菅生ダム 見学 その1
2026/6/21 更新

但東ダムから金出地ダムに向かう途中で
ダムの看板を見つけ、やってきました菅生ダム。
菅生ダムは兵庫県姫路市夢前町にある多目的ダムです。

ダム湖の名前は明神湖。
いいですね。
呼びやすい覚えてもらいやすい名前。
ありふれてるかもしれないけど地元でぱっと口にしてもらえるダム湖名、良いなぁ♪

イラストが可愛い♪
一生懸命書きこまれているのを見るのが楽しい周辺図。

ダムの諸元データが刻まれたプレートを発見。
菅生ダム諸元
堤高 55.0m
堤頂長 157.0m
堤頂高 223.0m
堤体積 95800m3
着工 昭和47年4月
竣工 昭和53年3月

そしてその横に 堰堤改良事業 のプレートです。
堰堤改良事業
ダム諸元
堤高 55.7m
堤頂高 223.70m
堤体積 96600m3
着工 平成20年10月
竣工 平成23年1月
堤頂長は記載がないので変わっていない様子。
シンプルに70cmだけ嵩上げされたようです。
◆
菅生ダムは竣工時、クレストにローラーゲートを備えたダムでした。
改良工事を担当された熊谷組様の菅生ダム堰堤改良事業の紹介ページには
https://www.kumagaigumi.co.jp/works/002285.html
菅生ダム旧堤体のクレストゲートとオリフィスゲートが映った写真が掲載されています。
中低位標高に放流設備を備えていないダムで
大雨が降った時に急激な水位上昇が発生する小流域のダムでは
ゲート操作が本当に本当に大変です。
本則操作通りにやっても間に合わないくらいの雨がやってくるわけで
ゲート操作が追いつかなくてサーチャージ水位超過とか悲しすぎます。
なので、ゲート操作を不要にしてダム本体が自然調節で洪水調節をしてくれる
ゲートレス化が決定したのです。
既存ゲートを撤去し自然越流式非常用洪水吐きと堤趾導流壁を新設する工事でした。
オリフィスゲートはそのまま使用。
クレストゲートは扉体を撤去し左岸側にゲートレスクレストを3門増設
合計5門のクレストゲートを備えました。
国内でも二番目のゲート付きダムのゲートレス化事例だと聞いています。
このゲートレス化で必要になったのが嵩上げでした。
ゲートを取っ払って既設堤体にゲートレスクレストを作っただけなら
嵩上げはしなくても大丈夫なのではと思われるかもしれませんが
ゲートレスにすると少し堤体を大きく(高く)する必要があるのです。
なのでゲートレス化するとしてもクレストゲートの越流頂を最大にして
堤趾導流壁とすることでダムの高さを抑えることが出来る(コストを下げる)
デザインが採用されたのだと思います。

こちらはダム技術センターから公開されている
“重力式コンクリートダムの単純小規模嵩上げの限界に関する検討”
に載っていた図です。
☆
三つ並んでいるダムの図で一番左の敷幅も堤体も天端も分厚くなる嵩上げが
最も重力式ダムの嵩上げでポピュラーなものです。
同軸嵩上げ全面腹付け方式と呼ばれます。
新桂沢ダムもこのやり方でした。
ポイントは嵩上げ後、天端幅が厚くなり、堤体下流面の傾斜が緩くなること。
☆
真ん中のダムの図は超・変態嵩上げ(←褒めてる)で他に事例がない
新潟県の笠堀ダムの嵩上げ例です。
一例しかないのですがあまりにも特殊なので
同軸嵩上げ頂部腹付け方式と名前までついています。
堤体の上の方だけ増圧して、施工は大変ですがコンクリートの量は減らせるし
とても良いやり方に見えますが、これにはとんでもなく複雑で
いくつもの条件が整っていないとできない改造なのだそうです。
笠堀の嵩上げを見て、うちのダムも是非これで、という声はあったようですが、無理。
☆
そして右の天端の上だけをちょこっと嵩上げしているのが
単純小規模嵩上げです。
菅生ダムの嵩上げはこれに該当します。
ダムの安定計算はとても複雑です。
滑らない 転ばない 壊れない 設計にすることが必要。
重力式ダムは貯水池が満杯でも空っぽでも絶対に
コンクリートに“引っ張り応力”が発生しないように設計されるのです。
堤体をちょっと高くするだけで堤体のあちこちにかかる力が変化します。
天端幅を広げずそのままの幅で高さだけを増すとバランスが崩れてしまうので
腹付けで堤体を分厚くし、天端幅も広げなくてはなりません。
なのでスタンダードな重力式ダムの嵩上げは新桂沢のような
同軸嵩上げ全面腹付け方式が選ばれるのです。
「堤体の上流面に鉛直方向の引張応力を生じないこと」が最重要ポイント。

このダムとダム湖を表している説明板がお洒落でした。
堤体断面があるのでわかりやすい。
洪水満水位 EL221.00m
常時満水位 EL207.00m
総貯水容量 195万m3
堆砂容量 25万m3
改造後も常時満水位やSWLは変更していません。

70cmの嵩上げで綺麗にまとめた菅生ダムを右岸から。
素敵な改造だったんですね~。