上野遊水地 見学 その2


上野地区では川の水面の高さと市街地地面との高さの差が少ないので
堤防がとにかく大切。

ここで吃驚したのは江戸時代に上野には大規模な地盤沈下があったのだという事。
全く知りませんでした。
しかも地震が理由で地盤沈下したなんて!!
地下水汲み上げとかじゃなくて地震でも盆地に地盤沈下って起きるものなんですね。
もともと三川合流地帯で地盤も緩かったのかもしれないけど。


という事で
市街地で三本の川が合流している上に
その直下流に狭窄部があり
地震で地盤沈下しているという
水害常襲地帯の条件が揃ってしまっている厳しい環境の上野の市街を守るため
整備が進められたのが上野遊水地です。


館内の大きな模型で遊水地部分を点灯したところ。
川沿いに洪水の時に水を逃がす区域を設けています。
遊水地と周辺の市街地の間に堤防を設けて市街地に水が出ないように守ります。


模型で見ると写真よりよくわかる
木津川のボトルネック、岩倉峡。


ここが狭窄部として在る限り、三川の水はどうしても流れが悪くなります。

ではここを開削して流下能力を高めたら上野市街地は浸水しなくなるのではないか

という事で昔から検討されてきましたが
これには下流からの大反対が。

一度に大量の水が来たら下流が洪水被害にあうので流されると下流が困るというわけです。

琵琶湖の事例でも同じことができました。
南郷洗堰が作られた明治時代の事です。

南郷洗堰の上流にあった大日山という山の開削が行われました。
明治38年に南郷洗堰ができ、明治42年に行われた大規模な浚渫で
瀬田川への流出水量は堰がなかった時の4倍にまでなりました。
それまで洪水の度に水が長期間退かない事で洪水被害を受けていた
琵琶湖周辺の住人にとってこれはとても大切な治水対策でした。
しかし琵琶湖の水が速やかに下流に流れ出る状況になると下流が洪水になるので困ります。
上流と下流の両方の洪水を防ぐためにどうしたらいいのか。
それを実現しているのが琵琶湖総合開発と瀬田川洗堰・天ケ瀬ダムの連携運用です。

この岩倉峡を開削することで上野市街地の浸水被害を軽減するためには
下流の堤防の増強が必要になってくるのです。
これはセットで考えないといけない事で開削だけすればいいというレベルではありません。

そして色々なダムの建設検証でも出されている事ですが
堤防の増強というのはダム建設よりはるかに大変でコストが莫大なのです。

人の暮らしから遠く、開発されていない土地が延々と広がっているなら可能ですが
川のそばは利便性がよく昔から住宅、道路などが開発されています。

堤防を高くするという事を
今ある堤防の場所と広さでただ単に高さだけ上げたらいいのではないか
と考える人がいますが、とんでもないです。

堤防というのは断面で考えると均一フィルダムと同じでコアのない土堰堤です。
崩れない為には高さに比例して幅も広くしていかなくてはなりません。

すると川のすぐ傍に住んでいる方には移転をしてもらわなくてはなりませんし
道路は付け替えなくてはなりません。

堤防は何kmも続くわけでそれを全部進めるためには物凄い費用と年月が必要になります。

なので流域にもよりますが
ダムが一番、ローコストでの治水効果を即効で期待できるものになるのです。