泉州の溜池 見学 その1

2018/4/1 更新


2017年の秋、大阪の泉州農と緑の総合事務所を訪問しました。


伝統野菜も色々たくさんあるんですが
泉州でいちばん有名なブランド野菜といえばやはり水なすです。

とにかく美味しい。
各地にファン多し。


事務所でお茶を頂いたのですが
お湯のみに大阪府のマークが入っているのが素敵。

今回、こちらの事務所を何故、訪れたのかというと
泉州地域の溜池や大阪府の灌漑や農地防災を役目にもつダムを
観光資源として活用できないかということで
素人目線ではありますが意見を出させていただくという事で
ダムマイスター(一般)としてお呼ばれしたのです。

大阪府はもともとハイダムは少ないのです。
面積も小さいし。

ただ、狭山池をはじめ、歴史的な溜池は数多くありますし
特に泉州で注目すべきは久米田池という溜池です。

国内では、ため池100選に選ばれており
ICID 世界かんがい施設遺産にも選ばれている
凄い溜池があるのでこれをメインに何か企画を考えよう
見せ方を色々考えてみようという事になりました。

メインのお話の合間に有名な水なすの生産農家の皆様の栽培エリアに
主として灌漑用水を供給しているのが
あの有名な、大阪の赤い堤体・新滝の池であるというお話を聞いたり
色々楽しいお話をお聞きすることができました。



2018年、年度末の3月半ば。
大阪府の滝畑ダムにやってきました。

泉州農と緑の総合事務所の方々と
実際に見学ツアーを実施するなら
どんなコースがいいか見聞しましょうという事で訪問。

私ひとりでは見識が足りないので
各地のダムイベントをたくさん見て回っており
機動力に定評のあるダムマイスター仲間の
炭素様と星野夕陽様に来ていただきました。

別に脅迫したりはしていない。
ふ。
来てほしいな〜と言っただけ。
ふ。


滝畑ダム管理所長様からダムの概要説明を受けます。
やっぱりアーチダムで計画が進んでいたのを
1964年の河川法改定でひっくり返されて
曲線重力式になったエピソードは絶対外せないポイント。

それと元々滝畑ダムは平家の落人伝説のあった集落で
大阪府では山の方にありますが
都心部から車でそんなにアクセスが悪くないために
勝手に心霊スポットにされているという話。
web検索したら滝畑ダムというと心霊スポットばっかりヒットすると
管理所長様も嘆いておられました。
ほんとに勘弁してくれ〜。


しかし滝畑ダムは昨年から美味しい物の方向でよくニュースにも出ています。
地元河内長野市で唯一の酒造、天野酒の西條合資会社様の
「天野酒 僧房酒」がリムグラウトトンネルで熟成されて
大阪府×河内長野市×天野酒の官民共同ダム熟成酒プロジェクトという事で
ふるさと納税の返礼品になったのです。

また、湖底での熟成にも挑んでおられます。
これは国内のダムで初めての試みで
試験的に行った一昨年からの分については美味しくなったという事で
今年はさらにステップアップして新酒を湖底に沈めました。
搾りたて無濾過の純米吟醸を120本という事で作業大変だったと思います。


堤体見学をさせていただくことになりました。
まず向かうのはリムグラウトトンネルです。


ここは私も入ったことがない。


かなり奥までやってきたときに「天野酒 僧房酒」のケースが鎮座していました。
おおお♪
この中の一本が
もうすぐふるさと納税返礼品で我が家に届くんだなぁ♪
と、口元緩みっぱなし。


温度と湿度はこのくらいでした。


続いて堤体に移動して監査廊にご案内をいただきました。
これはオリフィスゲートのシュートの先でゲートがあり
直下に水が流れ下るすぐ下流側を覗かせていただいているところです。

滝畑ダムは昭和55年に堤体完成、昭和57年竣工ですが
とにかく水が溜まらない。

なんで溜まらないのかというと
溜まらない場所にあるわけではなく使う方が多過ぎるという理由。
利水要素があまりにも多いので。

水道水源として滝畑ダムの水に100%依存の
ニュータウン開発が同時進行していたので。
もう貯めたらすぐ消費の自転車操業ダムなんです。

そのため何度も試験湛水にトライしてきましたが
非常用洪水吐の水位まで上がったのは
平成になってからなんだとか。

昨年のT1721でも、相当水位が上がり
ゲートレスオリフィスからの放流水は
まっすぐ前に飛んでいたというくらいすごかったと伺いました。


滝畑ダムの特徴は
もともとアーチ式ダムとして設計されていた事
アーチダムが立つことを許される選ばれた岩盤に対する敬意
それを踏まえて設計された非常にタイトな曲線重力式ダムであるということです。
掘削岩盤量を減らし、岩盤に対する敬意を忘れず
敷幅を大きくとり重力式ダムとして必要な重量を手に入れました。


なので堤高62.0mで堤頂長120.5mのダムなのに
監査廊が四角くなっていたりして複雑なのも特徴なのです


プラムラインのあるお部屋。
アコーディオンカーテンに星野夕陽様、驚かれていた様子。
そうか・・そう言われれば割とレアか。
私も最初に見た時は衝撃受けたな…。


直下にやってきました。
平時からとにかくしっかりお水を貯めようとしているダムですので
オリフィスから水が出てている日数は少ないので
見学当日出ていたのはラッキーでした。


こちらが常用洪水吐のゲートレスオリフィス呑口です。
さらさら流れ出てますね。


天端から漸縮型堤体導流壁の間を見下ろしていた時に
星野夕陽様が気にしていた部分。

これは建設時のクレーンの足の跡でした。
滝畑ダムはタワークレーンでコンクリート打設したのです。