黒部川第二発電所 見学

2024/1/21 更新


黒部峡谷鉄道に乗って欅平に向かう途中
出し平ダムを過ぎて猫又駅に近づくと
対岸に現れるのが黒部川第二発電所です。

真っ赤なフィーレンディール橋がひときわ目を引きます。
この橋の下には猫又堰堤があります。

平成7年の七夕豪雨ですさまじい土砂が押し寄せ
黒部川第二発電所は浸水し、猫又堰堤は完全に埋もれてしまいました。
この場所の河床は10mも上昇しています。

七夕豪雨については下記のリンクをご覧ください。
平成7年7月 黒部川流域豪雨災害状況
建設省北陸地方建設局黒部工事事務所

https://www.jstage.jst.go.jp/article/sabo1973/48/5/48_5_33/_pdf

黒部川水系出水災害の記録
https://www.hrr.mlit.go.jp/kurobe/jigyo/panf/panf_dl/saigai.html

しかし、猫又堰堤のゲートピアの上の橋が無事であったため
発電所への資材の引き込み線も無事だったことは不幸中の幸いでした。


黒部川第二発電所は1936年(昭和11年)に運開です。

黒部川で幾度も洪水に遭遇して来ましたが
平成7年7月豪雨では発電所が浸水しました。

この災害からの復旧はもちろんですが
発電所の70m上流に在った新黒部第二発電所の放水口を作り直す工事の後
老朽化した黒部川第二発電所の発電機、水車、ケーシングなどを取り換えて
出力増加できるリフレッシュ工事が行われました。

発電機は1から3号機まであり、1号ずつ交換されたそうです。

資材もすべて黒部川鉄道で運搬です。
豪雪地帯の黒部は冬季は運搬ができません。

2014年9月から始まったこのリフレッシュ工事は完了すれば
出力が2700kW増えて74700kWになるという事でした。


これはちょうど工事が始まった2014年に見学させて頂いた時の写真です。


黒部川第二発電所は昭和11年運転開始ですから
この水車は一度は取り換えられているのかなと銘板を見て予想。


工事が始まってすぐのときの見学でしたが既に発電機は運ばれた後でした。
大きな空間がぽっかり。


この螺旋階段が素敵だなと思ってこの手すりの真鍮が
何とも美しい色になっていて、この部材、撤去したら
売り払うのでなく、細かく切ってグッズ販売してほしいな~
と思ったりしていました。

レールの薄切りみたいな感覚。

黒部川第二発電所のリフレッシュ工事は
2014年から2017年に1号機
2019年に2号機
2023年に3号機で進められてきました。


2023年#みずいろネット 第一回フォトコンテスト最優秀賞を取った佳様の
「お好きなダム・発電所を見学」権で小屋平ダムに続いて
黒部川第二発電所の見学をさせていただきました。


こちらは新黒部第二発電所の紹介です。
黒部川第二発電所の工事が終わったら74700kWになるので
新黒部川第二より少し発電出力が大きくなります。

水車や発電機の更新は出力アップにも繋がります。


黒部川っぽい色の水が勢いよく出ているここは
新黒部第二発電所の放水口トンネルです。

もともと、新黒部第二発電所の放水口は
黒部川第二発電所の建屋上流70mのところにがありました。
しかし、七夕水害で押し寄せた土砂により、放水口は完全に埋まってしまいました。

放水口が埋まってしまったら当然、発電ができなくなります。

そのため、2009年10月から2013年12月までかけて
新黒部第二発電所の放水口を土砂の影響を受けない
下流の出し平ダム湛水地内に付け替えることになり
そこまでの放水路トンネルを新たに作ったのです。

放水路トンネルは1..4kmです。


トロッコからじーーーっと待っていて
視界にパッと飛び込んでくる赤色に
猫又堰堤と黒部川第二発電所についたことが分かりました。


姿が見えてから猫又駅までのわずかな時間。
ずっと発電所を見ていました。
りっぱな擁壁が高く高くなっています。
川の砂も大きく取り除かれて放水口を邪魔しないように
整地されています。


猫又駅に到着しました。

あ、発電出力のところにプレートがぺったん♪
けど、このあともう少し増えるはず♪
72000kWから74700kWになる計画だから
これは1号機と2号機が新しくなっての数字であるわけで
来年からは取り換えられるはず。


リフレッシュ工事が始まった2014年の発電所外観と
リフレッシュ工事が終わった2023年の発電所外観を並べてみました。

どれだけ擁壁が高くなったか、一目瞭然です。
猫又地区発電設備改良工事で行われた対策工事です。

猫又地区発電設備改良工事とは
平成7年7月の水害で、黒部川の河床が約10m上昇した結果
黒部川第二、新黒部第二発電所の放水口前に土砂が堆積したことに対して
両発電所の発電機能の回復と黒部川第二発電所と猫又合宿所の安全確保を
目的とした工事です。

発電所だけでなく、右岸にあった猫又合宿所も大変な被害を受けました。
合宿所は孤立状態になったのです。

行われた工事は
①新黒部川第二発電所放水路トンネル付替工事
②黒部川第二発電所護岸嵩上工事
③黒部川第二発電所放水庭改良工事
④猫又地区 防水壁設置工事
となります。


猫又駅から発電所に向かいます。
わくわくが止まらない。
ついに元気に復活した黒部川第二発電所にお近づきになれるのです♪


フィーレンディール橋に繋がる軌道の桁も赤色なので
積もった河床の白い土砂とのコントラストがくっきり。
とても映えています。


このトンネルを抜けたら猫又堰堤です。


トンネルでてすぐのところから見た猫又堰堤です。
埋もれているけどちゃんとここにあります。
ちゃんと冷水対策のサイフォン水路も健在です。
姿は見えないけどお仕事頑張ってます。
ちゃんと橋脚のお仕事もしてます。

猫又堰堤大好きなので
無くなっちゃったみたいに言われるのが悲しいので
めいっぱいアピールしたい。


ちっょとうるうるしてしまった時、アーティキュレイトトラックが一台
土砂満載で上流から移動してきました。


ここからは見えない下流の置き場に運搬しているようで
あっという間に姿が見えなくなりました。


橋を渡って発電所にどんどん近づきます。


このあたりで振り返ると黒部峡谷鉄道の軌道を守るために
沢筋に設けられた埋め戻し工もよく見えます。
七夕豪雨ではこの場所で軌道が流失してしまったのです。

最初に紹介したこちらのリンクで表紙写真にあるのが
この場所の発災直後の写真になります。
 → 黒部川水系出水災害の記録


ご一緒していたダムマイスター仲間の三橋様が非常に興味を示されたのが
こちらのパンダ模様の花崗岩です。
黒部川花崗岩という名前付きです。

なんでも“地球上で最も若い花崗岩”だそうです。

普通の花崗岩と違って80万年しか経過していないといわれても
さっぱりわからないですが、とにかく、大変珍しいものという事でした。


発電所入り口には巨大な水密扉です。
絶対に浸水しないぞ!という強い意志を感じます


発電所横で奥に進んでいる軌道は新黒部第二発電所へのルートだそうです。
新黒二は黒二より方向で言うと上流側ですが地下発電所なので
トロッコからはその姿は見えません。
ここからももちろん姿は見えません。


前回の見学時に緊張して慌てて手ぶれで
全くちゃんと撮れなかった銘板発見♪
今日こそ落ち着いて撮る!

…というかなんか増えてる・・・。


撮れました。
なんかお色直しして綺麗になってます。

近代化遺産のプレートは2014年の見学時にもありましたが
関西電力送配電 黒部川第二変電所の表札が追加されていました。


建屋に入りました。

わーーー♪
新しくなってるよぉ♪
ベージュ色だったのが奇麗な青になってる♪

浸水した時の写真が頭にふわっと浮かびました。
こんなに綺麗にして貰ってほんとに嬉しい。


壁に確認したいものがあるので探しましたが
一つは姿がありません。
設備更新の際に移動されてしまったようです。


必ず押さえておきたいのはこの印です。
ここまで水が来た記録。
今は塞がれている窓の高さまで水が来たのです。


移動されてしまったのはこちらの発電所運開時に
据え付けられていた水車の銘板。
電業社製でした。
きっと発電所のどこかに保管されていると思います。


高くなった擁壁とすっきりと取り除かれた放水庭の土砂。

でもひとたび豪雨がやってきたらこの土砂はまた移動して悪さをするでしょう。

でも負けないのです。
くろよんスピリッツで何度でも復旧されてきたのです。

先人が作り上げた大切な財産を守りたいという心意気で
ついにリフレッシュ工事が完成した黒部川第二発電所。

今度来るときは、もう悲しくないです。
頑張ってるねって手をふることができそうです。

関西電力 黒部川水力センターの皆様
HpXグループの皆様
貴重な見学をさせていただき、本当にありがとうございました。

おまけ


管理用の冬季隧道
入口からちらっとのぞいただけですが
これはかなりこういう画を欲している人には
垂涎のトンネルだと思います。