山口川調整池 見学 その4


折角ですから下から見上げたいと思い
日を改めるとかそういう発想もなくて
またまた酷い藪こぎをしています。
堤頂に行くよりハードです。


水叩き。

堤体にちっこく開いている穴は何なのでしょうか。

排砂ゲートくらいしか思いつきませんが。
しかしそこに穴が必要な理由がちっとも見えてきません。

水路は左岸にあるからです。


これが取水口からの水路ですね。

排砂ゲートは取水口の近くに造るのがスタンダード。
まぁ、例外もいろいろあると思いますが。


水路につけられたスルースゲートはクレストのラジアルゲートと同じく死んでました。


このハンドルを支えていた木が朽ちてハンドルがぶっ倒れていました。

設備が壊れていても修繕されていないあたりに
この水路がすでに必要とされていないことを感じます。

ここの水路から通水が必要だったら
この水源から水を持っていくことが必要だったら
こんな風に放置しない

このダムの灌漑の目的はもう必要なくなっているのでしょう。


積もりに積もってゲート上端まで達した土砂。
豪快に水通し部から流れ出る水にも関わらずこちらからは水がでいません。

右岸の水通し部はゲート上端とほぼ同じ高さになっているのです。

扉体のいくつかには上端に流木が引っ掛かり
ここからも越流している事を伺わせます。
出水時にはこのゲートをオーバーフローするのでしょう。

この山口川調整池を築堤したのは瀬戸市ですが
管理は砂防堰堤は県が行っています。
ゲートは灌漑用水の供給を受ける山口下流農地組合のようです。

ゲートレスのダムとゲート操作が必要なダムでは管理の難しさは天と地ほど違います。

かなり昔にこのダムで排砂ゲートを開けた時
真黒なヘドロのようなものが大量に出て下流に迷惑をかけたので
それからは排砂ゲートを操作していない
という話を現地で聞きました。

流域面積の広い大河川ではありません。
無酸素状態で堆積した木の葉などがヘドロ化したものを流しきるほどの
流量は確保できなかったのでしょう。

排砂は下流河川に堆積させないため流し切れるように
出水時・洪水時に行うというのが最近の流れです。

排砂ゲートを動かしたというのがいつの頃の話なのかは不明ですが
貯めに貯めた土砂は排砂ゲートという手段で出すことができないまでになって
排砂できないために取水口も埋まってしまいます。

浚渫は莫大な費用がかかるので仕方がなく放置していたら
ゲート上端まで堆砂が進んでクレストゲートもついに使い物にならなくなった。

こういう経緯なのではないかと思いました。


砂防堰堤の形をしているのは赤津川上流が荒廃地で砂防の必要があったためです。

このダムについてのさらに詳細なデータを知るためには
愛知県か瀬戸市の砂防を担当している部署に確認する必要があるように思いました。

改修工事があったような気配が少し漂っていたからです。


瀬戸市に問い合わせたところ
愛知県 尾張建設事務所 河川整備課でお聞きになってはと教えていただき
問い合わせたところ昔に作成された立派な資料をいただくことができました。


これが山口川調整池のパンフレットです。
表紙には完成当時の記念写真が使われています。

多目的ダムの先駆け山口堰堤をご存知ですか?

一級河川谷田川は、瀬戸市東部の猿投山麓に端を発し、西に向かって流下し名古屋市内で庄内川に合流しています。
その谷田川の上流部、瀬戸川合流点から上流(延長約10km)は地元では山口川と呼ばれています。

山口川は昔、上流からの土砂の流出が著しくたびたび氾濫しました。
土砂を止めるためには堰堤(ダム)が必要でした。
そのため昭和7年に砂防ダムとして愛知県が山口堰堤を建設しました。

さらに、慢性的な水不足の解消と水害防止の機能を兼ね備えるため、堰堤の高さをあげることになりました。
工事は愛知県が委託を受けて施工し、昭和9年、多目的ダムの先駆けである「山口堰堤」が実現したのでした。

(「山口堰堤」パンフレットより引用)

多目的ダムの先駆け♪
なんと魅力的な文言♪


◆山口川調整池(山口堰堤)諸元◆

型式:ラブルコンクリート堰堤+可動扉5門
堤高:扉門上端迄 17.1m( 砂防ダム分 8.9m)
堤長:56.0m(砂防ダム分 37.0m)

扉門 高 2.0m 幅3.0m
集水面積:17.28q2
調整池面積:58,000m2

ラブルコンクリートというのは
15cm以上の大きさの割石や玉石を埋め込んだ粗石コンクリートの事です。
当時はこういうコンクリートが経済的でよくつかわれていました。

現在、山口川調整池が担っていた灌漑用水の確保は
上流の大正池が行っているそうです。

そして堆砂が物凄いのでゲートが動かされなくなってから
相当の年月が経過していると思っていたのですが
平成11年の秋に堤体中央の3番ゲートから放流している写真がパンフレットにありました。


今でもちゃんと動くんです!!



放置されたスルースゲートのハンドルに手をかけているように伸びた木の枝。

それはハンドルを回そうとしているのではなく
むしろ
もう 動かすな と、止めているように見えました。


砂防堰堤でよろしく
灌漑用にはもう水を流していないけど
それはもう追求しないでね

今の砂防のお仕事で手一杯だからさ

と、言われているような気がしました。

そうだねー
うん

砂防堰堤だよね

砂防と灌漑用に作られた山口川調整池。

それはとても変わった形の
砂防ダムと灌漑用水確保のハイブリッドとして1934年に築堤された
ダムの歴史の一つを教えてくれる国内初(?)の多目的ダム(かもしれない)
現在は砂防に頑張っている堤体でした。