泉州の溜池 見学 その3


次にやってきたのが
久米田池です。

大阪府で最大の面積をもつ溜池で岸和田市にあります。

ため池100選にも選ばれていますし
ICID(国際かんがい排水委員会)の 世界かんがい施設遺産 にも選ばれています。
大阪府では狭山池とこの久米田池の二つ。

久米田池の横には久米田寺というお寺があります。


炭素様が久米田寺に興味を示されていました。

「ここって久米田池の管理所なんですよね」
「えっ?」
「池を管理するためこのお寺が造られたそうですよ」
「ええっ!!そうだったの??」
「だから行基様は初代管理所長」
「初代管理所長!!」
「工事事務所の所長からスライドして管理所長」


工事事務所長で初代管理所長の行基様。
近鉄奈良駅前広場で待ち合わせは
“行基様の前で”がメジャーです。

炭素様の事前学習凄い。


そしてこちらの資料館がとても気になったんですが
閉館日だったので展示物の確認はまた後日行くことにしまして
久米田池の堤の方に移動します。


とにかく大きいのです。
溜池としては巨大すぎるのです。

満水面積が45.6ヘクタール。
貯水量157万m3
池堤の周囲は2.6kmあります。


「これが久米田池で美しいポイントのひとつ、寺勾配になります」

泉州農と緑の総合事務所の方が説明された時に
炭素様と星野夕陽様の反応が微妙に変だった。

「どしたの?」
「え・・いや・・」
「綺麗な寺勾配でしょ」
「・・・(テラ勾配)」
「・・・(テラコーバイ)」
「うぉいっ!!…まさか…理系脳、“寺”を“テラ”だと思って
今、メガ勾配とか、ギガ勾配とか考えたんじゃないだろうなっ!!」

「えっ…あ・・いや」
「寺勾配はお寺の屋根だよっ。あの曲線美だよっ」
「えっ…ああ!!なるほどっ!!」
「絶対頭の中でテラだったに違いねー…」

頭いい本物の理系の人たちの脳みそは時に凄い変換をするところを目の当たりにした。
久米田池の貯水池側の護岸の石張はELが上がるほど急になる
お寺の屋根のような勾配でこれを寺勾配といいます。


池の周囲はくるっとまわることもできます。
散策路も整備されています。


大堤と呼ばれる一番高い堤の当たりかと思います。
最も高い部分で約9mあるらしいです。
桜がきれいなのでお花見時期はたくさんの人でいっぱいになりそう。


そしてこれだけ大きな溜池なのでちゃんとテレメーターがありました。
大阪府のため池観測局。


こちらは取水塔です。
灌漑用水をここから取りこんで受益地に。


一応、堤頂道路かな?

「今は宅地開発が進んでしまって受益地がこの池の満水面積の約半分でして…」
「えっ!!」
「なんとっ!!」
「でもICIDの世界かんがい施設遺産は造られてから100年というのが選定条件なので
今現在の灌漑面積などは条件に入っていないので」
「なるほどー。狭山池も今は治水がメインですしね」

と、吃驚するようなお話を聞く。
でもここのお水が美味しいお野菜作ってるのは間違いない。


貯水池の中に何か石柱が立っています。


水位を示す石柱でした。
この石柱の天辺が満水位のようです。

星野夕陽様はここでもう池への流入と余水吐の位置と
水収支が気になって仕方がないらしい。

典型的な皿池だし、河道外貯留だからぱっと理解しづらくて難しいと思う。
でもぱぱっと見たいポイントを押さえていくスキルは流石。


こちらが牛滝川から久米田池に水を取り込んでいる水路になります。


池に対してこんな感じで流れ込んでいました。


周辺地図発見。


現在地は赤い▲で示されているところです。
ここに向かって牛滝川から水路が伸びていて
栄川と名前が付けられていました。

この栄川、竣工時には洪水時にむしろ
牛滝川への排水路、余水吐水路として活躍していたのでは?
といわれています。

別のルートで牛滝川のもっともっと上流から
6kmほど水路(溝)を作って池に導水していたと思われることなど
久米田池をはじめ各地の行基様の手がけた事業について昨年出版された
行基と長屋王の時代 -行基集団の水資源開発と地域総合整備事業-
にとても詳しく書かれていますのでぜひ読んで頂きたいです。

読んだら現地調査したくなってそわそわしちゃうくらい面白いです。