桂沢ダム 見学 その1

2016/10/31 更新

北海道で建設されたコンクリートダムで現存する一番古い堤体は
1918年竣工の王子製紙 千歳第三ダムです。
(1910年竣工の王子製紙 千歳第一ダムは堤高6.4mで堰扱いのため)

先の大戦前に北海道で竣工していたダムは
発電用、灌漑用で単独目的で建設されたものばかりでした。

治水と利水を両方担う多目的ダムは河水統制事業として
道内では1937年に石狩川、十勝川などの4つの河川で調査が始まりました。
しかし戦争の影響でこれらの計画が実施されたのはずっと後のことになります。

1950年に北海道開発庁が設立し最初の河川統合事業として
治水(建設省)、発電(電源開発)、水道(桂沢上水道組合)による共同開発ダムが始まりました。

道内初の多目的ダムとして1957年に生まれたのがこの桂沢ダムなのだそうです。


なので桂沢ダムのパンフレットのこの文言は
「北海道の“多目的ダム”の中で一番古い」が正確ですね。

桂沢ダムは北海道で一番古いコンクリートダムではありません。
しかし、北海道のコンクリートダムを語る時に桂沢ダムは絶対に外せないダムなのです。


パンフレットの写真を見ると柱状ブロック工法で着々とコンクリートの打設が進み堤体が高さを増していったように見えます。

しかしこの道のりは決して容易なものではありませんでした。

コンクリートは凍ってしまったら強度がでなくなり使い物にならなくなってしまうのです。
寒中コンクリートがまだ生まれていなかった時代に
寒冷地でのコンクリートのノウハウがまだ少なかった時代に
マスコンクリートの構造物を作ることはどれほど大変だったことでしょう。

ダムカードの裏面のこだわり技術にも記載があります。
“北海道の厳しい寒さの中でも所定の強度が得られるように
コンクリート表面に100Vの電流を流して養生した”と書かれています。

これだけ巨大なものを作るためにはコンクリートの打設だけでも年月を要します
その工期中には何度も冬がやってきます
北海道の冬
氷点下の山間部で続けられる工事の苦労
現場管理の苦労は想像を絶するものであったと思われます。

堤高の低い堰やダムでは使用するコンクリートの量は勿論、堤体積も少なく工期も短い物です。

治水と利水を担う巨大な水源、ダム湖を支えるためにはどうしても堤高の高いダムが必要になります。
北海道電力様の雨竜第一ダムは堤高45.5mで1943年竣工。堤体積は18万8000m3です。

電源開発様の糠平ダムが堤高76.0mで桂沢ダムが竣工する1年前、1956年に出来ています。堤体積は46万m3です。
そして桂沢ダムは堤高63.6m、堤体積は35万m3です。

寒冷地におけるマスコンクリート技術確立のために
糠平ダムと桂沢ダムは多くの苦難を乗り越えて建設された
北海道の重力式コンクリートダムの始祖と呼べるダムなのです。


桂沢ダムは多くの川が合流する最高の場所に造られています。
総貯水量は9270万m3あります。

大夕張ダムも素晴らしい場所に造られていましたが
再開発で夕張シューパロダムになりさらに貯水量がアップしました。


そして桂沢ダムも現在再開発工事が始まっています。
新桂沢ダムとしてさらに貯水量アップするのです。
総貯水量は1億4730万m3になるのです。

詳しくは幾春別川ダム建設事業所のHPをご覧ください。


再開発工事が始まっているので堤体におさわりはできないけれど
近くから見ることくらいはできますということで連れてきていただきました。

今回の北海道ダムめぐりで一番気合い入れていたのが桂沢ダムでした。


こちらの建物が桂沢ダム管理支所です。
民家ではありません。


事務所入口の看板。


でも気になったのはこの桂沢ダムロゴマーク。
凄い秀逸なデザイン。
桂沢ダムに流入する上一の沢川、熊追沢川、幾春別川、菊面沢川、盤の沢川が
木の枝のように綺麗に配置されている。
全体が木のデザインになっている。
左上の星は桂沢ダムに送水している芦別ダムでしょう。


ダムカードとパンフレットをもらおうと守衛さんのいるところに移動していたら
可愛らしいレースのカーテンがかかっていてびっくりした。
途中で管理支所から隣接している民家に移動してしまったかと思った。