苫田鞍部ダム 見学 その3


苫田ダムに移動してきました。


資料室には本堤体の工事記録のほかに鞍部ダムの記録もばっちりです。


鞍部ダム左岸に鎮座していたスリップフォームが
どんな風に仕事をしてあのつるつるの表面を造ったのか
きちんと記録写真がありますのでよく分かります。


フィルダムの断面図を見慣れている人なら
ん?と感じるこの断面図。
CFRDだから堤体の上下流ともにとても急勾配なのです。
AFRDも同じく急勾配。

本体の大部分を占める緑色に塗られた部分がロック材です。
ダム軸の下、天端の下はこのロック材。
なのでCFRDやAFRDは余盛がほとんどいらないのです。
土じゃないから沈まないのです。

貯水池側の黄色の部分は別の種類のロック材。
その外側を覆うのがトランジション。
一番外側の表面を薄く覆っているのがメインスラブ。
ここがコンクリートになります。


引っ張りラジアルゲートを見に行こうかなとも思ったんですが
工事作業中だったので周囲から堤体を愛でた後、もう一度鞍部ダムに戻ります。


鞍部ダムの説明板です。


この説明板には分かりやすく殿ダムとの比較があります。
センターコア・ロックフィルの殿ダムとCFRDの苫田鞍部ダム。


2003年、試験湛水前の苫田鞍部ダムです。

苫田ダムが竣工してもう14年になります。
2005年に竣工なのです。平成17年。
試験湛水の際のラビリンス型自由越流堤頂を越流する姿を
楽しみにしていた愛好家もいました。

今のように広報されることもなく
試験は試験なので淡々と進められていたのです。
ほんの10数年前のことです。

今では試験湛水が広報されるようになり
サーチャージ水位到達を一般人も現地でお祝いしやすくなりました。


CFRDは長い間、日本で造られませんでした。

日本初のロックフィルダムである岐阜県の小渕防災溜池と
今は胆沢ダムの湖底に沈んだ石淵ダム
国内には数例しか造られなかったと聞いています。

CFRD工法自体は100年以上前にすでに海外で施工事例がありました。
ただ、100年前には投石工法が主流ですので
今では当たり前になっている振動ローラーによる締め固めなどは
行われていないので堤体が大きく変形してしまい表面のコンクリートスラブが割れたり
漏水したりと品質の面でいろいろ問題があったようです。

しかし技術は半世紀もたてばどんどん進化しますし
海外ではフィルダムの主流はCFRD。
日本のようなセンターコアフィルのロックフィルダムの方が少ないです。
海外では日本のようにコア材が容易に確保できない国の方が多いからなんだと
専門家の方に教えていただきました。

日本は地震が多い国土だから
地震が来ても堤体にダメージが少ないように
戦後、長い間、日本ではCFRDは造られなかったのです。

でも技術は日進月歩。

日本でもCFRDを
最新技術で安全な堤体を
そんな思いで設計され、造られたのが苫田鞍部ダムなのです。

苫田ダムにお越しの際はぜひ、鞍部ダムも愛でてください。
ダムカードもちゃんと二つ揃っていますので。