上野遊水地 見学 その4


まだ出来立てほやほやの空気漂う木興遊水地排水門。
高さ7.75m、幅16.0mの鋼製ローラーゲートです。

ゲートのサイズは各遊水地ごとに異なります。


長田遊水地の排水門と越流堤。
現場で見るとかなりの大きさです。


木興遊水地排水門の足元にやってきました。
やっぱりでっかいです。


平成23年にできたものでした。
ぴっかぴかで新しいわけです。


そのまま歩いて行くと真っ白白の越流堤が出てきます。


堤内地(堤防の外側)には貯留した水を排水門まで綺麗に導くために水路が設けられています。
きちんとコンクリートで固めておかないと堤防が痛む元。
洪水時には水だけでなく色々なものが流れてきます。
土砂もそうですが何より怖いのは流木。

橋桁に引っ掛かり、他のごみもどんどん補足して
あっという間に上流水位をあげてしまう流木。

流木が大量の流塵を補足して橋が落ちてしまったり
迂回流が発生して橋近辺で洪水が起きる事もあります。

遊水地にも流れ込んでくるのは水だけではないはずです。
洪水の後には流木、流塵がたくさん押し寄せるでしょう。
そういうものが遊水地内でまた水の流れを阻害してしまわないように
水が速やかに川に出ていくように
排水路を確保することはとても重要なことではないかと。

◆ ◆

平成24年の台風17号では各遊水地が頑張ったそうなのですが
その様子を記録している写真がwebで見つからず・・・。

上野遊水地は遊水スイスイ館と同じ建物にある
集中管理センターステーションからゲート操作が行われます。

人員も少ないし、巡視の時に写真撮っておくのは困難なのかも。
ではせめてCCTVカメラの監視映像でもwebに挙げてくださったら
遊水地頑張ったんだなぁと理解が深まると思うのですが。
なかなか難しいか。

◆ ◆

上野遊水地ができた事で洪水に対する上野地区の防御力は格段に上がりました。
頻繁に起きる中小洪水に対してはかなりの安全度が確保できたと思います。

でも既往最大級に対してはかなりパワー不足というのが実情です。


これは平成18年の発表資料でちょっと古いのですが
遊水スイスイ館でも紹介されていた
過去の災害で最も上野地区に浸水被害が大きかった
昭和28年台風13号の洪水で上野地区が浸水した範囲を示した図です。
昭和28年台風13号で上野地区には
1610万m3の水が押し寄せ
氾濫で浸水した土地の面積は540haにもなりました。

上野遊水地事業として
小田遊水地、新居遊水地、木興遊水地、長田遊水地が完成しましたが
すべてを合わせても250haです。
戦後最大の浸水域の半分以下なのです。

そしてこれは遊水スイスイ館で見たモニター画面の資料写真。
昭和28年台風13号だけが200年確率級のとんでもない台風だったのかと言えば・・・
実はそうじゃないのです。
洪水で水につかった面積、500ha超級がこんなに何度も来ているのです。
伊勢湾台風の時も戦後最大ではないけれどほとんど面積変わらないし
こんなに頻繁に洪水被害あるなんて・・・。
盆地の市街地
複数の川が合流
合流点直下流に狭窄部
過去の地震で地盤沈下

水害リスク状態の都市
遊水地には住宅は作ることができません。
普段は水田や畑地として使っている土地を洪水時に使えるように
協力して頂いて成り立っています。

戦後最大の浸水域の全部をカバーできる遊水地をこの場所に造るというのは
土地活用の観点から考えても都市機能から考えても非常に無理があります。

しかし狭窄部・岩倉峡の開削は下流の反対と堤防整備の遅れがあるためにできません。

ではどうしたら年々凶悪になる巨大台風や異常降雨による
水害リスクから上野地区を守るシステムを作ることができるのか。

最も早く治水効果を示し、コストが少なく工事期間も短くて済むのが
木津川上流・前深瀬川に建設中の川上ダムを完成させることです。

◆ ◆

『川上ダムに関する検証・検討委員会』では川上ダムの利水についてばかり話が進められて
治水についての意見が出てきません。

この委員会には地元、伊賀市に住んでいない学識経験者が多く選出されているのだそうです。
地元の声は反映されているのでしょうか。

地元、伊賀市の委員から委員長宛で出された意見書には
「利水についてだけではなく上野地区の治水についてもっと考えてほしい」
という内容も記載されていました。

新聞社などにもそれは配布されたそうですがどこの新聞もそれを取り上げていません。
またダムについての偏向報道と一部のダム反対趣味の人のせいで
もしダムが建設されずに洪水が起きたらその人たちはどう説明するのでしょう。

足羽川ダムが早く着工していたら2004年の福井水害は防げたかもしれない。

その前例を知っていてダムはいらないというのは本当に学識経験者の意見でしょうか。
川上ダムは多目的ダムです。
洪水調節をするために計画されているダムでもあるのです。
なのに治水について語らないというのはおかしいと思います。

しかも今まで洪水経験が少ない場所だというならともかく
今までにこれだけ浸水した経験を持つ水害ハイリスク地区に関わる問題なのに。

とりあえず僕がすべきことは全部やります。
できる限りの力を出します。
でも防ぎきれないかもしれない。
でもできる事は絶対に全部やります。
それしか言えなくてごめんなさい。

曇り空の下、真っ白なコンクリートの越流堤は元気が無いように見えました。

ダムと堤防と、早くお仕事分担して
この地区の人が洪水におびえなくてもよくなるように
下流にも洪水が起きないように
上流・中流・下流の人がお互いの住む場所のリスクを知って
流域のみんなが洪水に合わなくて済むように協力して欲しいなと現場で感じました。