恩原ダム 見学 その1

2004/10/27 更新

ダムには色々な形式がありますが中でもバットレスダムは
その特異な形で異彩を放っているダムです。

コンクリートが高価だった時代に造られた中空重力式と同じく
バットレスダムもコンクリートを少なくするために考え出されたものです。

しかし海外でコンクリート凍害の事例が報告され、安全性の面で問題があるとされ
昭和12年に造られた鳥取県の三滝ダムを最後に造られなくなりました。

コンクリートの中の細かな隙間に存在する水分が凍結→融解→凍結→融解を繰り返すことで
ひび割れが発生したり表面が剥離したりします。
その傷が徐々にコンクリートの内部にまで進行していく事を凍害と呼ぶそうです。
コンクリートの格子壁でコンクリートの板を支えるという構造のバットレスダム。
コンクリートが少なくて済む分、コンクリートの壁の厚さも薄くなりました。
凍害に弱いとされた所以です。

 

日本中に建築されたものは8基しかなく、現存するのは6基。
そのうち4基は改修されていて建設当初の面影を残すのは2基のみという
極めて珍しいダムです。

北海道の笹流ダムは土木学会選奨土木遺産2001に選定されています。
群馬県の丸沼ダムは発電用ダムとしてはじめての国の重要文化財指定。
富山県の真立ダムと真川ダム、岡山県の恩原ダムは
「日本の近代土木遺産〜現存する重要な土木構造物2000選 」に。
鳥取県の三滝ダムは2002年度の土木学会選奨土木遺産に選定されています。

国内に残る全てのバットレスダムは貴重な土木遺産として選ばれているのです。

バットレス見たいなぁ
一番近いバットレスどこかなぁ

そして地図を見て岡山県に飛び出しました。
目指すは昭和3年に造られた現存最古の発電用バットレスダム・恩原ダムです。


台風続きの2004年夏から秋。
各地で台風による被害が相次いだ後でした。
瀬戸内海側の鉱山施設を朝から見て国道と県道を走りつづけて120km。
やってきました恩原高原。

途中でダム2ヵ所、廃建築1ヶ所、鉱山施設2ヶ所を見てきてしまったので
夕暮れになってしまいました恩原高原。

秋の早い日暮れに気分ばかりが焦ります。
太陽が昇っているうちに堤体にたどり着けるんだろうか?


ダム湖に到着しました。恩原湖です。堤体が水平線のかなたにかすかに見えています。
吃驚するくらい綺麗なダム湖でした。
周囲にはススキが風にたなびいているし白樺林が続いているし。
一瞬、信州に居る気分になってしまった恩原高原。

堤体に向かって愛車を走らせます。


山漆が真っ赤に色づいて白樺林のアクセントになっていて
高原の自然を楽しむために訪れたのならここで終わっても良いでしょう。

しかし目的はバットレスの御堤体のみ!

しかし高原内の道があちこち通行止めになっていました。
しばらくうろうろした末に堤体への道が通行止めになっている事が判明しました。

Aバリケード。しかも鉄パイプを組んであるでっかいバリケード。
じっと眺めました。

びみょーにずらしてある...な。
これは突破して進んだ車両が居る事を示している。
長さは....と。
斜めに入れば通れそうだなこの隙間。
早く行かなきゃ日が暮れちゃうしなー。
土砂崩れがあったらその時は引き返すさー。

と、いうわけで石徹白ダムの時と同じく通行止め突破。



道路状況に気をつけながら進んでいくと...


出たー♪ 御堤体に到着やっ!
冷たい秋風が吹き付ける中、愛車を止めて飛び出しました。

目の前には洪水吐きです。
堤体はこの位置からは一寸しか見えていません。
天端に入れないかと走ります。


ガードレールの内側にすっ転んでしまった石碑。
なんか荒れていますね....。


洪水吐きの右ゲート部の塔に物凄いでっかい字で書かれている看板。
登られる事が無いように塞がれているはしご。

釣りに来ている人がちらほらいましたし
(自分と同じく通行止め突破してきた人たちでしょう)
ここは観光地の一部になっているわけですから
おいたをしたい年頃のお子様が
探究心旺盛な若人が
そして高いものを見ると登りたくなる高齢者が
進入して登ったりした事があるのかもしれないですね(笑)