奥津発電所懸崖水槽工事

2021/10/1 更新


岡山県の奥津温泉にある「星の里キャンプビレッジ」に来ました。
パーキングには工事用のプレハブ事務所と工事関係車両が並んでいます。


ここまで来る途中の道もこんな風にコーンがたくさん並んでおり
この一帯が工事エリアになっている事が分かります。


工事事務所の前の掲示板を見に行きました。
工事の概要を詳しく知るにはこれが一番です。


掲示板の一番下に地図付きで詳しい情報がありました。
中国電力様の奥津発電所の改修工事が行われているのです。


工事は広いエリアに及んでいて
導水路、水槽、発電所、水圧鉄管が改修の対象となっています。


その中で一番気になるのがここです。

水槽改修工事
『既存の水槽を撤去して、新しく水槽を構築します。
また、調整地の内部に新規に連絡水路を設置します。』

とあります。


奥津発電所懸崖水槽。
この美しいバットレス構造の水槽が撤去されるのです。

国内で現存するバットレスダムは
 笹流ダム
 丸山ダム
 真川調整池ダム
 真立ダム
 恩原ダム
 三滝ダム
の6基です。

造られたけれど新しいダムの貯水池に沈んだ高野山ダム
造られたけれど倒壊してしまった小諸発電所第一調整池
樺太の手井ダムは堤体をコンクリート遮水壁にして埋め建てられ
アースダムの遮水壁になってしまいましたし
とてもレア型式のバットレスダム。

この奥津発電所懸崖水槽はダムではありませんが
その外観が完璧に国内のバットレスダムと同じなので
注目されているのです。


横の道を少し登ります。


夏草が茂っているとチビにはつらい。
背が高かったら、長い棒があったらもっと綺麗に撮れるのに。


水槽の外周の道路です。といってもこの先は登山道になるので車はいけません。


水槽の外周につけられた通路は立入禁止です。
これはずっと前から立入禁止です。


フェンスの隙間からコンデジで撮影。

水槽側の高欄はパラペット型
反対側は僅かにアーチが入ったコンクリート枠に鉄パイプの透過型
デザインをそろえていてとてもお洒落です。


遮水壁の水槽側です。
国内の他のバットレスダムと同じく緩傾斜であるのが見て取れました。


水槽の中はブルーシートで覆われている部分と
そうでない部分がありましたが理由は分かりません。


水槽の端から見た全景です。

他の調整池や水槽でも定期的に抜水して
設備点検や整備をされるという事を聞いています。

水槽内に堆積している土砂で大きな段が出来ているのは
発電所への取水口に影響が少ないように
水槽内で移動させていたからではないかと現場で
素人なりに頭を働かせるなど。
正しい保証なし。



河道外に設けられているのでここに届く水は管路からの物に限られます。

壁にある導水トンネルは吉井川上流の羽出川からの水が届くルートと思われます。


こちらは同じく吉井川の上流、上齊原地区の湯の谷川からの導水路トンネルです。
湖底に通されたパイプはトンネル内に小さな堰を作って
送られてくる水を工事現場になっている水槽に貯水せずに
発電所かあるいは余水路に送っているものではないかと推測。

素人の考えなので正確ではないと思われます。


発電所側の撤去工事は着々と進んでいるようでした。


懸崖水槽の格子をフェンスの外から眺めます。


目を凝らすと扶壁の一つに埋め込まれた登録有形文化財の
プレートが見えるのです。


文化庁の指定文化財等データベース

にある中国電力 奥津発電所のページです。


登録有形文化財は国指定の重要文化財などと違って
大きく外観を変えなければ改造、改修、商用施設としての利用
なども可能であると聞いています。

ただ、ダムの場合、
改修工事は大きく外観を変えることが多いので
ゲート付きダムがゲートレス化されることで
登録有形文化財でなくなった事例もあります。

懸崖水槽が一部でも残されるのか
すべて撤去されるのかを私は知りません。

でも勲章よりも人のために働く物でありたい
人のために生まれてきたのだからという
仕事を続けたい気持ちがここにあると思うので
寂しいですが、工事が安全に進みますようにと
お祈りして現場を離れました。

工事期間中に現場に行く方は工事の邪魔にならないよう
許可なくドローンを飛ばしたりしないようお願いします。