下筌ダム 見学 その6

まずは堤体の平面図です。
現場でも川の流れに対して垂直に建っていないなと思っていましたが
平面図でみると凄くそれがよくわかります。
むしろ蛇行部に造られたように見えます。

で、疑問を解決してくれるだろうかとわくわく読みすすめて
下筌ダム設計のページに。
ここで読んでいて謎の数字とアルファベットに引っかかる。

色々、地形と地質を検討した結果、河床プラグと右岸にスラストブロックを使う事になったらしい
というのは良いんですが、そのあとに突然
“非対称アーチ形状のSN5-72を採用した”
って・・・
なんですかそれは
SN5-72ってどこの何のモデルなんですか
71より72がいいんですか
SN4よりSN5がいいんですか

さらに模型実験の記載では
“小型模型が対称アーチ形状のSG3-84で行われ、大型模型は
プラグコンクリートを含めた非対称アーチ形状のSN5-72で行われた”
と書いてあり、このナンバーが何なんだーっと混乱する。
アーチダムには型番があるのかっ
そんなはずないはずだが
SNとかSGって何なんだーっ
と、工事誌を前に頭を抱えていた時に
ダムマイスター仲間と私などが呼ぶのは恐れ多い
本物のダムの専門家である中村靖治先生がダム協会にお越しになりました。
以前、ダムマイスターつながりで中村先生のエッセイに写真を使って頂いたこともあり
失礼をわきまえずに即座に質問攻め。
結論はというと単に模型のナンバーだという事で
私が一瞬にして妄想したアーチダムの型式が型番化しているわけではないという事でした。
ああ、妄想しすぎ。

現場でエンドシルか導流堤かと気になっていた物は
水叩きの端っこにありました。
そしてどうもこの図を見る限り、普段は水没していて見えないけど
副ダムがあるようです。
梵字川ダムのレポートでも書きましたが
ダムが連続しているときに減勢池は下流のダム湖が肩代わりしてくれるので
プールを形成する大きな副ダムをわざわざ作る必要はありません。
でも下流のダム湖水位が低下した時に減勢池に水がなくなると
減勢地があるものとして設計されている洪水吐設備には困ることに。
なので下流の松原ダムの貯水位が下がっても下筌ダムの直下には
ちゃんと減勢池ができるように普段は水没しているけど副ダムがあるという事だと思います。
副ダムが造られているところに細い尾根があるので
やはりあのエンドシルか導流堤かよくわからなかったコンクリートは
水流から尾根を守るためのものだと予想を勝手に裏付ける。
くれぐれも素人の言う事なので信用しないでください。

そしてこれが見たかった断面図。
あ、管理所のある右岸にでっかいスラストブロックが。
うっわーーーー
めちゃくちゃ堤体立ってるよー
オーバーハングほとんどないよー
でもかなりごつい造りだな〜
アーチにしちゃかなりの肉厚
それに堤体にこんなに監査廊があるなんて
スラストブロックとはこれです。
青蓮寺ダムの左岸や刀利ダム左岸にもあります。
脆弱な部分をこれに置き換えることで強度を上げます。
大迫ダムや黒部ダムみたいに重力式のウイングでやっちゃう場合もありますが。

堤体の中央、クレストゲートのある部分の断面図です。
現場で自分の目を疑った下流面の垂直っぷりは
ホントに垂直っぽかったからでした。
自分の目がおかしかったわけではなくてよかった。。

こちらはゲートがない部分の断面図です。
監査廊の数と縦抗っぽい絵からエレベーター棟部分ではないかと推測。
やっぱりかなりごついアーチダムですね。
建設時の水位の設定はこんな風に決まっていたようです。
現在もそうであるのか、さらに変更がされているのかは調べが足りなくてわかりません。
台風期制限水位 EL323.0 EL324.5
梅雨期制限水位 EL292.0
下流の松原ダムも洪水調節を仕事に持っていますので
シーズンによって水位が変わります。
松原常時満水面 EL273.0
松原台風期制限水位 EL269.0

アーチダムは国内に52基。
2000年になってからできたのは温井と奥三面(2001年)の2基のみ。
1990年代にできたのは川浦(1995年)1基のみ。
1980年代にできたのが川治(1983年)1基のみ。
1970年代にできたのが青蓮寺(1970年)、矢作(1970年)
下筌(1972年)、新豊根(1972年)、豊平峡(1972年)
大迫(1973年)、真名川(1977年)、旭(1978年)
1960年代に30基
1950年代に10基が竣工しています。
下筌・松原ダム工事誌には
“昭和30年代の後半は水力発電のダム建設が最盛期を過ぎ
治水ダムの建設が多くなった時代である”
“建設省直轄ダムの取り組みは、鳴子、湯田、川俣などのダムをとおして
アーチダムに対する技術の集積がなされた時代でもあった”
と、書いてあります。
あまりにも堤体が立っている事に吃驚しましたが、図面を見るとそのつくりに納得できます。
下筌ダムは国内のアーチダムでは新しい方になるのです。
と、私が文献など調べてあれこれふむふむ行っている事なんてどうでもよくて
とりあえずダムカードをもらいに行くため、堤体を愛でるために行ってほしい
かっこいい下筌ダムのレポートでした。