本河内高部ダム 見学 その5


右岸から堤体を愛でるのは限界だったので左岸に戻ります。


左岸からの堤体下流面。

美しい芝生
そこにまっすぐに伸びる石段
気品のある堤体です。


華美にならないけれど風格のあるこのポータル。
吉村長策技師の気合が伝わってくるデザイン。


でも実はこんな状態のところから愛でています。
フェンス憎いけど仕方なし。


門柱もおしゃれですね。

でもこの美しい気品あふれる堤体が泥に覆われた事がありました。

長崎大水害の時の事です。

本河内高部ダムの右岸上流で大きな斜面崩壊が起きました。
段波が生じたのかどうかまでは解りません。
ただ、187mm/hという信じられない降雨の中
ダム湖貯水位は最高水位に達していたことでしょう。

本河内高部ダムは巨大なダム湖を持っているわけではなく
満水の状態で大規模斜面崩壊が起きたことで
ダム湖の水は堤体を越流し
この芝生の上を流れ下ったのです。

アースダム、ロックフィルダムといったフィルダムで最も恐れなくてはならない堤体越流。
それを防ぐためにフィルダムは同じ高さで重力式ダムを造った場合に比べて
洪水吐の能力を増やすという意味で設計洪水流量を1.2倍にすること
更に、堤体の非越流部を1m余分に高くすること
などが約束事になっています。

本河内高部ダムが竣工した時にこういった設計はまだ確立されていませんでした。
諸外国、特にダム大国であるアメリカのフィルダム決壊事例の研究などが
国際的に共有されるようになり国内でのハイダム決壊事例は少ない中
再開発では安全性を高める為に今のデザインが採用されるに至ったのかと思います。


新堤体にしっかりと守られた旧堤体

安全でおいしい水を24時間365日確保するために

まだまだ働かなくてはならないので

人の暮らしを守らねばならないので

竣工して124年目
まだまだ頑張る本河内高部ダムでした。

 

おまけ

現地でかなり粘ったけどよく分からない


天端を右岸側に渡り切った時にアバットメントにこんな説明板を発見。


アバット不整合。

私は早々に理解しようという努力を怠って
疑問符飛ばしながらも放置しましたが
同行してくださったダム工学会の方は
気になって仕方がなかったらしく
枠工を上って草をかき分けて確認していました。

あまりにも専門性が高い説明板にどう突っ込んでいいか分からない。