぽろぽろ耳に入ってくる新年
NHKのニュースで『利水ダムの事前放流』についてが流れました。


池原〜っ!!

おおお。
いつの写真だろう。
なかなかの幸せ水位。
しかも堰堤に濁水が到達しているなんて
相当の出水の後日写真だな


おおおお!!
風屋だ風屋も出たっ!!
む。
晴天時にゲート放流とは発電所の点検か?


あああっ!!
殿山も出たーっ!!
あの展望台からの画じゃないか。

つーか
このタイトルのニュースで
出てくるのが池原・風屋・殿山ってことは…
令和元年台風第10号に伴う大雨による近畿地方の河川の概要

で紹介されている三基ではないか。


と、文字情報よりダム写真ばかり追いかけているように
見えますがちゃんと内容も気にしています。

このニュースはすごく内容が濃くて大事なことがぎゅうっと詰まっていたのです。

発電や水道の専用ダムで事前放流ができる体制が整っているのは7か所だけ
(実際に行われているのは一類の発電ダムだけと)
多くの利水ダムでは体制が整う以前にやろうと思っても必要な設備がない
これが“構造的に事前放流できないダム”ということでその説明もでていました。


これはweb記事の方です。
放流設備増強のための補助の他に
このニュースでは利水ダムが事前放流で水位を下げた後に回復せず
無効放流になってしまう事で損失が出た時には
国が“一部”補填を検討することも書かれています。

うん…。
お金だけで済む話だったらいいんだけど
発電用の一類のダムが流す水って実は流域の灌漑用水になっていたり
水道用になっていたりするんで空振りでした、無効放流になりました
では人の暮らしを大きく脅かすのだという事は華麗にスルーなのね…。
たしかにこれ以上情報量増やしてもなかなか理解してもらえないと思うけど。


その翌日、産経新聞に出ていた記事がこちらでした。
一つ気になる文があります。

『ダム建設が多かった数十年前は技術的な制約があり、
事前放流のための放流ゲートを下部に設けることが
難しかった側面があるとみられる。』

・・・・・・・。
どこの自治体や
こんな返答を新聞社に返したの

ゲート増やしたら設計も工期も工費も膨れ上がるから
コストで削っただけやろ??
まことしやかに言わんといてほしいわ

コンジットゲート付ける技術は
国内でも昭和35年には確立されてたし
利水が目的なので低水位放流管は不要という事で
つけないという判断をしたことと
技術的な制約というのは全く意味が違います。

日本のダム技術者の皆様にごめんなさいしなさい!!
といいたいくらいちょっとぷりぷり。



事前放流についてのニュースも気になるけど新年早々
全く各地に降雪がなくて渇水まっしぐらかとおびえていたので
丹生川上神社中社に祈雨のお参りに行きました。


その後、すぐ近くにあるこんな場所にやってきました。

お世話になっている京都大学の角教授が監修された
「今こそ問う水力発電の価値」に載っていた小水力発電所です。

凄く分かりやすく知りたい情報がこれだけ事例を基にまとめられている本って
なかなか無いと思います♪

面白いコラムがたくさんあって
日食の時に太陽光発電がどうなったかとか
発電量と消費量のバランスの話を
北海道で起きた国内初のブラックアウトや
九州の太陽光の出力制御の話などで分かりやすく説明してくれています。

当然水力発電用ダムについてのお話もばっちり載っていますので
ダムが好きで水力発電が好きという人はぜひ読んで欲しい♪

某所から講演の依頼を受けてあっちこっちで調べていた欲しい情報が
これ一冊で全部載っていたわ…ということで
私の講演聞くよりお客さんにこれ買って読んでもらう方が
理解が進むのは間違いないと思ったりしてます。

ただ、一か所どうしても、これはだめですよぅ…という誤字があって
帝釈川ダムが中部電力様になっているの。
帝釈川ダムは中国電力様のダムのフラッグシップです!!
井川五郎ダムを中国電力様のダムというくらい失礼なので
重版かかったら修正してほしいな。


川の向こう、神社の隣に真新しい建屋があります。
ここが復活したつくばね発電所です。


立派な石碑が立っていました。
初代つくばね発電所は大正3年竣功。
吉野水電様が造りました。
石碑は大正11年4月に建てられたもののようです。


まだ木の香りがしてきそうな綺麗な建屋。


素敵な表札です。


説明板もありました。
かなりの落差がありますのでこれは勿体ない…と
復活させてもらったんですね。


新年最初の飲み会はPCと写真の師匠と。

天満で素敵なお店を教えてもらいました♪
また行こう♪


やっと降雪があって平年の3割ほどとはいえ
山に雪が貯め込まれるニュースに渇水の心配が
少し遠のいた頃にやってきたのがCOVID-19禍。


京都駅でにっこり笑う鹿。
奈良公園は閑散としています。
鹿の方が人より多いの久しぶりに見ました。


同じように観光客激減で観光公害に泣いていた伏見稲荷は
とても環境が良くなっているという噂に
ダム仲間のdashelo様と一緒にお弁当持ってやってきました。


COVID-19対策で手水舎が閉鎖されるという異常事態。
神社に入るのに洗えないのーっ。

dashelo様は京都にお住まいですが伏見稲荷は人が多過ぎて
今まで来たことがないと仰っていたので今が大チャンスだと
うきうきJR京都駅に集合。


そして折角だからおいしいお弁当持って行こうよ♪
と、伊勢丹のデパ地下をうろつき、ぴぴっと来たのがこのお弁当。

めっちゃ美味しかった。
大当たりだった。
最近、新幹線に乗る時にお弁当は
近鉄名店街みやこみちのハーベス京都店で
お惣菜と俵型おにぎりにしていましたが
伊勢丹が開いている時間ならこのお弁当も良い♪


伏見稲荷から戻って京都駅ビルを散策です。
スカイビルと同じ設計事務所なんだよ〜
スカイウォークが同じ思想でしょ〜
と、あちこち愛でてから解散しました。


COVID-19禍のために
各地のダムで予定されていた凄いイベントも次々と中止になり
とても気持ちが下向きになりました。

自分のスケジュールに空きが生まれるとほぼそれを図書館通いで
文献調査で費やしていたので充実していなかったわけではないのですが
ついにダムカードの配布まで中止になるという事態に
尋常ではない空気が漂い始めた二月末。


大阪に出てきました。


お世話になっているダムエンジニアの皆様と
とある古ダム文献の解析を肴に飲み会です。


主役はこちら。

題して
『三浦ダムのお酒を飲んじゃう会』
です。

あの三浦ダムの監査廊で貯蔵されていた日本酒です。
ラベルがお洒落過ぎてグリーンボトルなので
ワインに見えそうですが日本酒。


頂き物なのですが一人で飲むのは絶対に勿体ない
特別な時に飲まないと勿体ない
と、家族に見つからないように箪笥に隠していました。
ついに飲めるよ♪


甘くて旨口の自分の好きなタイプのお酒でした。
黒部のぐいのみで三浦ダムのお酒を頂くの図。

ダムの専門家の方は図面見ただけで何でもわかるので
自分がさんざん図面を見ても解けなかった謎が
ふわっと雪のように溶けていくのがもう感動。

ありがたいありがたい。


ということで暖冬で雨が多くて桜の開花も早そうな令和元年睦月如月の備忘録でした。

COVID-19のピークカット政策が功を奏しますように
感染対策万全で過ごしたいです。