長殿発電所
2021/6/21 更新
2012年10月
家族の車の助手席に積んでもらって
R168を走っている時の写真です。
コーナーの向こうに見える山に真っ直ぐな影があります。
そこには水力発電所の水圧鉄管が走っているのです。
ガードレールの向こうに堆積した土砂と川の流れ
そして道路との間に平らな場所が見えてきました。
川に立つ黒ずんだ扶壁の横に白いコンクリートの土台です。
山の方には水圧鉄管が鎮座しています。
コンクリートの土台に並ぶ三つの円形の巨大な物。
シルエットから発電機と水車であろうと思われます。
平成23年9月2日から4日にかけての豪雨災害。
紀伊半島大水害によってこの長殿発電所は被災したのです。
十津川に面している長殿発電所ですが
川の水位が上昇して水没したというだけで
こんなすさまじい被害を受けたわけではありません。
建物も壊れ方は貯水池側から山側へ
下流側から上流側へ大変な外力が働いたことが
鉄塔の変形や建物の移動と東海している方向から分かったという事が
事故の調査報告で上がっていました。
長殿発電所の尾根を一つ挟んで南側にある山の斜面が崩壊して
400万m3もの土砂(!)が200km/h(!!)で貯水池に流入し
10mもの段波(!!!)が発生したことで建物を壊したそうです。
数字が大きすぎてイメージしづらいですが
東日本大震災の時の津波と似ていると思います。
長殿地区には複数の斜面崩壊が発生しましたが
長殿発電所の大変なダメージを与えた十津川左岸の斜面崩壊と
右岸の長殿谷で発生した斜面崩壊は別の物です。
長殿谷の崩壊地はまだ湛水池の埋め立て工事が進められています。
2018年7月、嬉しいニュースが出ました。
復旧工事が進められていた長殿発電所が無事に完成したニュースです。
新建屋は敷地の土台ごと4mも高いところに設けられました。
長殿発電所は有効落差196.0mで最大使用水量9.46m3/s
最大出力15300kWというとても優秀な水力発電所で
運開は1937年(昭和12年)12月でした。
今回の工事で3台あった発電機は2台になりましたが
性能が上がっているので最大出力16200kWに増強されました。
めでたい♪
長殿発電所がまた発電を開始したという事について
関西電力様のHPには復旧工事について担当された方の
インタビュー記事が詳しい写真付きで公開されました。
関西電力 ミライスイッチ
「水害に飲み込まれた水力発電所を復旧せよ!」
最初に出てくる被災直後の写真に呆然としてしまいます。
こんなに根こそぎ建物も何もかも砕かれてしまって
これから一体どうしたらいいんだというくらいの絶望感。
の、はずなのに
物凄い前向きに
再建するぞーっ!!
やるぞーっ!!
今度は絶対壊れない頑丈な物作るぞーっ!!
という勢いで、読んでいて絶望が希望に変わっていくのが素晴らしいです。
という事で綺麗になった長殿発電所に会いにきました。
奈良交通のバス停があります。
大和八木から新宮までを走る日本一長い路線バスとして有名な
「八木新宮特急バス」の路線図の中間あたり…
いや、まだまだ奈良よりかな。
真っ白なコンクリート。
ぴっかぴかのフェンス。
長殿発電所綺麗になってる♪
あの時水になぎ倒された鉄塔も
こんなしっかり立て直されました。
水圧鉄管は無事だったからそのまま年季が入っています。
上部水槽も無事だったのでそのまま使われているそうです。
堆積した土砂が白く輝いている十津川。
河床は何メートルも上がってしまいました。
平成7年七夕豪雨で猫又堰堤が埋もれてしまったのを思い出します。
でもあの時水没した黒部川第二発電所も
運転再開に向けて工事が進められています。
次は負けない
たとえ負けてもくじけない
それが関電様の社風であり、くろよんスピリット。
強くなってまたお仕事を始めている長殿発電所。
奈良県南部には10年たってもまだ大水害の爪痕がたくさん残っています。
トンネルがどんどん開通してもまだまだ復興には時間がかかります。
そんな中、しっかりと復活してお仕事を始めてくれている長殿発電所は
とても心を明るく照らしてくれる発電所だと思います。
ちなみに動画が良いという人も多い事と思いますので
長殿発電所を再建せよ〜台風被害から7年を経て〜
youtubeでもこの素敵な復旧記録をご覧いただけます。
ミライスイッチのレポート合わせて御覧になることをお勧めします♪