宇治川ヘリテージツアー その3


天ケ瀬ダム下流にやってきました。
コンジットゲートから放流はしていませんが天ケ瀬発電所からは
電気を生み出した水が滔々と流れ出ています。


ここまで宇治からほとんど高低差を感じませんでしたがここで一気に登る。
ダムの高さだけ登る。
70m近く登る。


昇って昇って管理支所に到着。

管理支所の玄関に立っておられたのは淀川ダム統合管理事務所の所長様でした。

何故分かったのか。
それは、2008年からずっと九頭竜&真名川ダムの森湖イベントでお世話になっていた方だったからです。
淀統(淀川ダム統合管理事務所は淀統と略されます)に昨年から転勤されていたとお聞きしていたので。
御顔が見えるなりぶんぶん手を振り近づいて・・・

「こんにちはーっ」
「こんにちは」
「所長様、ひどいや!!」
「なんですか?」
「11月にクレスト放流したでしょ」
「え・・はい。しましたけど」
「なんでなんでなんでダムマニアにだけでも知らせてくれなかったんですかぁぁぁっ!!」

2010年11月某日
天ケ瀬ダムは30分だけクレストゲートから放流したのです。

地元ローカル誌に記事が載り、それを見て悔しくて床をゴロゴロ転がっていたのです。

イベント参加者の皆様、私と所長様のやり取りにどん引き…だったかも。

「それについては後で説明しますから。夜雀さん。そんなに膨れない」

所長様に怒られる。

参加者全員、管理支所の会議室に入れて頂いて天ケ瀬ダムについての詳細な説明を受けます。


説明内容はちょっとハイレベルでした。
私が食いついたのは洪水調節。
これが天ケ瀬ダムの洪水調節計画のハイドログラフ。

天ケ瀬ダムは日本でも有数の洪水調節操作が難しいダムです。
上流に琵琶湖があるために流域面積は桁違いに大きいのです。
琵琶湖には400本以上の大小河川から水が流れ込んでいるのですが
琵琶湖から出ていく水は
琵琶湖疏水
瀬田川
関西電力宇治発電取水口の3本のルートしかありません。
その瀬田川の出口にある瀬田川洗堰と天ケ瀬ダムは連携して洪水調節を行います。

琵琶湖からの水を受け止めるために予備放流を行って水位を下げ
琵琶湖の水が来ても大丈夫な状態にしてから瀬田川洗堰を通ってくる水を受け止めます。
天ケ瀬ダムの準備が整うまで瀬田川洗堰は水を貯めこみます。
天ケ瀬ダムは下流に洪水を起こさないように放流を開始します。

天ケ瀬ダムと瀬田川洗堰の連携洪水調節については
淀川ダム統合管理事務所の洪水調節のページをご覧ください。
もっと簡単にという方は拙文・琵琶湖総合開発のレポートをご覧頂けたら嬉しいです。


もう一つ気になったのは堆砂。
天ケ瀬ダムができる前に宇治川には大峰堰堤というダムがありました。
宇治川電気が開発しその後、日本発送電、関西電力と引き継がれたダムです。
天ケ瀬ダム開発に伴って堤体は水没することになりました。
大峰堰堤の姿は鹿島建設様のページでご覧ください。

この大峰堰堤が上流からの砂を食い止めています。
なので天ケ瀬ダムの堆砂は現在、ほとんど進行していません。

更に興味深かったのは年回転率の話。
天ケ瀬ダムは年回転率が年平均175回、喜撰山ダムの揚水発電を含めるとなんと年平均206回!!
信じられない水の入れ替わりです。
平均年回転率=年間総流入量/総貯水量
沖縄のダムにこの豊富な水があったら・・・と思わず羽地ダムを思い出してしまいました。


詳しい説明を受けた後、堤体見学です。


これは2007年の天ケ瀬ダム天端の様子。

危険行為をする人が絶えなかったため
転落防止のために新しく高欄が造りかえられました。


これが採用された新型高欄です。
乗り越えにくい形に加えて説明板が数多く取り付けられています。


ダムは高さ15m以上ですよ
15m以下は堰ですよ
と言った初級の説明から先ほどの洪水調節計画まで実にたくさんの説明板が。
これは嬉しいですね。


参加者の皆様に質問攻めにあう淀統の所長様。
ホントに参加者の皆様、ダムについて知ろうとしてくれる気持ちがいっぱいで
見ていてこちらが嬉しくなる程です。